新型肺炎コロナウイルス(COVID-19)の感染が日本でも拡大しています。中国武漢からの帰国者以外の方でも感染が確認されるようになってきました。
一般的な社会生活を送っている人が新型肺炎に感染し、三次感染、四次感染が起きている可能性も強まっています。
このまま日本でも市中感染が広がり、パンデミック(感染爆発)が起こってしまうのでしょうか?
感染の予防は可能なのでしょうか?
これまで日本で確認された感染者の感染経路を確認しながら、予防法についても探ってみたいと思います。
新型肺炎コロナウイルスの日本国内での感染者は?感染経路は?
現在、日本国内で感染が確認された主な事例は下記の通りです。感染経路も分かる範囲で確認してみました。
東京都
2020年2月13日
東京都の70代のタクシー運転手の男性の感染が確認されました。
この男性は、下記の14日に感染が確認されたタクシー組合支部の従業員と同様に、先月18日に屋形船で開かれた城南地区の個人タクシー組合支部の新年会に参加していたということです。
2020年2月14日
東京都内に住む2人が新たに新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。
下記の通り、2人とも2月13日に感染が確認された70代男性タクシー運転手の関係者です。
2人とも13日に感染が確認された、都内に住む個人タクシー運転手の男性の関係者で、1人は運転手が参加した新年会の会場となった屋形船の従業員で、もう1人はタクシーの組合支部の従業員です。
2人は入院していますが、重症ではないということです。
都によりますと、個人タクシーの運転手は先月18日に屋形船で開かれた城南地区の個人タクシー組合支部の新年会に参加していたということです。
新年会の参加者はおよそ80人で、このうちおよそ10人に発熱などの症状が見られたということです。
一方、屋形船の従業員は中国・湖北省からの旅行者と接触していたことが確認されました。
(出典:NHK NEWS WEB)
東京都で感染が確認された3人の方に関しては、まず、屋形船の従業員が中国・湖北省からの旅行者と接触して感染し、その後、タクシー運転手とタクシーの組合支部の女性従業員に感染が広がった可能性が考えられます。
更に新年会に参加した80人のうち、10人に発熱の症状が出ているとのことで、今後も感染者が増える可能性があります。
2020年2月15日
東京都内に住む8人が新型コロナウイルスに新たに感染したことが明らかになりました。
このうち7人はいずれも13日に感染が確認された個人タクシーの運転手が出席した屋形船での新年会の会場にいたということです。
7人のうち、6人はタクシー運転手4人とほかの運転手の家族2人です。1人は屋形船の従業員とのことです。
残る1人は都内に住む40代の会社員の男性で、せきの症状が出たあとの今月10日に新幹線を使って愛知県に出張していました。
男性は症状が出る前に「中国の人と会ったかもしれない」という趣旨の話をしているということです。
神奈川県
2020年2月13日
神奈川県に住む80代の女性が死亡し、新型コロナウイルスに感染していたことが確認されました。国内で新型肺炎の感染による死亡者が出たのは初めてです。
なお、この女性は、感染が確認された東京都の70代タクシー運転手の男性の義理の母であることが分かっています。
現在のところ、2人に接点があったかは分かっていませんが、義理の息子から80代女性へ感染が広がった可能性が考えられます。
千葉県
2020年2月13日
県内に住む20代男性の新型肺炎感染が確認されました。
男性は、千葉県の自宅から東京都内の職場まで電車で通勤していたそうです。
主にデスクワークをしていたそうで、中国人らしき人を含む数十人が参加する会議にも参加していたそうです。
男性は東京都内の職場まで電車で通勤し、主にデスクワークをしていたということです。
また、潜伏期間にあたる1月20日以降、2月1日までの間に社内で開かれた3時間から5時間ほどの会議に2回参加していたことが新たにわかりました。
男性によりますと、会議には数十人が出席していましたが、男性は「中国の人らしき人が複数いたが、具合の悪そうな人はいなかった」と話しているということです。
そして今月2日に発熱したあと、4日と7日は出勤していたということです。
(出典:NHK NEWS WEB)
男性には、妻や子どもがいて、県内の医療機関も3つ受診しているので、千葉県内や東京都内の職場で感染者が増える可能性があります。
なお、下記の通り、この男性はNTTデータの協働社員であることが確認されました。
当社拠点における新型コロナウイルス感染者の発生について
和歌山県
2020年2月13日
和歌山県湯浅町の済生会有田病院に勤務する50代の外科医の男性が新型コロナウイルスに感染したことが確認されました。
下記の通り、男性医師には発症前の14日間に中国への渡航歴はなく、中国から来た人との接触もなかったようです。
医師は現在、別の医療機関に入院していますが、発症前の14日間、中国への渡航歴はなく、中国から来た人との明らかな接触も確認できていないということです。
(出典:NHK NEWS WEB)
2020年2月14日
和歌山県内の70代男性が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。
