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自転車保険(個人賠償責任補償)の重複(二重)加入に注意!保険料がムダになる?

自転車事故の高額な賠償事例が紹介されることが多く、また、兵庫県や大阪府などで自転車保険加入を義務化する条例が施行されて自転車保険が注目されています。自転車保険については、当サイトで何度かご紹介してきました。
自転車保険に加入する前に確認すべき6つのポイント
個人賠償責任保険とは?
自転車保険はTSマークの補償で充分か?
個人賠償責任補償特約の比較まとめ

特に子供が自転車に乗る場合は心配になる方が多いのではないでしょうか?

子供が自転車に乗るのであれば、子供を被保険者(補償対象者)とする自転車保険に加入させないと心配と考える方が多いと思いますが、本当にその契約が必要かどうかをご確認ください。

心配なあまり自転車保険を重複してご契約されている事例があります。自転車保険を重複して契約すると、支払っている保険料が完全にムダになってしまう場合があります。

今回は自転車保険を重複(二重)契約をしてしまう勘違いポイントと、なぜ、自転車保険を重複(二重)契約すると保険料がムダになるのかについて解説します。

この記事を読んで、ご自分の自転車保険契約が重複してムダになっていないかをご確認頂ければと思います。

1.重複加入の原因①:自転車保険の補償対象範囲の勘違い

自転車保険は個人賠償責任保険傷害保険が組み合わされた商品ですが、自転車で相手にケガをさせてしまったり、モノを壊してしまったりした場合の損害賠償を補償するのは、個人賠償責任保険です。

個人賠償責任保険の補償対象者は、被保険者(補償対象者)本人のみと勘違いされている方がいますが、実際は意外に広く、一般的には下記範囲の方が補償の対象者になります。

個人賠償責任保険の補償対象者の範囲

・ 本人
・ 本人の配偶者
・ 本人または配偶者と生計を共にする同居の親族
・ 本人または配偶者と生計を共にする別居の未婚の子

補償対象となる方の範囲は上記の通りなので、親が自動車保険等で個人賠償責任特約等に加入していれば、子どもも補償対象となり、子どもを単独で自転車保険に加入させる必要はないということになります。

つまり、個人賠償責任保険は1つの家族に対して1つの契約があれば、家族全員が補償される保険ということです。

なお、自動車保険等の個人賠償責任補償特約は、多くの商品で「生計を共にする」ことを条件としていません

 

 

 

2.重複加入の原因②:自転車事故を補償する特約に加入していることを忘れている

自動車、火災、傷害保険等の特約で個人賠償責任補償を付帯(セット)していることを忘れている方がいます。特に自動車保険に特約で付帯している場合が多いと思いますので、自動車保険などの証券を確認されることをおすすめします。

自動車保険や火災保険に個人賠償責任補償特約をセットしていれば、家族(上記補償対象者の方)の自転車事故による相手のケガやモノを壊した場合の損害賠償額が補償されます。

なお、個人賠償責任補償の特約名は下記の通り各保険会社によって異なる場合がありますので、自動車保険の証券を確認する際にはご注意ください。

 

セゾン自動車火災保険
「おとなの自動車保険」
個人賠償責任特約

チューリッヒ
「スーパー自動車保険」
個人賠償責任補償特約

ソニー損保
「自動車保険」
個人賠償特約

アクサダイレクト
「自動車保険」
アクサ安心プラス(日常生活賠償責任保険特約)

損保ジャパン日本興亜
「THEクルマの保険」
個人賠償責任特約

三井住友海上
「GKクルマの保険」
日常生活賠償特約

東京海上日動
「トータルアシスト自動車保険」
個人賠償責任補償特約

証券を見ても特約名だけでは個人賠償責任補償特約が付帯されているか判断できない場合には、遠慮せず代理店、保険会社に問い合わせてみてください。

 

 

 

3.自転車保険に重複(二重)加入するとどうなる?

では、自転車保険(個人賠償責任補償)を2重に加入していた場合、どうなるのでしょうか?

1)受け取る保険金は2倍にならない

賠償責任保険は2重に加入しても補償が2倍になるわけではありません

例えば、1,000万円の損害賠償が発生した場合、契約をしている個人賠償責任保険が2つあったとしても、支払われる保険金は実際の損害額の1,000万円が限度で、保険会社からの保険金が2,000万円になるわけではありません。

なぜ2倍の保険金を受け取れないのでしょうか?その理由は下記の通りです。

損害保険には『利得禁止の原則』が基本原則の1つとなっています。損害保険は生じた損害をてん補することを目的としており、保険金の受け取りによって利益を得ることを目的とはしていません

保険金の受け取りで利益が出ることが許されれば、意図的に事故を起こすことを誘発することになります。

損害保険は原則として、どんなに大きな保険金額(補償)を設定しても実際の損害額しか支払われません。例えば、1億円の保険金額(補償額)を設定していても、実際の損害額が10万円であれば、受け取れる保険金は10万円となります。

これを「実損てん補」といい、契約時に決めた一定額の保険金を支払う定額払いの生命保険とは異なる点です。

 

2)保険金額は加算される

上記の通り、受け取る保険金は2倍になりませんが、保険金額(補償額)は加算されます。

例えば、保険金額5,000万円の個人賠償責任保険を2契約加入していたとしたら、補償額は合計で1億円ということになります。支払われる保険金は2倍にはなりませんが、1億円の事故までが補償されることになります。

自動車保険等の個人賠償責任特約は保険金額が無制限の場合が多いので、そのよう場合の重複(二重)加入は完全に保険料の無駄になりますので、ご注意ください。
個人賠償責任補償特約の比較まとめ

補償の重複は、自転車保険(個人賠償責任補償特約)以外でも発生する可能性があります。補償の重複に関しては、下記記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
補償が重複しやすい4つのパターン

 

 

 

まとめ

個人賠償責任保険や特約は保険料が安いことと、自転車事故が大きく報道されている関係ですすめられるままに加入してしまう例が多いようです。

特に自転車を購入する際には、自転車屋さんに自転車保険をすすめられることが多いと思います。しかし、本当にその契約が必要なのかを加入するまえに確認する必要があります。

また、既に自転車保険に加入しているという方に関しても、自動車、火災保険等の証券を確認し、個人賠償責任保険の重複加入がないかをご確認ください。

保険料の節約にはムダを省くという観点も非常に重要です。保険料比較をする前に契約内容にムダがないかもご確認ください。

最終更新日:2018年8月25日
No.157

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