相互会社(そうごがいしゃ)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?あまり耳慣れない言葉かもしれません。
ご加入の生命保険会社は「株式会社」でしょうか?それとも「相互会社」でしょうか?実は、保険会社には、株式会社と相互会社の両方が存在します。
では、相互会社とは、どのような会社なのでしょうか?また、「株式会社」と「相互会社」では、どちらで生命保険に加入した方が得ということがあるのでしょうか?
今回は、株式会社と相互会社の違いについて解説します。
1.相互会社とは?
相互会社とは、生命保険が相互扶助の仕組みであるということから、保険業法によって保険会社にのみ許されている会社形態です。
株式会社の場合には、株主が会社の持ち主になりますが、相互会社の場合は、株主は存在せず、保険契約者が会社の持ち主ということになります。相互会社は、契約者(無配当保険の契約者を除く)を「社員」(構成員)とする社団法人です。
なお、「相互会社」、「株式会社」どちらの会社形態であっても、契約者の保険契約上の権利義務に違いはありません。
2.相互会社と株式会社の違い
株式会社の構成員である株主にあたるのが、相互会社では社員(有配当保険の契約者)になります。無配当保険のみに加入している契約者は相互会社の社員とはなりません。
契約者である「社員」は、相互会社の構成員として会社の運営に参加することができ、以下のような権利があります。
・総代選出にあたっての投票権
・総代会の議案提案権・招集請求権
・定款や約款の定めに基づく社員配当金請求権 等
また、株式会社の意思決定機関は株主総会ですが、相互会社の意思決定機関は社員総会です。但し、相互会社の場合、株式会社の株主と比べて社員である保険契約者の数が莫大なので、社員の中から総代を選出し、総代会を社員総代会に代わる意思決定機関としています。
例えば、日本生命では総代が200名選出されていて、名簿も公表されています。
『日本生命総代名簿』
株式会社と相互会社の主な違いをまとめると下表の通りになります。
相互会社 | 株式会社 | |
---|---|---|
性質 |
営利も公益も目的としない
中間法人 (保険業法に基づき設立) |
営利を目的とする法人 (会社法に基づき設立) |
資本 |
基金
(基金拠出者が拠出)
|
資本金 (株主が出資) |
構成員 | 社員 (有配当保険の契約者) |
株主 |
意思決定機関 | 社員総会 (総代会) |
株主総会 |
3.相互会社の数
さて、保険会社の中で相互会社は実際に何社くらいあるのでしょうか。生命保険協会に登録している生命保険会社は2019年(平成31年)4月1日時点で42社ありますが、そのうち下記の5社が相互会社です。
・日本生命保険相互会社
・明治安田生命相互会社
・朝日生命保険相互会社
・住友生命保険相互会社
・富国生命保険相互会社
大同生命や第一生命、三井生命(現:大樹生命)も以前は相互会社でしたが、2002年に大同生命、2004年に三井生命(現:大樹生命)、2010年に第一生命が株式会社になりました。
なお、日産生命、東邦生命、第百生命、千代田生命、東京生命、大和生命の6社も相互会社でしたが、経営破綻により現在は存在しません。
4.相互会社のメリットとは?|相互会社と株式会社、どちらがいいの?
相互会社と株式会社ではどちらが有利なのでしょうか?
相互会社の方が保障内容がよく、株式会社の方が保障内容が劣るなどということはなく、相互会社と株式会社でどちらかが有利で、どちらかが不利ということはありません。お互いに長所もあれば、短所もあります。
例えば、相互会社は余剰金の多くを契約者配当として保険契約者(無配当保険の契約者を除く)に還元できる点がメリットの1つです。
株式会社形態の生命保険会社は契約者だけでなく、株主にも利益を株主配当という形で分配する必要があります。
相互会社のデメリットとしては、社員総会の形骸化や資金調達、M&A(企業の合併・買収)のしにくさなどが指摘されています。
また、『配当金が出る保険はお得?』でご紹介した通り、一般的に「無配当保険」は「有配当保険」に比べて保険料を安く設定できますが、相互会社の理念に抵触するため、相互会社では、無配当保険の販売は全商品の20%までという制限があります。
まとめ
相互会社と株式会社で保障内容に優劣はありません。お互いにメリット・デメリットがあります。
相互会社の仕組みや、メリット・デメリットについてご理解し、保険会社を選ぶ際の参考にして頂ければ幸いです。
最終更新日:2019年6月13日
No.264