この男性は、13日に感染が確認された50代の外科医の男性が勤務する病院に一時入院していましたが、下記の通り、院内での感染ではないと和歌山県の仁坂知事が説明しました。
この男性は、13日、感染が確認された50代の男性医師が勤務する病院に一時入院していましたが、和歌山県の仁坂知事は「この男性が入院したのは男性医師が自宅療養を始めてからなので、病院内で感染が広がったとは考えにくい」と説明しています。
(出典:NHK NEWS WEB)
男性は症状が重く、十分な聞き取りができる状態ではなく、中国への渡航歴があるかや、中国人との接触があったかは、確認されていません。
2020年2月15日
13日に感染が確認された50代の外科医の男性が勤務する済生会有田病院で、新たに同僚の医師と入院中の患者の感染が確認されました。
また、13日に感染が確認された50代の外科医の男性の妻(50代)の感染も確認されました。
下記の通り、同僚の医師と入院中の患者については、日本初の院内感染の疑いがあります。
済生会有田病院で新たに同僚の医師と外科病棟に入院中の患者の感染が確認されたことについて和歌山県の仁坂知事は記者会見で、院内感染が起きている可能性があるという認識を示しました。
(出典:NHK NEWS WEB)
沖縄県
2020年2月14日
沖縄県に住む60代女性タクシー運転手が新型肺炎に感染していることが確認されました。
この運転手は、集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が寄港した際、乗客をタクシーに乗せていたということです。
(出典:NHK NEWS WEB)
この女性は、クルーズ船の乗客を乗せていますので、クルーズ船の乗客から感染した可能性が考えられます。
北海道
2020年2月14日
北海道で50代男性が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。呼吸状態が改善せず、集中治療室で治療を受けているとのことです。
男性に中国含む海外への渡航歴はないそうです。
愛知県
2020年2月14日
愛知県内に住む60代男性の新型コロナウイルス感染が確認されました。
男性は、1月28日から2月7日までハワイに滞在し、8日以降は自宅で療養してたとのことです。
2020年2月15日
名古屋市で、新たに60代の女性が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。
14日に感染が確認された男性の妻で、男性とともに旅行先のハワイから7日に帰国したそうです。
(出典:産経新聞)
日本では市中感染が広がり、パンデミックが起こっているのか?
WHOは現在のところ、新型肺炎は「パンデミック(感染爆発)」に当たらないとしています。その理由は、感染者の大半が中国湖北省にとどまっていることなどからです。
WHOの専門家は、下記のように語っています。
日本でも誰からうつったのかルートを追えなくなる「市中感染」が広がりつつあります。
今後、日本でも感染者が誰から感染したか追えなくなった「市中感染」が広がった時には非常に危険な状態になる可能性があります。
「感染者が誰から感染したかどうか追えなくなると、感染の封じ込めは難しい」とした上で「そのような事態が各地で起こるとパンデミックに移行する可能性が高くなる」とした。
(出典:産経新聞)
新型コロナウイルスの感染力は強いのか?
今のところ、新型コロナウイルスの感染力は、それほど強くないようです。
(出典:NHK NEWS WEB)
感染力は「1人の患者から感染が何人に広がるのか」ではかります。新型コロナウイルスは現在のところ、せきやくしゃみなどに含まれる飛まつによって広がると考えられていて、感染した人、1人から広がるのはWHOでは1.4人から2.5人、中国の疾病予防センターが出した初期の患者の報告では2.2人としています。
感染力が極めて強いはしかは12人から18人、2003年に中国やアジア各地を中心に広がったSARSは感染が拡大しているときに3人程度、インフルエンザは2人から3人とされています。
今後、変わる可能性はありますが、今のところ、インフルエンザと同じぐらいの感染力です。感染力は予防対策を取ることで下げることもできます。
(2020年2月12日時点)
新型肺炎は空気感染する?エアロゾル感染の可能性は?
新型肺炎の感染が日本国内で、どのような原因で広がっているのかが気になるところです。
新型肺炎は、現在のところ空気感染はしないとされています。厚生労働省のQ&Aにも下記のように記されています。
上海市民政局の説明では、「飛沫が空気中で混ざり合ってエアロゾルを形成し、これを吸引して感染する」というもので、空気感染ではなく、飛沫感染に相当すると考えられます。国内の感染状況を見ても空気感染に特徴的な現象は確認されていません。
(出典:厚生労働省)
新型コロナウイルスが感の感染原因は、下記の通り、『飛沫感染』と『接触感染』です。
飛沫感染
飛沫感染とは、下記の通り、感染者のせきやくしゃみで飛び散るウイルスを含んだ飛沫を吸い込むことで起こる感染です。
咳やくしゃみをすると、口から細かい水滴が飛び散りますよね。この細かい水滴を飛沫と言います。
この飛沫に病気の原因となる細菌やウイルスが含まれていた場合、これを吸い込むことで感染するのが飛沫感染です。
例えば、インフルエンザは、この飛沫で感染します。
(出典:昭和大学)
接触感染とは?
