自動車保険は、運転者限定特約で補償の対象となる運転者を限定すると割引があり、保険料が安くなることをご存知でしょうか?
自動車保険を契約している車を実際に運転する人を考えてみてください。特定の方しか運転していないとうことはありませんか?
今回は、運転者限定特約の補償範囲や割引率、実際に運転者を限定した場合の保険料節約例について解説します。自動車保険の補償対象となっている車を特定の人しか運転しないという場合に参考にして頂ければと思います。
1.運転者限定特約とは?
自動車保険に加入している車を運転するのは自分と家族だけというように運転される方が限られている場合、補償対象となる運転者を限定することにより、保険料が安くなります。
運転車限定特約で補償される運転者を本人(記名被保険者)や配偶者、家族に限定すると、自動車保険の保険料が割引になります。
保険会社によって特約名が異なる場合があり、「運転者の範囲に関する特約」、「運転者限定特約」、「運転者限定割引」などと呼ばれ、補償される運転者を限定する特約です。
記名被保険者とは、契約の車(契約車両)を主に使用する方のことです。自動車保険を契約する際に指定する必要があります。保険証券などに記載されることから「記名被保険者」といいます。
『自動車保険の記名被保険者とは?変更すると等級を引き継げない?』
『自動車保険の「契約者」「記名被保険者」「車両所有者」の違いとは?』
2.運転者限定の種類|補償される運転者の範囲
運転者の限定方法には下記の通り、3段階あります。
①本人(記名被保険者)限定
②本人(記名被保険者)・配偶者限定
③家族限定
①の割引率が一番高く、次いで②、③の順番になり、補償される運転者の範囲はそれぞれ以下の方に限定されます。
①本人限定
「本人限定」で補償される範囲は、下記の方です。
・記名被保険者(主に車を運転する方)
②本人・配偶者限定
「本人・配偶者限定」で補償される範囲は、下記の方です。
・記名被保険者(主に車を運転する方)
・記名被保険者の配偶者
③家族限定
「家族限定」で補償される範囲は、下記の方です。
・記名被保険者(主に車を運転する方)
・記名被保険者の配偶者
・記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
・記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
④運転者限定なし
補償される運転者は限定されません。友人や知人など車を運転する全ての方が自動車保険の補償対象となります。
本人限定 | 本人・ 配偶者限定 |
家族限定 | 限定なし | |
---|---|---|---|---|
①本人(記名被保険者) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
②①の配偶者 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
③①または②の同居の親族 | × | × | 〇 | 〇 |
④①または②の別居の 未婚の子 |
× | × | 〇 | 〇 |
⑤友人・知人などの他人 | × | × | × | 〇 |
〇:補償対象 ×:補償対象外
上記の通り、「家族限定」の場合でも別居の未婚の子まで補償されるので、別居(一人暮らし)している大学生の子供が夏休みなどに帰省して車を運転するというような場合でも運転者を「家族限定」にすることが可能です。
『家族限定と別居の未婚・既婚の子』
尚、「別居の未婚の子」とは、婚姻歴の無い子のことです。結婚していて離婚した場合には、未婚とはいいませんので、ご注意ください。
『別居の未婚の子を正確に理解していますか?』
また、配偶者については同居という条件はありません。つまり、記名被保険者と配偶者は別居していても「本人・配偶者限定」や「家族限定」で補償されます。例えば、夫が記名被保険者の自動車保険が「本人・配偶者限定」や「家族限定」であっても、別居の妻(配偶者)も補償対象となります。
『配偶者は同居が条件ではない?』
3.おとなの自動車保険の運転者限定方法
セゾン自動車火災の運転者限定方法は他社と違い特殊ですので、ここで紹介します。
他社は「本人限定」「本人・配偶者限定」「家族限定」の3パターンの限定方法が一般的ですが、セゾン自動車火災保険は、下記の4パターンの設定があります。
