自動車保険の車両保険は、希望すれば当たり前にセットできると思われている方が多いと思いますが、車両保険に入れない場合があることをご存知でしょうか?
では、どのような場合に車両保険が付けられなくなってしまうのでしょうか?また、車両保険がつけられない場合の対処法はないのでしょうか?
今回は車両保険に入れないケースとその対処法について解説します。
1.車両保険に入れないケースとは?
保険会社ごとに車両保険の引受基準があり、その基準を満たさない場合には、引き受けを拒否され、車両保険が付けられないケースがあります。
保険会社が車両保険の引き受けを断る理由は、他の契約者との公平性を保つ観点から事故のリスクが高い方等の契約は断る必要性があるからです。
では、どのような場合に車両保険の引き受けが断られる可能性があるのでしょうか?車両保険に入れない主なケースは下記の通りです。
1-1.年式が古い車
初度登録年月から一定年数が経過した車については、車両保険金額の適正な設定が難しいため、車両保険の引受を制限している保険会社が多くなっています。
セゾン自動車火災保険では、初度登録から15年以上経過している車は車両保険を引き受けないと明確にHP上に記載しています。
また、ソニー損保の場合には、初度登録から18年以上経過している車は車両保険を引き受けないとしています。
なお、製造から25年以上経ったクラシックカーの車両保険については、Chubb損害保険(旧エース損害保険)のクラシックカー保険で引き受けてもらえる可能性があります。
他の保険会社からChubb損害保険のクラシックカー保険に乗り換える場合、他社の自動車保険契約のノンフリート等級、事故有係数適用期間を引き継ぐことができます。
参考:クラシックカー保険(Chubb損害保険)
1-2.車両価格が高い車
車両価格が高い車についても車両保険の引き受けを制限している保険会社があります。
セゾン自動車火災保険やソニー損保では、市場販売価格相当額が1,000万円を超える車については車両保険を引き受けないとしています。
セゾン自動車火災保険やソニー損保の場合、高級外車などは、車両保険に入れないケースが多いでしょう。
1-3.車両料率クラスが高い車
車両保険の料率クラスが高い車も車両保険の引き受けが制限される可能性があります。
自家用普通乗用車、自家用小型乗用車については型式毎に「型式別料率クラス」が設定されています。「型式別料率クラス」は直近の事故発生状況を反映し、保険種類(対人賠償保険、対物賠償保険、人身傷害補償保険・搭乗者傷害保険、車両保険)毎に定められていて、クラスは1~9の9段階です。
最も事故実績が低い1クラスが最も保険料が安く、最も事故実績が高い9クラスが最も保険料が高くなります。
尚、「型式別料率クラス」は損害保険料率算出機構が決定したものを各保険会社で利用しているので、保険会社によって異なることはありません。
事故の発生状況によって型式毎に料率クラスが異なるので、同じ補償内容でも自動車保険の対象となる被保険自動車(型式)によって保険料が異なることになります。
【料率クラスの例(2019年1月現在)】
車名 | 型式 | 料率クラス | |||
---|---|---|---|---|---|
車両 | 対人 | 対物 | 傷害 | ||
ランドクルーザー | URJ202W | 9 | 3 | 5 | 3 |
マーチ | K13 | 3 | 4 | 4 | 4 |
セゾン自動車火災保険やソニー損保では、車両料率クラスが『9』の車は車両保険を引き受けないとしています。つまり、上記のランドクルーザー(型式:URJ202W)は、車両料率クラスが『9』のため、車両保険を付けることはできません。
但し、「型式別料率クラス」は直近の事故発生状況を反映し、毎年1回、1月1日付けで損害保険料率算出機構にて見直しを行いますので、年が明ければ料率クラスが変更になり、車両保険の引受が可能になることもあります。
上記以外で車両料率クラスが『9』の車は、下記のような自動車です。(2019年1月現在)
●アウディーのA8(型式:4HCEUL)
●メルセデスベンツのS600(型式:221176)
高級車で車両保険金の支払いが多い型式の車は車両保険に入れない可能性があります。
