医療保険のパンフレットを見ていると差額ベッド代という言葉が出てきます。医療保険の加入を決める際の1つの材料となるものです。
差額ベッド代という言葉は医療に関連したテレビや雑誌記事などでは頻繁に出てくるので、漠然と意味を理解している方は多いと思います。
しかし、正確な意味を理解している方は少ないのではないでしょうか?
民間の医療保険に加入する際によく話題に出る差額ベッド代を正しく理解しておかないと営業トークに騙されてしまいます。
そこで今回は、差額ベッド代の下記ポイントについて解説します。
- 差額ベッド代とは?
- 差額ベッド代は健康保険が適用される?
- 差額ベッド代は医療費控除の対象?
- 差額ベッド代はどのような場合に請求される?
- 差額ベッド代の相場や平均額は?
- 差額ベッド代が出る医療保険はある?
今回の記事を読めば、差額ベッド代のことを理解することができ、医療保険選びのお役に立てて頂けると思います。
1.差額ベッド代とは?
差額ベッド代とは、希望して個室等に入院した場合にかかる費用です。1~4人部屋で一定条件を満たす場合に差額ベッド代を請求されます。正式には「特別療養環境室」といいます。
なお、1~4人部屋に入院したからといって必ず差額ベッド代を請求されるわけではありません。差額ベッド代を請求される条件がありますので、次項以降で「どのような場合に差額ベッド代が請求されるのか」や「差額ベッド代には健康保険が適用されるのか」などについて解説していきます。
2.差額ベッド代は健康保険が適用されない!
差額ベッド代は健康保険(公的医療保険)が適用されません。一般的な方は、健康保険が適用される医療を受けた場合、医療費の3割を負担することになっていますが、差額ベッド代は健康保険が適用されないので、全額自己負担となります。
また、健康保険が適用されないということは、高額療養費制度の対象にもなりません。どれだけ差額ベッド代が高額な負担になっても健康保険(公的医療保険)からの給付はありません。
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が暦月(月の初めから終わりまで)で限度額を超えた場合には、その超えた額が支給される制度です。
高額療養費制度についての詳細は下記記事をご参照ください。
『医療保険は不要!?高額療養費について理解しておくべきポイント』
3.差額ベッド代は医療費控除の対象外
医療費控除とは、本人や家族のために支払った医療費等の実質負担額が、年間(1~12月)10万円(所得金額が200万円未満の人は「所得金額×5%」の額)を超えた場合、その超えた金額をその年の所得から差し引くことができる所得控除の1つです。控除できる金額の上限は200万円です。
確定申告時に所得から医療費を控除することよって、課税対象となる所得が減るので、所得税・住民税の負担が軽減され、節税になります。
差額ベッド代は、上記の医療費控除の対象にもなりません。正に差額ベッド代は全額自己負担する必要があります。
4.差額ベッド代は、どのような場合に請求されるのか?
どのような場合に差額ベッド代を請求されるのでしょうか。下記の4つの条件を満たした病室であれば、病院は差額ベッド代を請求でます。
- 病室の病床数は4床以下であること。
- 病室の面積は一人当たり6.4平方メートル以上であること。
- 病床のプライバシーを確保するための設備があること。
- 少なくとも「個人用の私物の収納設備」、「個人用の照明」、「小机等及び椅子」の設備があること。
完全に1人用の病室を選択した場合に差額ベッド代を請求されるイメージがありますが、4床以下の病室であれば、差額ベッド代を病院から請求される可能性があります。
自分では差額ベッド代を請求されるとは思っていなくても、実際の請求書を見てみると差額ベッド代が請求されているという可能性があります。
入院する際は、病院側に差額ベッド代について確認する必要があると言えるでしょう。
5.差額ベッド代を請求されない条件
上記の通り、例え一人部屋でなくても差額ベッド代を請求される事があるのですが、個室などに入院したとしても差額ベッド代を病院が患者に請求できない場合があります。
厚生労働省の通知によると下記のような場合には差額ベッド代は請求できません。
- 同意書による同意の確認を行っていない場合
- 患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合
- 病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合
また、差額ベッド代について、下記のように院内掲示をするようにもなっています。
『保険医療機関内の見やすい場所、例えば、受付窓口、待合室等に特別療養環境室の各々について、そのベッド数、特別療養環境室の場所及び料金を患者にとって分かりやすく掲示しておくこと。』
患者が希望せずに個室などに入院した場合で差額ベッド代を請求されていれば、病院側に説明を求めた方がいいでしょう。場合によっては、差額ベッド代を払わなくていいこともあるかもしれません。
また、不当に差額ベッド代を請求されてケースでは、患者側が病院側に返還を求め、病院側から差額ベッド代が返ってきた全国の事例が数多くあります。
6.差額ベッド代の相場や平均額
差額ベッド代の相場や平均額はどのくらいなのでしょうか?下表は差額ベッド代の金額と割合を表にしたものです。
金額 |
割合 |
---|---|
1,000円以下 |
11.9% |
1,001円~2,000円 |
15.9% |
2,001円~3,000円 |
15.2% |
3,001円~4,000円 |
10.0% |
4,001円~5,000円 |
12.8% |
5,001円~10,000円 |
22.3% |
10,000円超 |
11.9% |
(出典:厚生労働省の「平成20年 患者調査」)
上記の表を見ると、差額ベッド代の約9割が1万円以内のようです。ただし、個室だと2割近くが「1日1万800円」を超えるそうです。
実際には高いところでは1日21万円という個室があったりするようです。平均額では約6,000円程度といったところです。
7.差額ベッド代が出る医療保険はある?
ソニー損保のZiPPi<ジッピ>は、入院費用の実費を保障する医療保険ですが、特約(オプション)で「入院時差額ベッド代」をセットできます。
限度額は1日につき6,000円または12,000円で、差額ベッド代の実費が受け取れます。
また、上記の通り、差額ベッド代は平均で6,000円程度ですので、一般的な医療保険でも入院給付日額を1万円くらいにしておくと、差額ベッド代に備えることができるでしょう。
まとめ
民間の医療保険は必要か不要かという議論がありますが、全額自己負担でかつ高額療養費制度の対象にもならない差額ベッド代を考えると以下のような方は医療保険は必要といえるでしょう。
大部屋だと周りの人が気になるからどうしても個室に入院したいとう場合や経営者の方等で入院中も他人に邪魔されず仕事がしたいという場合は差額ベッド代を払って個室に入院する必要が発生します。
そのような方は医療保険で差額ベッド代に備えておいてもいいでしょう。
ただし、患者本人が希望せず、「治療上の必要」から個室に入院するような場合には、差額ベッド代は請求できないことになっています。よって、入院することになっても差額ベッド代が請求されるような部屋を希望するつもりがない方に関しては、差額ベッド代を気にして医療保険に加入する必要はありません。
尚、医療保険は必要なのか、不要なのかについては、下記記事をご参照ください。
『医療保険は必要?不要?』
最終更新日:2018年12月29日
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