高額な賠償事例が出ている自転車事故があり、自転車保険への注目度は上がっています。
また、大阪府、兵庫県、滋賀県、名古屋市、京都市などで、自転車保険への加入が義務化され、既に自転車保険に加入している方も多いと思いますが、補償内容についてしっかりと理解している方は少ないのではないでしょうか?
自転車保険とはどのような商品なのか?加入の際にはどのような点に注意すべきか?保険料をムダにしないためのポイントなどについて解説します。
1.自転車保険とは?
自転車保険とは、個人賠償責任保険と傷害保険がセットになった商品です。
「個人賠償責任保険」は、他人にケガさせたり、他人のモノを壊してしまった場合の損害賠償責任を補償する商品です。一方、「傷害保険」は、自分のケガを補償する商品です。
それぞれの補償内容の詳細は、以下の通りです。
1)個人賠償責任保険とは?
個人賠償責任保険とは、日常生活における偶然の事故により、他人にケガを負わせたり、他人のモノを壊してしまい、法律上の損害賠償責任を負った場合、被害者に支払うべき損害賠償金等を補償する商品です。
自転車保険という商品名ですが、補償される事故は自転車事故だけではなく、下記のような事故も個人賠償責任保険で補償されます。
- 飼っている犬が散歩中に他人に噛み付いてケガをさせてしまった。
- 買い物中に高価な商品を壊してしまった。
- 自転車で人をはね、ケガを負わせたり、死亡させてしまった。
- 自宅の窓から誤ってモノを落として、下を歩いていた人にケガを負わせてしまった。
- マンションに居住中に水道の蛇口を閉め忘れ、階下の住居を水浸しにしてしまった。
- ゴルフのプレー中に打ったボールが他人にあたり、ケガをさせてしまった。 等
2)傷害保険
傷害保険は、事故によるケガや死亡を補償する商品です。支払われる保険金は死亡〇00万円、入院1日〇,000円など、定額払いで治療実費が支払われるわけではありません。
【支払われる保険金例】
死亡・後遺障害:400万円
入院保険金日額:6,000円
通院保険金日額:1,000円
手術保険金:3万円または6万円
尚、傷害保険には、普通傷害保険と交通傷害保険があり、普通傷害保険の方が補償範囲が広い分、保険料は高くなります。それぞれの補償は以下の通りです。
例えば、au損保の自転車保険のブロンズコース(本人タイプ・保険期間1年)は、交通事故傷害プランが月額370円、普通傷害プランが880円と2倍以上、保険料が違います。
・自転車で転倒し、ケガをした
・歩行中に自動車に接触して、ケガをした
・自転車で転倒し、ケガをした
・自宅の階段で転倒し、ケガをした
2.自転車保険は、家族1契約で大丈夫?
さて、ここからは、自転車保険に加入する際に注意して頂きたいポイントについて解説します。
自転車保険は個人賠償責任保険と傷害保険がセットになった商品ですが、自転車保険に加入する最大の目的は、自転車事故で加害者になった場合の損害賠償に備えるためではないでしょうか?
自転車事故で加害者になった場合に備えるための補償が、個人賠償責任補償です。その個人賠償責任補償は、補償対象者の範囲が下記の通り、広いという特徴があります。
【補償対象者(被保険者)の範囲】
①本人
②本人の配偶者
③①又は②と生計を共にする同居の親族
④①又は②と生計を共にする別居の未婚の子
例えば、親が自動車保険に個人賠償責任補償特約をセットしていた場合、原則、その家族全員が補償の対象者となります。つまり、親が個人賠償責任保険に加入してれば、子供は別途自転車保険へ加入する必要はないということです。
上記のような点を理解せず、親が個人賠償責任保険に加入しているにも関わらず、子供のために別途自転車保険に加入している方がいらっしゃいます。
個人賠償責任保険は、2重で加入したからといって、2倍の保険金が支払われるわけではありません。よって、補償が重複し、保険料がムダになる可能性があります。個人賠償責任保険は特に補償が重複しやすい商品ですので、ご注意ください。
『補償が重複しやすい4つのパターン』
3.個人賠償責任補償の補償額に注意
個人賠償責任補償は、補償額にも注意が必要です。自転車事故による高額賠償事例としては、約9,500万円の判例もあるので、補償額としては、最低でも1億円は必要です。
実は、個人賠償責任補償の補償額が3,000万円程度のプランを用意している自転車保険もあります。高額賠償事例から考えると、補償額が3,000万円では、補償が不足する可能性があります。
4.個人賠償責任補償がないプランに注意
自転車保険の中には、個人賠償責任補償がないプランもあります。つまり自分のケガや死亡・後遺障害に備える傷害保険だけということになります。
上記のようなプランは、すでに個人賠償責任補償を自動車保険などに特約(オプション)としてセットしている方のためのプランです。個人賠償責任保険に加入していない状態で、間違って加入しないようにご注意ください。
5.示談交渉サービスは付いているか?
自転車事故で加害者になった場合の補償も重要ですが、それと同様に被害者との被害額などの交渉を保険会社が代行してくれる示談交渉サービスも重要です。示談交渉サービスが付いていなければ、原則、自分で被害者と被害額などの交渉を行う必要があります。
実は、自転車保険の中には示談交渉サービスがない商品もあります。例えば、TSマーク付帯保険は、赤色、青色とも示談交渉サービスが付いていません。自転車保険に加入する際には、示談交渉サービスの有無もチェックすることをおすすめします。
『自転車保険はTSマーク付帯保険で大丈夫?』
示談交渉サービスは、全ての保険で提供されているわけではなく、自動車保険や自転車保険、個人賠償責任特約等の一部の保険や特約にセットされているサービスです。
まとめ
自転車保険の特徴についてご理解いただけたでしょうか?
しっかりとした補償内容の自転車保険に加入するとともに、ムダに自転車保険に加入しないようにご注意ください。既に加入している方についても補償額や示談交渉サービスの有無、個人賠償責任補償が重複していないかなどの確認をされることをおすすめします。
No.312