自転車事故が原因の高額賠償事例があり、注目されている自転車保険ですが、その自転車保険は個人賠償責任保険と傷害保険がセットになっている商品です。
相手のケガやモノへの損害を賠償するのは個人賠償責任保険の部分です。今回は、その個人賠償責任保険についてご紹介します。
個人賠償責任保険は補償範囲の広い商品ですので、どのような場合に補償対象となるのかや、逆に補償対象外となる場合について解説していきます。自転車保険や個人賠償責任保険(特約)を検討されている方は参考にして頂ければと思います。
1.個人賠償責任保険とは?
個人賠償責任保険は日常生活における偶然の事故により、他人にケガを負わせたり、他人ものを壊してしまい、法律上の損害賠償責任を負った場合、被害者に支払うべき損害賠償金等を補償するものです。
2.補償内容
個人賠償責任保険で保険金の支払対象となるものは下記の通りです。
1)病院の治療費、慰謝料、休業損害、修理費用、モノの購入費用など被害者に対する損害賠償金
2)訴訟費用(訴訟・仲裁・調停費用、弁護士費用)など
3.補償対象者
個人賠償責任保険は被保険者(補償対象者)が広い保険です。家族の中で1人が加入すれば、ほぼ全員が被保険者になることになります。
具体的な被保険者(補償対象者)の範囲は下記の通りです。
①本人
②本人の配偶者
③①又は②と生計を共にする同居の親族
④①又は②と生計を共にする別居の未婚の子
自動車保険の個人賠償責任補償特約等、商品によっては「生計を共にする」という条件がない場合があります。「生計を共にする」という条件がなければ、親族については別生計であれば同居しているだけで補償対象となり、働いていて別生計の別居の未婚の子も補償対象になります。
ちなみに「生計を共にする」とは、ある保険会社の解説では下記のようになっています。
「生計を共にする」とは、主として被保険者本人の収入により生活を維持している(本人と同一世帯に属する)状態を指します。この関係は、扶養関係にある場合のほか、経済的一体性、連帯性が存在するような関係です。
したがって、一時的に単身赴任をしていて、家族を扶養している場合、勉学のために遠隔地の大学に通学している子供に仕送りをしている場合などは、「生計を共にする」ことになります。
一方で、二世帯住宅で水道料金や電気料金といった公共料金を別々に支払っている場合には、経済的一体性は認められず、「生計を共にする」ということにはなりません。
尚、親族の範囲については、下記記事をご参照ください。
『同居の親族とは?』
4.補償対象となる事例
個人賠償責任保険の補償範囲は広く、自転車事故のみの補償ではありません。個人賠償責任保険の補償対象となる主な事故事例は下記の通りです。
・飼っている犬が散歩中に他人に噛み付いてケガをさせてしまった。
・買い物中に高価な商品を壊してしまった。
・自転車で人をはね、ケガを負わせたり、死亡させてしまった。
・自宅の窓から誤ってモノを落として、下を歩いていた人にケガを負わせてしまった。
・マンションに居住中に水道の蛇口を閉め忘れ、階下の住居を水浸しにしてしまった。
・ゴルフのプレー中に打ったボールが他人にあたり、ケガをさせてしまった。 等
自転車保険に加入した場合にも自転車事故だけでなく、上記のような事故も補償対象となります。
5.補償対象外となる事故
補償範囲が広い個人賠償責任保険ですが、免責(補償対象外)となる事故があります。補償対象外となる主な事故は下記の通りです。
1) 職務遂行中の事故
仕事中の事故は個人賠償責任保険では補償対象外です。プライベート(日常生活)での事故のみが補償対象となります。例えば、仕事中に自転車に乗っていて歩行者と接触し、ケガをさせた場合、個人賠償責任保険では補償されませんので、ご注意ください。
2)船舶・航空機・車両の所有、使用、管理に起因する事故
船舶・航空機・車両の所有、使用、管理に起因する事故は個人賠償責任保険では、補償対象外です。例えば、自動車事故は自動車保険(自賠責含む)での補償になります。
3)他人から借りたものへの損害
他人から借りたものを壊した場合、個人賠償責任保険では補償対象外です。例えば、友人から借りたビデオカメラを壊した場合、補償対象外となります。
借りたものについては、受託物賠償責任保険が必要になります。
※上記は補償対象外となる代表的な事例で全てではありませんので、ご注意ください。
6.示談交渉サービス
最近では自転車保険(個人賠償責任保険)にも示談交渉サービスが付いている商品が多くなりましたが、以前は自動車保険の特約として個人賠償責任補償を付加する場合等しか示談交渉サービスが付いていませんでした。
今でも示談交渉サービスが付いていない商品もありますので、加入の際や特約を付加する場合はご注意ください。示談交渉サービスが付いていない場合、被害者との交渉は自ら行う必要があります。
示談交渉サービスは、全ての保険で提供されているわけではなく、自動車保険や自転車保険、個人賠償責任特約等の一部の保険や特約にセットされているサービスです。
7.単独では販売停止
保険会社では『個人賠償責任保険』単独での販売は売り止めの方向です。火災保険、自動車保険、傷害保険等に特約(オプション)として付帯(セット)することが出来ます。
また、クレジットカード会社が会員向けに販売していたり、冒頭でも触れましたが、au損保等が自転車保険として傷害保険とセットで販売しています。
保険料は保険会社によっても異なりますが、自動車保険の特約として個人賠償責任補償を付加する場合は、補償額(保険金額)が無制限で年間保険料は1,500円程度です。
まとめ
『個人賠償責任保険』は補償範囲がかなり広く、また保険料も安いので、おすすめの保険です。自動車保険、火災保険にご加入であれば、特約としてご加入するのが得策でしょう。自動車保険や火災保険にオプションとしてセットできる個人賠償責任補償特約の各保険会社ごとの比較を下記記事で行っていますので、ご参照ください。
『自動車、火災保険等に付加できる個人賠償責任補償特約の比較まとめ』
日本もアメリカほどではありませんが、訴訟社会になりつつありますので、是非ご一考ください。
最終更新日:2017年9月21日
No.21