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自転車保険

自転車保険はTSマーク付帯保険加入で大丈夫?

自転車事故による高額賠償事例の増加に伴い、自転車保険に感心を持たれている方が多いと思います。自転車保険と呼ばれる商品はau損保などが販売していますが、その中でTSマーク付帯保険があります。「TSマーク付帯保険への加入の必要性はありますか?」というご質問をよく頂きます。

今回はTSマーク付帯保険の補償内容紹介とその補償内容は十分かを検証したいと思います。自転車保険を比較検討されている方は参考にして頂ければと思います。

1.TSマーク付帯保険とは?

TS(TRAFFIC SAFETY)マークとは、自転車安全整備士が勤務する自転車安全整備店で購入または点検整備を行い、基準に合格した自転車に貼られるものです。

TSマークには、青色TSマーク(第一種)と赤色TSマーク(第二種)の2種類があり、付帯される保険の補償額が異なります。保険契約の引受保険会社は三井住友海上火災保険です。

TSマークを貼る料金は、点検整備を受ける料金です。よってTSマーク付帯保険の保険料は、点検整備費を受ける費用ということになります。整備料は1,500円~2,000円程度のようです。尚、点検整備を受け部品交換が必要な場合には、交換する部品代が別途必要になります。

保険の有効期間は、TSマークに記載されている点検日から1年間です。つまり、TSマーク付帯保険を更新するには、1年に1回は点検整備を受けて、TSマークの更新が必要となります。

【赤色TSマーク】
第二種TSマーク(赤色マーク)

 

 

 

2.TSマーク付帯保険の補償内容

TSマーク付帯保険には傷害補償、賠償責任補償、被害者見舞金があります。それぞれの補償内容、補償額は下記の通りです。尚、TSマーク付帯保険は、自転車に付帯されているので、自転車の所有者に限らず、友人や知人、家族がTSマーク付帯保険が付帯された自転車を運転する場合には補償されます

一方、自転車保険(個人賠償責任保険)の場合は、人(被保険者)に保険がかかっています。よって、自転車保険に加入している方は、誰の自転車を運転しても補償されます。

 

1)傷害補償

種別 死亡若しくは
重度後遺障害(1~4級)
入院(15日以上)
青色TSマーク 30万円(一律) 1万円(一律)
赤色TSマーク 100万円(一律) 10万円(一律)

 

2)賠償責任補償(限度額)

種別 死亡若しくは
重度後遺障害(1~7級)
青色TSマーク 1,000万円
赤色TSマーク 1億円

 

平成26年(2014年)10月1日より赤色TSマークの賠償責任補償額が2,000万円から5,000万円に引き上げられました。

更に、平成29年(2017年)10月1日より赤色TSマークの賠償責任補償額が5,000万円から1億円に引き上げられました。
※補償額が1億円となるのは、平成29年10月1日以降に普通自転車の点検整備を行い、赤色TSマークを貼付した場合です。平成29年9月30日以前に赤色TSマークを貼付している場合には補償額は1億円にはなりませんので、ご注意ください。

 

3)被害者見舞金

種別 入院15日以上
赤色TSマーク 10万円(一律)

被害者見舞金は赤色TSマークのみの補償です。平成26年(2014年)10月1日より新設されました。

 

上記の補償内容を見て頂くと分かる通り、TSマーク付帯保険は自転車搭乗者自身のケガに対する「傷害補償」と、自転車事故等により他人にケガ等の損害を与えてしまった場合に対する「賠償責任補償」がセットになった商品ですが、これで補償内容が充分かというと疑問が残ります。

次項以降で補償内容が十分でないと考える理由をご説明します。

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3.TSマーク付帯保険の補償額を超える高額な賠償事例あり

最近の自転車事故の賠償事例を確認すると、TSマークの賠償責任補償の補償限度額5,000万円を超える賠償事例があります。約9,500万円という高額な賠償を命じた裁判例もあります。