接触感染は、下記の通り、感染者がウイルスが付いた手で触ったドアノブや電車のつり革、エレベータのボタンなどを触ることにより起こる感染です。
皮膚や粘膜の接触、または医療従事者の手や聴診器などの器具、手すりやドアノブなど、患者周囲の物体表面を介しての間接的な接触で病原体が付着し、その結果感染が成立するもの。
(出典:Wikipedia)
「エアロゾル感染」とは?
「エアロゾル感染」は、下記の通り、飛沫感染と似ていますが、飛沫は重いため、すぐに落下します。一方、エアロゾルは長く漂うことになるので、体内に吸い込まれる可能性は上がるでしょう。
「エアロゾル」とは、空気中に微粒子が安定して長く漂っている状態のことで、雲、タバコの煙、寒い時期の白い息のような状態です。空気中にインフルエンザウイルスを含んだ微粒子が安定して漂い、それを吸い込むことで感染するのではないかと考えられています。
飛沫感染とエアロゾル感染は似ていますが、飛沫は水分を含んでいるために、口から飛び出した際に重力に引っ張られて下に落ちますので、空気中に漂うことはありません。
(出典:NHK)
エアロゾル感染や空気感染と違いについては、下記記事をご参照ください。
新型コロナウイルスの感染予防対策は?
新型肺炎のエアロゾル感染の可能性が指摘されていますが、東京都立駒込病院感染症科の今村先生によると、新型コロナウイルスの感染経路の基本は「飛沫感染」と「接触感染」であり、これまでの手洗いなどの予防策を行えばいいとしています。
新型コロナウイルス感染予防としては、下図のような対策があります。
感染予防の基本は、手洗いやアルコール消毒、人混みに行かないこととなっています。
(出典:Open Doctors)
なお、マスクの着用だけで新型コロナウイルスの感染は防げません。
世界保健機関(WHO)の担当者は、新型コロナウイルスについて「必ずしもマスク着用は感染予防にはならない」とし、手洗いの方が効果的だと述べています。
新型肺炎に感染した人を家族が看病する場合など、近くで症状がある人の飛沫(ひまつ)を浴びる可能性がある場合には、マスクも一定の効果があると考えられています。
しかし野外などでは、マスクでは十分には予防できないとの意見が一般的です。
新型コロナウイルスに感染した場合の症状|受診の目安は?
新型肺炎の主な症状は、発熱やせき、息切れです。初期の症状はインフルエンザと近いといわれています。
厚生労働省は、下記の症状が4日以上続く場合は、帰国者・接触者相談センターに相談するよう求めています。
- 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合 (解熱剤を飲み続けなければならない方も同様)
- 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合
なお、高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方で、これらの状態が2日程度続く場合は、帰国者・接触者相談センターに相談するよう求めています。
また、妊婦の方は、念のため、重症化しやすい方と同様に、早めに帰国者・接触者相談センターに相談するよう求めています。
新型コロナウイルスに感染した場合の重症化率は?
新型肺炎は、下記の通り、感染しても重症化せず、軽症の場合も多いようです。
重症化する人は、高齢者や持病のある方で、免疫力が落ちている方が重症する傾向にあります。
(出典:NHK NEWS WEB)
WHOは今のところ、感染した人のうち82%の人は軽症で、15%が重症、3%が重篤で命に関わる症状だと説明しています。
新型コロナウイルスに感染しても全員が肺炎になる訳ではなく、多くの人の症状は軽いとされています。
重症化した人の多くは高齢者や持病のある人だったという報告があるため、一般の感染症と同様に免疫が弱くなっている人などは注意が必要です。
(2020年2月12日時点)
新型コロナウイルスに感染した場合の致死率は?
新型コロナウイルスの致死率は、同じコロナウイルスの感染症であるSARSに比べると高くはありませんが、最終的にどうなるか分かりません。
(出典:NHK NEWS WEB)
致死率は、現段階では感染拡大の中心になってきた武漢ではおよそ4%、中国本土では2%余りです。
中国本土以外で死亡したのは、フィリピンと香港、それに日本のあわせて3人で、致死率は0.5%程度です。
武漢で致死率が高い理由として指摘されている理由の1つは、武漢では幅広い年齢層の人が感染し多くの患者が出たため、医療機関が十分な医療を提供できない状況になったことが影響しているとみられます。
同じコロナウイルスの感染症で、2003年に中国やアジア各地を中心に広がったSARSは、致死率がおよそ9.6%でした。致死率はSARSに比べると高くはないといえます。
しかし、仮に致死率が低くても、分母にあたる感染者の数が多くなれば、当然、重症化する人、亡くなる人の人数は増えますので警戒は必要です。
また、今回の新型コロナウイルスの致死率が、最終的にはどれほどの値になるかはまだ、わからないという指摘もあります。
致死率は、感染が確認された人のうちで亡くなった人の割合ですが、把握されていない感染者が数多くいるのではないかという見方もあるからです。
いずれにしても、感染をできるだけ広げない対策が引き続き必要です。
(2020年2月14日時点)