ちなみに、軽自動車には型式別料率クラスがないので、軽自動車の場合、どの車種でも補償内容が同一であれば、保険料も同額になります。但し、今後は軽自動車にも型式別料率クラスが導入される予定です。
「型式別料率クラス」の詳細については、下記記事をご参照ください。
『車によって自動車保険の保険料が違う!?』
なお、型式別料率クラスを知りたい場合は、下記の損害保険料率算出機構のサイトで検索できます。メーカー・車名で検索する方法と、型式で検索する2つの方法があります。
参考:型式別料率クラス検索(損害保険料率算出機構HP)
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1-3.車両保険の保険期間途中での付帯(セット)
車両保険を保険期間の途中で付帯(セット)することができない保険会社があります。契約時に車両保険なしで契約して、保険期間途中で車両保険の必要性を感じても途中付帯ができないことになります。
チューリッヒの自動車保険は、車両入替を伴わない場合の車両保険の中途付帯は出来ないとしています。
また、車両保険を保険期間の途中で付帯できる保険会社でも、車両保険加入後に単独事故等を起こし、車両保険を請求すると、単独事故を起こしてから車両保険への加入を申し出たのではないかなどと怪しまれ、保険金支払いに時間がかかる事例も発生していますので、ご注意ください。
1-4.ノンフリート等級が1~3等級の自動車保険契約
契約台数が9台以下の自動車保険はノンフリート契約(10台以上はフリート契約)と呼ばれています。多くの個人の方が契約されている自動車保険はノンフリート契約です。
ノンフリート契約では、「1~20等級の区分」、「無事故・事故有の区分」により保険料が割増・割引されるノンフリート等級別料率制度が採用されています。自動車保険の割引制度と認識されている方が多いと思います。
そのノンフリート等級が1~3等級など、低い場合には車両保険の引き受けが制限される場合があります。
チューリッヒのネット専用自動車保険では、『次回のノンフリート等級が1等級~3等級の場合には、車両保険は付帯できません』としています。
また、ノンフリート等級が低くても車両保険を引き受ける保険会社の場合でも、免責(自己負担)を10万円に設定するなどの条件を付けられる場合があります。
自動車保険の等級制度については、下記記事をご参照ください。
『自動車保険等級制度(ノンフリート等級別料率制度)』
車両保険が付けられない場合の対処法
先述の通り、車両保険の引き受けについては、保険会社ごとに基準があり、各社共通の引き受け基準があるわけではありません。よって、1社で車両保険が入れない場合でも他社に問い合わせたらセットできる可能性はあります。
また、車両保険の引き受けに関しては、通販型自動車保険に比べて大手損保会社等の代理店型自動車保険の方が融通が利くと思います。
通販(ダイレクト)型自動車保険で、車両保険の引き受けを断られた場合には、代理店型の保険会社に相談してみてください。複数の代理店型の保険会社に問い合わせれば、通販(ダイレクト)型自動車保険で車両保険を断られた場合でも引き受けてくれる可能性があります。
例えば、セゾン自動車火災では、車両価格2,000万円を超えるフェラーリ等の高級外車は車両保険の引き受けができません。しかし、代理店型の保険会社であれば、条件にもよりますが、高級外車などの車両保険の引き受けも可能です。
ただし、飛び込みで高級外車に車両保険をセットしたいといっても代理店に断られる可能性があります。高級外車などは、車両を購入したディーラーや車屋さんが代理店をしているでしょうから、そこで車両保険をセットしてもらうのが無難でしょう。
まとめ
車両保険に入れないケースについてご理解いただけたでしょうか?
上記の通り、車両保険の引き受けに関しては、通販型自動車保険に比べて代理店型自動車保険の方が融通が利きますので、通販型で車両保険に入れない場合には、代理店型の保険会社に相談してみてください。
なお、自動車保険契約自体の引き受けについても通販型に比べて代理店型の保険会社の方が融通が利きます。
『1等級だと自動車保険に入れない!?|契約を断られた場合の対処法』
最終更新日:2019年1月31日
No.242