「大地震が起こった場合、地震保険の保険金が削減されることがあると聞いたが本当か?」との質問を頂くことがあります。万一の際に受け取れる保険金が削減されるようなことがあれば、地震保険に加入する意味はないと思われている方がいます。
本当に地震保険の保険金は削減されることがあるのでしょうか?巨大地震が発生した際に地震保険の保険金が減額されてしまうのであれば、地震保険への加入に不安を感じる方も多いと思います。
そこで今回は、地震保険の保険金支払の下記ポイントについて解説します。
- 地震保険の保険金は削減されることがあるのか?
- 地震保険の総支払限度額とは?
- 地震保険の保険金が削減される割合
- 地震保険の総支払限度額の引き上げ推移
- 地震保険に加入する意味はあるのか?
1.地震保険の保険金は削減されることがある?
地震災害は巨額の保険金支払をもたらす可能性があり、民間損害保険会社の支払能力には限度があるので、地震保険では保険責任の大半を政府が再保険により引受けています。
しかし、政府といえども無限に責任を負うことはできないため、1回の地震等における保険会社責任部分も含めた保険金の支払限度額が定められていています。
その支払限度額を超えた場合、一定の割合で保険金が削減されることがあります。
「地震保険に関する法律」には支払保険金の総額が支払限度額を超えた場合、その支払うへき保険金を削減できる旨が規定されています。
2.保険金が削減される割合
具体的には支払保険金の総額が総支払限度額を超えた場合、契約ごとに以下の算式により保険金が削減されることがあります。
但し、保険金を削減するかの判断は、地震発生後、必要に応じて財務省に設置される地震保険審査会(財務大臣が任命する有識者で構成)での審議を参考に財務大臣が告示することになっています。
3.地震保険の総支払限度額
地震保険の総支払限度額は2018(平成30)年4月1日現在、11兆3,000億円となっています。地震保険の保険金支払総額が11兆3,000億円を超えた場合に上記の算式で保険金が削減されることになります。
ちなみに、日本損害保険協会によると、東日本大震災関連で支払われた地震保険金の総額が2012年5月31日現在で、1兆2345億円としていますので、現在の地震保険の総支払限度額(11兆3,000億円)であれば東日本大震災の約5.8倍の支払いには耐えられるようになっています。
では、過去の大きな地震で地震保険の保険金はどの程度支払われているのでしょうか?過去の大きな地震による地震保険金の支払状況は下表の通りです。
地震名 | 発生年月日 | 支払保険金 |
---|---|---|
兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) | 1995/1/17 | 783億円 |
平成13年芸予地震 | 2001/3/2 | 169億円 |
福岡県西方沖を震源とする地震 | 2005/3/20 | 169億円 |
平成16年新潟県中越地震 | 2004/10/23 | 149億円 |
平成19年新潟県中越沖地震 | 2007/7/16 | 82億円 |
福岡県西方沖を震源とする地震 | 2005/4/20 | 64億円 |
十勝沖地震 | 2003/9/26 | 60億円 |
平成20年岩手・宮城内陸地震 | 2008/6/14 | 55億円 |
駿河湾を震源とする地震 | 2009/8/1 | 49億円 |
岩手県沿岸北部を震源とする地震 | 2008/7/24 | 40億円 |
4.地震保険の総支払限度額の引き上げ推移
地震保険の総支払限度額は、関東大震災クラスの巨大震災が発生した場合でも、保険金の総額がこの額を超えることがないように設定されており、適宜、見直しが行われています。
実際に平成24年4月からは5兆5,000億円だった支払限度額が6兆2,000億円に引き上げられています。また、平成26年4月1日には、契約状況を勘案して6兆2,000億円から7兆円に引き上げられています。更に平成28年4月1日に7兆円から11兆3,000億円へ引き上げられました。
まとめ
結論としては、「地震保険の保険金は、大きな地震が発生した際には削減される可能性がある」です。しかし、保険金総額が支払限度額を超えたら保険金が削減されるから地震保険には加入しないと考えるのはちょっと早計ではないでしょうか?
上記の通り、総支払限度額の見直しは適宜行われていますので、地震保険金が削減される確率は低いと考えられます。
地震保険に加入していないと地震・噴火またはこれらによる津波が起因による建物や家財への損害は充分に補償されません。地震保険に未加入の方は、下記記事も参考にして頂き、地震保険の内容をご確認頂ければと思います。
『地震保険について抑えておくべき5つのポイント』
最終更新日:2018年11月29日
No.91