赤色TSマークの補償額は平成29年10月より1億円になりましたが、青色TSマークの賠償責任補償の補償限度額1,000万円では、万一の場合を考えると保険金額が少なすぎます。

更に、対人賠償は死亡若しくは重度後遺障害(1~7級)の補償しかなく、相手がケガのみの場合の補償がありません

相手のケガの対しては赤色TSマークの場合、「被害者見舞金」で補償されますが、入院15日以上で一律10万円では少なすぎます。ケガだけでも治療費、休業損害、慰謝料等を考えると入院15日以上で10万円で済む事例は相当少ないのではないでしょうか。

相手がケガだけであったとしても治療費や慰謝料等を考えると100万を超えるような賠償額になることもあります。そのような場合に備えることは出来ません。

また、青色TSマークには「被害者見舞金」すらありません

 

 

 

4.TSマーク付帯保険には対物賠償の補償がない

TSマーク付帯保険の賠償責任補償は、他人にケガをさせてしまった場合等の対人の補償のみであり、他人のモノを壊してしまった場合の対物の補償がありません。対物の補償がないのは理解できません。対物事故でも高額な賠償額を請求される可能性があります。

例えば、自転車事故により相手がしていた高級な腕時計を壊してしまった場合等、100万くらいの請求をされる可能性もあります。また、停まっている高級車に自転車で当たってしまった等で高額な対物賠償額を請求される可能性もあります。

 

 

 

5.TSマーク付帯保険には示談交渉サービスがない

TSマークの賠償責任補償には示談交渉サービスがありません

自動車保険のように示談交渉サービスが付いていなければ、保険会社は事故相手との示談交渉はしてくれませんので、被害者との交渉を直接しなければなりません。被害者との直接交渉は、一般の方には非常に難しいですし、大きなストレスがかかります。

示談交渉サービスとは?
示談交渉サービスとは、万が一契約者(被保険者)が法律上の損害賠償責任が発生する事故を起こした場合に、契約者(被保険者)に代わって保険会社が事故の過失割合等について相手方や相手方保険会社との示談交渉を代行するサービスです。

示談交渉サービスは、全ての保険で提供されているわけではなく、自動車保険や自転車保険、個人賠償責任特約等の一部の保険や特約にセットされているサービスです。

なお、保険会社によっては、示談代行サービスと呼んでいる会社もあります

 

 

 

まとめ

上記の内容から考えると、平成29年10月から赤色TSマークの補償額が1億円に引き上げられたとしてもTSマーク付帯保険の補償では不安を感じます。TSマーク付帯保険の問題点は、補償額ではなく、補償内容です。よって、自動車保険や火災保険等に加入しているのであれば、特約(オプション)として個人賠償責任補償特約を付帯することをお勧めします。

特にお勧めなのが、自動車保険や火災保険の個人賠償責任補償特約です。自動車保険や火災保険の個人賠償責任補償特約であれば、多くの保険会社が補償額は無制限で、示談交渉サービスもついています。特約の保険料は1,500円程度です。
自動車保険、火災保険にセットできる個人賠償責任補償特約の比較まとめ

個人賠償責任補償特約を付帯すれば、自転車事故により他人にケガをさせてしまった場合や他人のモノを壊してしまった場合の損害賠償金等が補償されます。但し、自転車に搭乗している人(被保険者)の傷害(ケガ)の補償はありません。

 

自動車保険や火災保険に加入していなければ、補償額が大きく、示談交渉サービスが付いている自転車保険に加入することを検討されるといいでしょう。

例えば、au損保の自転車保険「あうて ケガの保険Bycle」は、補償額は最大2億円で示談交渉サービスもついています。

また、三井住友海上はネットで契約できる「ネットde保険@さいくる」も補償額は最大3億円で示談交渉サービス付きです。

 

個人賠償責任保険の補償内容等の詳細については、下記記事をご参照ください。
自転車の事故で注目の個人賠償責任保険

最終更新日:2017年10月1日
No.22