自損事故などで、契約の車両が壊れた場合に修理費等が補償される車両保険を自動車保険にセットしている方も多いと思います。
しかし、車両保険を使うと、翌年度の自動車保険の等級はいくつ下がり、保険料はどの程度上がるのかという不安や疑問を持っている方も多いと思います。
車両保険を使用して車を修理した場合の等級の下がり方や保険料の上がり方について解説します。
1.自動車保険の等級とは?
契約台数が9台以下の自動車保険はノンフリート契約(10台以上はフリート契約)と呼ばれています。多くの個人の方が契約されている自動車保険はノンフリート契約です。
ノンフリート契約では、「1~20等級の区分」、「無事故・事故有の区分」により保険料が割増・割引されるノンフリート等級別料率制度が採用されています。
ノンフリート等級は1等級を下限、20等級を上限としています。新規契約の場合は6等級(S)若しくは7等級(S)からスタートして、更新前の契約に事故がなかった場合、次契約の等級が1つ上がります。
等級ダウン事故があった場合には、次契約の等級が1等級または3等級下がり、7等級以上であれば、割引率が低い事故有の割増引率が適用されます。
『自動車保険の等級制度(ノンフリート等級別料率制度)』
ノンフリート等級 | 割増引率 | |
---|---|---|
事故無 | 事故有 | |
1等級 | 64%割増 | |
2等級 | 28%割増 | |
3等級 | 12%割増 | |
4等級 | 2%割引 | |
5等級 | 13%割引 | |
6(F)等級 | 19%割引 | |
7(F)等級 | 30%割引 | 20%割引 |
8等級 | 40%割引 | 21%割引 |
9等級 | 43%割引 | 22%割引 |
10等級 | 45%割引 | 23%割引 |
11等級 | 47%割引 | 25%割引 |
12等級 | 48%割引 | 27%割引 |
13等級 | 49%割引 | 29%割引 |
14等級 | 50%割引 | 31%割引 |
15等級 | 51%割引 | 33%割引 |
16等級 | 52%割引 | 36%割引 |
17等級 | 53%割引 | 38%割引 |
18等級 | 54%割引 | 40%割引 |
19等級 | 55%割引 | 42%割引 |
20等級 | 63%割引 | 44%割引 |
※1~6等級までは、事故有・事故無の区分はありません。また、1~3等級までは割引ではなく、割増となります。
2.保険事故の種類
保険事故とは保険会社に保険金の支払責任がある事故のことをいいます。その種類は下記の3つです。
1)1等級ダウン事故
下記の事由で車両保険金のみが支払われる事故を「1等級ダウン事故」といいます。「1等級ダウン事故」があると次契約の等級が1つ下がります。
例)
〇盗難
〇火災・爆発
〇台風・洪水・高潮
〇落書き
〇飛び石
以前は「1等級ダウン事故」は「等級据え置き事故」といい次契約の等級が変わりませんでしたが、等級制度の改定により「等級据え置き事故」が廃止されて「1等級ダウン事故」となり、1つ等級が下がる事故になりました。
『『等級据え置き事故』はなくなった!?』
2)ノーカウント事故
下記の保険事故または下記の組み合わせの事故を「ノーカウント事故」といいます。次契約の等級に影響はなく、その他の事故がなければ、1つ等級が上がります。
〇対人臨時費用
〇人身傷害
〇傷害一時金保険
〇弁護士費用特約
〇ファミリーバイク特約
〇個人賠償責任特約 etc
3)3等級ダウン事故
上記1等級ダウン事故、ノーカウント事故のいずれにも該当しない事故を「3等級ダウン事故」といいます。「3等級ダウン事故」があると次契約の等級が3つ下がります。
3.車両保険を使うと3等級ダウン?
車両保険を使用して車を修理した場合、等級はいくつ下がるのでしょうか?割引率はどの程度下がるのでしょうか?車両保険を使用した場合の等級は下記3パターンとなります。
1)1等級ダウン
先述の通り、下記の事由で車両保険金のみが支払われる場合、次契約の等級が1つ下がります。
例)
〇盗難
〇火災・爆発
〇台風・洪水・高潮
〇落書き
〇飛び石
例えば、走行中に飛び石でフロントガラスが割れ、車両保険で修理した場合や盗難で車両保険を使用した場合などが1等級ダウン事故に該当します。
【1等級ダウン事故の事例】
事故時の等級および割引率 | ⇒ 1等級ダウン事故 |
翌年度の等級及び割引率 |
---|---|---|
17等級(53%割引) |
16等級(36%割引) 事故有係数適用期間1年 |
上記事例の場合、割引率が17%ダウンします。事故有係数の適用期間は、1年間です。
2)3等級ダウン
1等級ダウン事故以外の場合で、車両保険を使用すると、原則、翌年度の等級は3等級ダウンします。
例えば、走行中に単独で電柱に激突し、車を車両保険で修理する場合などが3等級ダウン事故に該当します。なお、駐車場で当て逃げに遭い、当て逃げをした加害者が不明の場合も、車両保険を使用して修理すると3等級ダウン事故になります。
『当て逃げの修理代に車両保険は適用される?等級は下がる?』
【3等級ダウン事故の事例】
事故時の等級および割引率 | ⇒ 3等級ダウン事故 |
翌年度の等級及び割引率 |
---|---|---|
17等級(53%割引) |
14等級(31%割引) 事故有係数適用期間3年 |
上記事例の場合、割引率は22%ダウンし、更に事故有係数が3年間適用されます。
3)ノーカウント事故
「車両無過失事故に関する特約」をセットしていて、事故相手が判明している場合、車両保険を使ってもノーカウント事故にできる場合があります。
例えば、信号で停車中に後ろから追突されたにもかかわらず、相手は任意保険に加入していない。よって、被害者の車両保険で車を修理したとします。
追突事故(100:0)の加害者が分かっているのであれば、車両保険を使用して修理しても「車両無過失事故に関する特約」でノーカウント事故とできます。翌年度の等級は下がらず、他の等級ダウン事故が無ければ、等級は上がります。
【ノーカウント事故の事例】
事故時の等級および割引率 | ⇒ ノーカウント事故 |
翌年度の等級及び割引率 |
---|---|---|
17等級(53%割引) |
18等級(54%割引) 事故有係数適用期間0年 |
上記事例の場合、等級は1つ上がり、割引率も1%上がります。
なお、追突事故を含め、自動車保険で過失割合が100対0(10対0)となる交通事故について下記記事で解説していますので、ご参照ください。
『自動車保険で過失割合が100対0(10対0)となる交通事故とは?』
4.車両保険を使う場合には、保険会社や代理店で保険料の試算を
現在の等級制度では、保険を使用すると、事故有の割増引率が適用され、保険料が大きく上がる可能性があります。修理費の額によっては、自動車保険(車両保険)を使用するよりも自腹で修理した方がいい場合もあります。
少額の修理費で車両保険を使用すると、修理代よりも保険料の値上がりの方が大きくなってしまいます。
保険会社や代理店に頼めば、車両保険を使用した場合の次年度以降の保険料(概算)試算が可能です。修理代が高額でない場合には、車両保険を使用するかを保険会社や代理店に相談するようにしてください。
まとめ
車両保険を使用すると、原則、3等級ダウンか1等級ダウン事故に該当し、7等級以上であれば、事故有の割増引率が適用され、大きく保険料が上がる可能性があります。
自損事故などで、修理費が少額の場合には、車両保険を使用して修理するか、自腹で修理するかを
検討する必要があります。
そのような場合には、保険会社や代理店に相談し、車両保険の使用について決めて頂ければと思います。
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