1)運転者限定特約(本人補償型)
運転者限定特約(本人補償型)は、他社での「本人限定」に該当します。補償される運転者を記名被保険者本人に限定します。
2)運転者限定特約(本人・配偶者・別居の未婚の子補償型)
運転者限定特約(本人・配偶者・別居の未婚の子補償型)は、他社での「家族限定」に近い限定方法です。
他社の「家族限定」に近いのですが、別居の未婚の子以外の同居の親族が補償対象外となってしまう点に注意が必要です。
3)運転者限定特約(同居の子以外補償型)
運転者限定特約(同居の子以外補償型)は、同居の子供以外は補償対象となる限定方法です。友人や知人などの他人も補償対象となります。
4)運転者限定なし特約(同居の子年齢条件設定型)
運転者限定なし特約(同居の子年齢条件設定型)は、同居の子供を含む全ての方が補償対象とななります。
ただし、同居の子供については、最も若い方の年齢を申告する必要があり、その年齢よりも若い同居の子供については、補償対象外となってしまいますので、注意が必要です。
例えば、25歳と20歳の同居の子供がいて、25歳の子供が運転するので、25歳の子供の年齢を申告していたとします。その後、20歳の子供が免許をとり、運転するようになった場合、同居の子供の年齢を20歳に変更しないと、20歳の子供は補償対象外となってしまいます。
運転者限定なし特約となっていますが、同居の子供については、限定される場合がありますので、ご注意ください。
また、同居の子供が別居するようになった場合には、「運転者限定なし特約(同居の子年齢条件設定型)」から「運転者限定特約(同居の子以外補償型)」に変更を忘れないようにお気を付けください。
変更を忘れると、高い保険料を支払い続けることになってしまいます。
4.「家族限定」は廃止になる?
自動車保険の改定に伴い、2019年1月から運転者限定特約の「家族限定」を廃止する保険会社が増えています。例えば、大手損保4社は全て運転者限定特約の「家族限定」を廃止しています。
下記の通り、損保ジャパン日本興亜と三井住友海上は、「家族限定」を廃止し、「本人限定」を新設しています。
一方、東京海上日動は、「家族限定」を廃止、「本人・夫婦限定」のみとし、「本人限定」の新設は見送りました。
1970年から50年続いた「家族限定」ですが、核家族化などの世帯構成の変化やライフスタイルの変化で「家族限定」を選ぶ契約者が減ったということで、廃止される方向です。
主な損害保険会社の運転者限定特約の種類は、下記の通りです。
●損保ジャパン日本興亜
本人限定
本人・配偶者限定
●三井住友海上
本人限定
本人・配偶者限定
●東京海上日動
本人・夫婦限定
●あいおいニッセイ同和
本人限定
本人・配偶者限定
●ソニー損保
本人・配偶者限定
●三井ダイレクト損保
本人限定
本人・配偶者限定
家族限定
●イーデザイン損保
運転者本人限定
運転者夫婦限定
運転者家族限定
●アクサダイレクト
本人・配偶者型
●チューリッヒ
運転者本人・配偶者限定特約
運転者家族限定特約
上記の保険会社の中で、「家族限定」が残っているのは、三井ダイレクト損保とイーデザイン損保となっています。
2017年の損害保険料算出機構による参考純率の改定で「家族限定」が廃止されていますので、今後は全ての保険会社で「家族限定」が廃止される可能性があります。
なお、「家族限定」が廃止されるのは、自動車保険改定後に新規加入または更新(継続)した契約からで、現在の契約は満期まで「家族限定」が選択できます。
【参考純率とは?】
保険料率は純保険料率と付加保険料率で構成され、損害保険料算出機構では純保険料率部分を算出しています。損害保険料算出機構が算出する純保険料率を「参考純率」といいます。
損害保険料算出機構の会員となっている保険会社では、参考純率をそのまま使用することができ、また、自社の商品設計等に応じて修正して使用することもできます(参考純率は使用義務のない参考数値であり、これを用いずに保険会社独自に純保険料率を算出することができます)。純保険料率に保険会社で算出した付加保険料率を加えたものが、契約者が負担する保険料率となります。
損害保険料算出機構で行う改定内容を採用するか否かは各保険会社が判断します。
(出典:損害保険料率算出機構)
5.運転者限定特約の割引率
運転者限定特約で自動車保険料はどの程度割引されるのでしょうか?
