生命保険に加入する際には被保険者(保障の対象者)が先に亡くなることを想定していますが、不幸にも保険金受取人が被保険者よりも先に亡くなってしまうこともあるでしょう。
例えば、夫が被保険者(保障の対象者)、妻が保険金受取人である生命保険契約で、妻が先に亡くなってしまうような場合です。
そのような場合に受取人を変更せずにそままにしておくと、不都合な場合があります。今回は、被保険者より先に保険金受取人が亡くなってしまった場合に確認すべきポイントをご紹介します。受取人を変更しないと、どのような問題やデメリットが発生するかを知って頂ければと思います。
1.誰が保険金を受け取る?
生命保険の死亡保険金受取人が被保険者(保障の対象者)より先に亡くなり、受取人を変更しないまま被保険者が亡くなった場合、誰が死亡保険金を受け取ることになるでしょうか?
被保険者の法定相続人と思われる方が多いと思いますが、実は、死亡保険金受取人の死亡時の法定相続人が受取人になります。
例えば、下記契約例の場合は受取人死亡後、受取人を変更しなければ、妻の法定相続人である子供が保険金を受け取ることになります。
下記例の場合は、被保険者である夫の法定相続人も先に亡くなってしまった妻の法定相続人も子供になるので、結果的には子供が保険金を受け取るという点では同じです。
【例】子供ありの場合
契約者:夫
被保険者:夫
受取人:妻
しかし、下記契約例の場合はどうでしょうか?
【例】子供なしの場合
契約者:夫
被保険者:夫
受取人:妻
子供いない場合は、妻の法定相続人は妻の親が生存していれば、親になります。妻の両親が亡くなっている場合には、妻の兄弟姉妹が法定相続人になります。つまり、夫からみれば義理の親や義理の兄弟姉妹が保険金を受け取ることになります。
受取人である妻が先に亡くなった場合、自分の両親や兄弟姉妹等に保険金を渡したいと思っているのであれば、受取人を自分の両親や兄弟姉妹等に変更しておく必要があります。
2.非課税限度額が使えない可能性あり
生命保険の死亡保険金には、遺族保障という観点から被相続人(死亡した方)が契約者(保険料負担者)かつ被保険者(保障の対象者)である場合、下記の非課税限度額(相続税法第12条)があります。よって、死亡保険金については、非課税限度額までは相続税がかかりません。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
しかし、『生命保険の保障内容を見直す前に確認するべきポイント』でもご紹介しましたが、非課税限度額が適用されるのは、法定相続人が受取人である場合の死亡保険金です。仮に上記事例のように子供がいない夫婦で夫の死亡保険金を受取人を変更せずに義理の両親が受け取った場合、義理の両親は被相続人である夫の法定相続人ではないので、非課税限度額の適用がありません。
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3.保険金受取時の手続きが面倒
以前の記事でご説明した通り、死亡保険金は民法上の相続財産ではないので、遺産分割協議など煩雑な手続きなしで、受取人が請求すれば保険金を受け取れます。
『生命保険の保障内容を見直す前に確認するべきポイント』
しかし、仮に受取人死亡後に受取人を変更していなければ、亡くなった受取人の法定相続人全員からの委任状等が必要になり、保険金請求時の手続きが以下の通り煩雑になります。
~損保ジャパン日本興亜ひまわり生命HPより抜粋~
もし、保険金受取人を変更しない間に被保険者がお亡くなりになった場合には、当社に登録いただいている保険金受取人の法定相続人の全員が保険金の請求権をもつことになり、お手続きに法定相続人全員の「委任状」および「印鑑証明書」が必要となる場合があります。
特に保険金受取人の法定相続人が亡くなっていて、その子が代襲相続する場合等で相続人の数が多いと、「委任状」および「印鑑証明書」の取り付けは非常に手間のかかる作業になってしまします。
4.受取人の変更手続きは簡単
受取人の変更手続きは簡単です。被保険者の同意があれば、保険会社に変更の手続き書類と必要書類等を提出することで完了します。被保険者の同意は必要ですが、保険金受取人の同意は不要です。
また、遺言での受取人変更も可能です。
『死亡保険金受取人は誰でも指定できる?』
受取人は複数人指定することも可能です。例えば、契約者・被保険者が夫、受取人が妻の契約で、妻が先に亡くなった場合、子供が2人いれば、子供2人を受取人として指定することが可能です。兄50%、弟50%のように、1契約で複数人の受取人指定が可能です。
なお、受取人を変更すると、死亡保険金に課税される税金が変わる可能性があります。死亡保険金に課税される税金は下表の通り、契約形態(契約者・被保険者・受取人の関係)によって異なりますので、ご注意ください。
税金の種類 | 契約者 | 被保険者 | 受取人 |
---|---|---|---|
相続税(注1 | A(例:夫) | A(例:夫) | B(例:妻) |
贈与税(注2 | B(例:妻) | A(例:夫) | C(例:子) |
所得税(注3 | B(例:妻) | A(例:夫) | B(例:妻) |
(注1 相続税法 第3条1項1号、相続税基本通達5-5-(1)
(注2 所得税法 第34条
(注3 相続税法 第5条1項 相続税施行令 第1条の5、相続税基本通達5-5-(2)
一般的には、相続税が課税される契約形態が、非課税枠があるので税金面では有利とされています。一方、贈与税が課税される契約形態が税金面では不利とされています。
5.指定代理請求人の変更も
指定代理請求制度とは、被保険者が受取人になる保険金や給付金等を請求できない「特別な事情」がある場合、契約者があらかじめ指定した代理人(指定代理請求人)が被保険者に代わって保険金や給付金等を請求できる制度です。
受取人が亡くなった場合には、保険金受取人の変更にあわせて、指定代理請求人についてもご確認下さい。
「受取人=指定代理請求人」という場合が多いので、指定代理請求人についても変更をしておくといいでしょう。
『指定代理請求制度とは?』
指定代理請求人の変更も簡単に行えます。保険会社所定の請求用紙と本人確認書類等があれば変更可能です。尚、指定代理請求人の変更には被保険者の同意が必要です。
まとめ
被保険者よりも先に死亡保険金受取人の方が亡くなることは非常に悲しいことですが、受取人を変更せずにそのままにしてしまうと、数々のデメリットが発生する可能性があります。よって、死亡保険金受取人の変更等、各種手続きの確認をして頂ければと思います。
最終更新日:2018年2月22日
No.184