スマホ(携帯電話)やカーナビなどを操作しながらの運転「ながら運転」の罰則が強化されます。
ネットやテレビなどで報道されてきましたが、「ながら運転」はどのように厳罰化されるのでしょうか。今回は、「ながら運転」の下記ポイントについて解説します。
- ながら運転とは?|定義は?
- ながら運転厳罰化の内容
- いつから「ながら運転」は厳罰化される?
- 「ながら運転」中の交通事故も自動車保険で補償される?
「ながら運転」の罰則強化へ
車の運転中にスマートフォンなどを使用する「ながら運転」が厳罰化されます。道路交通法が改正され、「ながら運転」の違反点数や罰金が引き上げられます。改正内容などについて、これから解説していきます。
「ながら運転」の厳罰化は、Twitter でも下記のように話題となっています。
ながら運転とは?|スマホ(携帯)だけでなく、カーナビの操作も対象?
そもそも、ながら運転とはどのような運転を指すのでしょうか?どこからが「ながら運転」になるのかが非常に気になるポイントだと思います。
その「ながら運転」の定義を確認したいと思います。
改正道路交通法の条文(令和元年12月1日施行)は下記の通りです。
(運転者の遵守事項)
第七十一条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
五の五 自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百十八条第一項第三号の二において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百十八条第一項第三号の二において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。
(出典:警察庁)
上記の条文を要約すると、スマホ(携帯電話)で通話をしながらや、カーナビやタブレットの画面を操作、観ながらの運転が「ながら運転」に該当します。
(出典:政府広報オンライン)
信号待ちのスマホ操作は「ながら運転」になる?
道路交通法上、「当該自動車等が停止しているときを除き」となっているので、赤信号で信号待ちしている際のスマホ操作は「ながら運転」には該当しません。
しかし、信号待ちの間のスマホ操作も危険であることは間違いありませんので、安全な場所に車を停めて操作する方がいいでしょう。
カーナビやタブレットの操作なども対象?
車載のカーナビやホルダーに固定したスマホ・タブレットの操作については、どうなるのでしょうか?
車載カーナビやホルダーに固定したスマホ・タブレットなどは、「2秒以上画面を見続ける」と違反となります。
スマホやタブレットをホルダーなどに固定してカーナビとして利用している方も多いと思います。スマホやタブレットをホルダーに固定したからといって、運転中に操作していいわけではないので、注意が必要です。
ハンズフリーでの通話も「ながら運転」?
道路交通法上、「その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る」となっているので、ハンズフリーでのスマホなどの携帯電話での通話は、違反にはなりません。
ながら運転を分かりやすく説明した動画がありましたので、興味のある方はご参照ください。
いつから「ながら運転」の罰則が強化される?
2019年(令和元年)12月1日から改正道路交通法が施行され、ながら運転が厳罰化されます。
「ながら運転」厳罰化の内容は?
ながら運転の罰則は、改正道路交通法の施行により、下記のように強化されます。
罰則
罰則については、下記のように強化されます。
改正前:5万円以下の罰金
改正後:6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金
反則金
反則金は下記のよう引き上げられます。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
大型車 | 7,000円 | 25,000円 |
普通車 | 6,000円 | 18,000円 |
自動二輪 | 6,000円 | 15,000円 |
原付 | 5,000円 | 12,000円 |
違反点数
違反点数は、下記のように厳罰化されます。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
携帯電話使用等 (保持) |
1点 | 3点 |
携帯電話使用等 (交通の危険) |
2点 | 6点 |
改正道路交通法の施行により、「ながら運転」で事故を起こすと違反点数は6点となり免許停止処分となります。
つまり、2019年12月1日以降にスマホなどを操作しながら事故を起こすと、一発免停となります。
なぜ、「ながら運転」は厳罰化される?|ながら運転の事故例
2013年に2,038件だった「ながら運転」を原因とする人身事故は、2018年には2,790件と、5年間で1.4倍に増えています。携帯電話等の使用中の死亡事故率は、使用していない場合の2.1倍にもなります。
2016年には、愛知県一宮市で横断歩道を渡っていた小学4年の則竹敬太君(当時9)がスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」を操作していた男のトラックにはねられ死亡した事故がありました。
スマホでゲームをしながらトラックを運転し、死亡事故を起こすなど、殺人といっても過言ではありません。
下記の通り、車は1秒間でかなりの距離を進みます。時速60kmで2秒間、スマホの画面を観ていれば、約34mも車は進むことになります。
「ながら運転」は、車を走る凶器に変えます。
(出典:政府広報オンライン)
「ながら運転」が原因の悲惨な事故が増えていることから、今回の厳罰化となりました。
「ながら運転」での事故は自動車保険で補償される?
ながら運転しながら事故を起こした場合でも自動車保険で補償されるのでしょうか?
スマホで電話をしながらや、カーナビを操作しながら運転していて事故を起こした場合でも、被害者、加害者ともに自動車保険で補償されます。
事故相手にケガをさせてしまった場合の治療費などは、自賠責保険や対人賠償保険で補償されます。
『対人賠償保険とは?自賠責保険との違いは?』
『自賠責保険とは?|請求方法・保険料・補償内容などを解説』
事故相手の車などを壊してしまった場合の車両の修理費は、対物賠償保険で補償されます。
『対物賠償保険とは?|保険金額は無制限にするべきか?』
なお、「ながら運転」をしている運転者だけでなく、事故相手にも過失(責任)があるような事故の場合には、「ながら運転」をしている運転者の過失割合が修正され、高くなります。
『交通事故の過失割合は誰が決めるのか?』
また、「ながら運転」をしていて単独事故を起こし、運転者がケガをした場合の治療費や、車が破損した場合の修理費は、人身傷害保険や車両保険などで補償されます。
『人身傷害保険とは?押さえておくべき6つのポイント』
『車両保険の種類を一般型からエコノミー型にすると保険料が安くなる?』
まとめ
「ながら運転」が厳罰化されるのは、悲惨な事故が増えていることを考えれば、当然の流れといえるでしょう。
「ながら運転」の罰則が強化されたからということではなく、悲惨な事故をなくすためにも「ながら運転」は絶対にしてはなりません。