「自動車保険の記名被保険者を単身赴任で別居している夫から妻に変更した場合、等級(割引)は引き継げるのか?」との質問を頂きました。
別居している配偶者に自動車保険の等級(割引)は引き継げるのでしょうか?また、その他の自動車保険の特約等について、別居している配偶者が補償範囲に含まれるのかを確認したいと思います。
自動車保険の補償や各特約について、配偶者の取り扱いを勘違いすると、重複して同じ補償の保険に加入し、保険料がムダになってしまう可能性があります。
今回の記事を読み、自動車保険における配偶者の扱いを理解し、保険料のムダをなくして頂ければと思います。
1.配偶者は、同居・別居を問わず等級(割引)の引継ぎが可能
冒頭の質問ですが、配偶者間であれば、同居・別居を問わずに自動車保険の等級(割引)を引継ぐことが可能です。
また、配偶者のほかに記名被保険者(主に車を使用する方)または配偶者の同居の親族にも等級(割引)を引継ぐことがで可能です。例えば、単身赴任している夫から配偶者(妻)と同居している子供に等級(割引)を引き継ぐことができます。
【等級の引継ぎが可能な範囲】
- 記名被保険者の配偶者
- 記名被保険者の同居の親族
- 配偶者の同居の親族
※配偶者は内縁関係でも可です。また、同性パートナーにも等級が引き継げる保険会社もあります。
自動車保険のノンフリート等級別料率制度の詳細については、下記記事をご参照ください。
『自動車保険等級制度(ノンフリート等級別料率制度)』
2.別居の配偶者が補償対象となる自動車保険の特約
ここからは、別居の配偶者でも補償対象となる自動車保険の特約についてご紹介します。
2-1.運転者限定特約
運転者を限定している場合は、どうでしょうか?運転者限定特約の「本人・配偶者限定」や「家族限定」については、単身赴任などで記名被保険者と配偶者が別居していても、配偶者は補償されます。
記名被保険者とその配偶者は別居・同居にかかわらず補償の対象となりますので、例えば、夫が単身赴任している場合でも運転者を「本人・配偶者限定」にし、保険料を節約することができます。
2-2.ファミリーバイク特約
自動車保険に付加(セット)できるファミリーバイク特約の補償範囲についても配偶者は同居・別居を問いません。別居の配偶者も補償されます。また、配偶者と同居している親族も補償範囲に含まれます。
ファミリーバイク特約の詳細については、下記記事をご参照ください。
『ファミリーバイク特約を検討する際に確認すべき9つのポイント』
2-3.個人賠償責任補償特約
自動車保険等に付加できる個人賠償責任補償特約の補償範囲についても配偶者は同居・別居を問いません。別居の配偶者も補償されます。また、配偶者と同居している親族も補償範囲に含まれます。
例えば、単身赴任している夫が個人賠償責任補償特約を自動車保険にセットすれば、別居している配偶者やその子供は補償の対象となります。別居しているからと、妻や子供が自転車保険に加入すると、個人賠償責任部分の補償が重複し、保険料がムダになる可能性があります。
個人賠償責任保険や自転車保険の補償内容等の詳細については、下記記事をご参照ください。
『自転車の事故で注目の個人賠償責任保険』
『自転車保険加入前に確認すべき6つのポイント』
2-4.弁護士費用特約
自動車保険に付加できる弁護士費用特約についても配偶者は同居・別居を問いません。別居の配偶者も補償されます。
また、配偶者と同居している親族も補償範囲に含まれます。
例えば、夫が単身赴任先で自動車を所有し、自動車保険に弁護士費用特約を付帯している場合、自宅にある自動車に弁護士費用特約を付帯していなくても、配偶者や配偶者と同居している子供については、夫が単身赴任先で契約している自動車保険の弁護士費用特約で補償されます。
3.配偶者は別居でも年齢条件が適用される
年齢条件を設定する際には別居の配偶者の年齢も考慮する必要があります。
記名被保険者(主に車を使用する方)が個人の自動車保険の場合、契約の車を運転される下記の方の中で一番若い方に合わせて年齢条件を設定します。
①記名被保険者
②記名被保険者の配偶者
③①又は②の同居の親族
④上記のいずれかの方の業務従事中の使用人
イーデザイン損保(平成23年4月1日以降始期日契約の場合)、アクサダイレクト(平成28年3月1日以降始期日契約の場合)、ソニー損保等は、上記④の方については、年齢条件は適用されません。つまり、契約の車を運転される下記の方の中で一番若い方に合わせて年齢条件を設定します。
①記名被保険者
②記名被保険者の配偶者
③①又は②の同居の親族
上記の方に年齢条件が適用されます。上記以外の方が運転する場合は、年齢条件に関係なく補償されます。
親族の場合は、同居の場合のみ年齢条件が適用されますが、配偶者の場合には、同居、別居関係なく、年齢条件を合わせる必要があります。
つまり、別居の子供が帰省時に車を運転する場合には、年齢条件は適用されませんが、別居の配偶者が車を運転する場合には、年齢条件が適用されることになります。
4.自動車保険の配偶者は内縁(事実婚)も含む
「配偶者」という用語についての注意点ですが、自動車保険における配偶者とは、内縁関係(事実婚)も含みます。法律上の婚姻関係が無くても問題ありません。
5.同性パートナーも「配偶者」になる?
東京海上日動は、2017年1月の住まいの保険(火災保険)改定から、同性のパートナーも「配偶者」として扱う商品改定を行いました。
LGBT※に関する取り組みの1つで、自動車保険等も改定のタイミングで同性パートナーを「配偶者」として扱う改定を行っています。
但し、制度の悪用を防ぐため、契約時または事故時において、パートナー間の関係性を確認するため、確認資料(自認書兼同意書や住民票)の提出が必要な場合があります。
東京海上日動以外にも損保ジャパン日本興亜なども同性パートナーを「配偶者」として扱う改定を行っています。
『同性パートナーと保険』
※LGBTとは、L:レズビアン(女性同性愛者)、G:ゲイ(男性同性愛者)、B:バイセクシュアル(両性愛者)、T:トランスジェンダー(心と体の性の不一致)の頭文字をとった、性的マイノリティ(少数者)を限定的に指す言葉です。
まとめ
上記の通り、配偶者に関しては同居が条件ではなく、別居の場合も等級の引継ぎが可能であったり、運転者限定特約の「本人・配偶者限定」や「家族限定」等でも別居の配偶者が補償の対象になります。
ファミリーバイク特約や個人賠償責任補償特約については、補償の対象となる方の範囲が広いので、補償対象者の範囲を確認し、補償の重複にご注意ください。補償が重複すると、保険料をムダに支払うことにつながってしまいます。
『補償が重複しやすい4つのパターン』
また、自動車保険の運転者限定や特約等の補償範囲は、「別居の未婚の子」もポイントになります。「別居の未婚の子」の詳細については、下記記事をご参照ください。
『別居の未婚の子と自動車保険』
最終更新日:2019年1月29日
No.226