運転者限定特約による自動車保険料の割引率は、保険会社によって異なり、損保ジャパン日本興亜の場合、「本人限定」で約7%割引、「本人・配偶者限定」で約6%割引となります。
三井住友海上の場合、「本人限定」で約8%割引、「本人・配偶者限定」で約6%割引となります。
大手損保会社の運転者限定特約の割引率をまとめると下表の通りです。
本人限定 | 本人・配偶者限定 | 家族限定 | |
---|---|---|---|
東京海上日動 | - | 7%割引 | 廃止 |
三井住友海上 | 8%割引 | 6%割引 | 廃止 |
損保ジャパン日本興亜 | 7%割引 | 6%割引 | 廃止 |
あいおいニッセイ同和損保 | 8%割引 | 6%割引 | 廃止 |
6.運転者限定特約の自動車保険料シミュレーション
さて、運転者を限定することで保険料はどの程度安くなるかを実際に試算してみました。
◆試算条件
免許色:ブルー
自動車:自家用軽四輪
等級:14等級
事故有等級適用期間:0年
使用目的:主に家庭用
走行距離:5,000km以下
対人賠償:無制限
対物賠償:無制限
人身傷害保険:3,000万円
車両保険金額:100万円 免責0-10万円
年齢条件:30歳以補償
記名被保険者年齢:35歳
運転者限定:なし
年間保険料:46,150円
運転者限定:家族限定
年間保険料:44,790円
運転者限定:本人・配偶者限定
年間保険料:42,590円
運転者限定:本人限定
年間保険料:41,690円
運転者を限定しない場合と比べて「家族限定」で年間1,360円、「本人限定」では年間4,460円も安くなります。自分以外は車を運転することがないという方は運転者を「本人限定」にするだけで大きな節約になります。
7.運転者限定方法は保険期間の途中でも変更が可能
運転者限定は保険期間の途中でも変更が可能です。
例えば、契約当初は記名被保険者(車を主に使用する方)しか運転しないため、「本人限定」で契約していた場合で、保険期間の途中で配偶者が運転することになったケースでは、「本人・配偶者限定」に変更することができます。
運転者限定方法の変更により、自動車保険料が変更になる場合があります。
「本人・配偶者限定」から「本人限定」のように補償される範囲を狭める場合には、保険料が安くなり返還保険料が発生し、逆に「本人限定」から「本人・配偶者限定」のように補償される範囲を広げる場合には、追加保険料が発生するのが一般的です。
8.運転者限定時の注意ポイント
運転者限定特約は、補償される運転者の範囲を限定することにより、自動車保険料を節約することができますが、運転者限定の方法を誤ると、事故の際に補償されないという最悪の事態が発生する可能性があります。
自動車保険を契約する保険会社を乗り換える際には、特に注意が必要です。保険会社によって運転者限定の種類が異なることがあり、運転者限定の方法を間違ってしまう可能性がります。
特に、他社からセゾン自動車火災保険の自動車保険に乗り換える方については、補償対象者の範囲はよく確認する必要があります。他の保険会社からセゾン自動車火災に乗り換える際は、年齢条件や運転者限定の設定が上記の通り、他社とは異なりますので、ご注意ください。
また、家族で別居する予定の方が居る場合や、逆に別居していた方が同居することになった場合などは、自動車保険の年齢条件や運転者限定がどうなっているかを確認する必要があります。
年齢条件も運転者限定についても、保険期間の途中での変更が可能ですので、家族構成などに変更がある場合には、自動車保険の契約内容について変更忘れがないようにご注意ください。
『自動車保険の年齢条件とは?割引率や変更タイミングの注意点まとめ』
まとめ
運転者を限定した場合に1つ注意して頂きたいのは、限定した以上は、家族や本人、配偶者が運転している場合の事故しか補償されません。
運転者を限定していることを忘れ、知人等に運転させている際に事故に遭っても補償はされませんのでご注意下さい。
また、運転者限定特約は、自分の車を誰にも運転させたくないという方には、自動車保険を『本人限定』や『本人・配偶者限定』にして、「運転させて欲しい」と言ってきた人に「保険が本人限定だから無理」と断る口実にも使えます。
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最終更新日:2019年4月30日
No.30