掛け捨ての保険が嫌いで、健康祝い金が受け取れる医療保険に加入したいというご相談がありました。
保険料が掛け捨てではなく、少しでもお金が返ってくる医療保険はお得に感じる方も多いと思いますが、本当にお得なのでしょうか?健康祝い金が受け取れる仕組みや本当にお得なのかを検証してみたいと思います。
健康祝い金を受け取れる医療保険を検討されている方は参考にして頂ければと思います。
1.健康祝い金とは?
健康祝い金とは、医療保険に加入していて数年経過すると受け取れるものです。金額としては、数万円から10万円程度です。
商品によっては、「ボーナス」、「生存給付金」等と呼ばれています。受取の条件は、医療保険を数年から10年程度契約していることや給付金の支払いが無かったことなどの条件がある場合があります。
2.「健康祝い金」は保険会社からのプレゼント?
「健康祝い金」という言葉を聞くと、まるで保険会社から健康で契約を継続されている方にプレゼントされる祝金のようなイメージがあります。実は、勘違いされている方も多いと思いますが、「健康祝金」や「ボーナス」などは保険会社が無料でサービス(プレゼント)してくれるものではありません。
「健康祝い金」として受け取る金額は、保障の部分とは別に契約者が支払っている保険料の中に含まれています。つまり、「健康祝い金」や「ボーナス」として受け取る現金は契約者が自ら支払っているものが返ってきているだけということになります。
3.「健康祝い金」の保険料は?
健康祝い金はお得かを実際に分かりやすい事例でご紹介します。
「アクサダイレクトの終身医療」には、健康祝金特則があり、入院給付金や手術給付金の支払事由または保険料の払込みの免除事由に該当しなかった場合、3年毎に5万円のボーナスを受取れます。
【契約例】
被保険者:40歳(男性)
保険料払込期間:終身
入院給付金:5,000円/日
手術給付金:有
先進医療特約
3大疾病保険料払込免除特約
健康祝金特則
月額保険料:3,652円
上記保険料のうち、健康祝金特則保険料は、1,095円(月額)です。
3年ごとに5万円を受け取るために健康祝金特則の保険料をいくら支払っているかを計算すると、下記の通りになります。
1,095円 × 12ヶ月 = 13,140円(年間の特則保険料)
13,140円 × 3年間 = 39,420円(3年間の特則保険料)
つまり、39,420円支払って5万円を受け取ることになります。3年間で10,580円増えることになります。
3年間で39,420円支払って、10,580円増えるのであれば、現在の銀行預金の普通預金金利(0.001%)比べると非常に有利なように感じますが、本当にそうでしょうか?
次項で「健康祝い金」を受け取れないリスクについて解説します。
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4.健康祝い金を受け取れないリスクとは?
約4万円支払って5万円を受け取れるのであれば、銀行に預けるよりも有利ではないかと思われる方もいると思いますが、「健康祝い金」には預貯金にはないリスクがあります。
それが、途中解約と途中死亡のリスクです。
途中解約と途中死亡のリスク
アクサダイレクトの健康祝金特則は、支払事由(病気・ケガによる入院・手術)または保険料の払込みの免除事由に該当しなかった場合、3年毎に5万円のボーナスを受取れます。
つまり、契約を3年間継続していなければ、健康祝い金は受け取れません。3年間の途中で解約したり、被保険者が死亡した場合には、健康祝い金は受け取れません。
健康祝金特則については、解約返戻金はありませんので、途中で解約することになると、支払った保険料は完全にムダになってしまいます。
現金で貯蓄していれば、いつでも自由に引出し可能です。元本割れすることもありません。
医療保険に加入する必要性はあるか?
また、そもそも「健康祝い金」は、給付金の支払事由に該当したら受け取れないので、必ず受け取れるものではありません。つまり、ギャンブル的要素があります。
受け取れるかどうか不確かな5万円を受け取るために約4万円を払いますか、と冷静に聞かれたら、払わないという方も多いのではないでしょうか?ギャンブル好きの方にはたまらないかもしれませんが・・・。
また、健康に自信があるので、「健康祝い金」を受け取れる可能性が高いと思わる方もいるかもしれません。
であれば、そもそも医療保険に加入する意味があるのでしょうか?健康祝金特則部分では得をしますが、医療保険部分の保険料は掛け捨てなので、全体で考えれば完全に損をしていることになります。
健康祝金特則部分のプラスだけでは、その他の掛け捨て部分の保険料を賄うことはできません。それだったら初めから全ての保険料を支払ったつもりで貯蓄したおいた方がいいのではないでしょうか。
医療保険に加入せず、医療保険の保険料分を貯蓄すれば、上記契約事例では3年間で131,472円貯まります。
5.「健康祝い金」や「生存給付金」を受け取ると税金がかかる?確定申告が必要?
個人が受け取る身体の傷害に基因して支払われる給付金等は、所得税法上、金額にかかわらず非課税です(所得税法施行令第30条第1号)。
よって、ケガや病気が原因で受け取る医療保険の給付金は、原則、非課税で受け取ることが可能なので、税金はかかりません。
『税金が非課税(課税されない)の保険金・給付金』
しかし、「健康祝い金」や「生存給付金」に関しては、一時所得に該当し、一時所得の半分(1/2)が課税対象となり、他の所得と合算され、総合課税されます。
一時所得:健康祝い金 - 支払保険料 - 特別控除(50万円限度)
一時所得には、特別控除(限度額50万円)がありますので、他に一時所得がなく、「健康祝い金」や「生存給付金」が50万円を超えていなければ、課税対象とはならず、確定申告も不要です。
なお、保険料負担者と「健康祝い金」や「生存給付金」の受取人が異なる場合、「健康祝い金」や「生存給付金」は贈与税の課税対象となりますので、ご注意ください。(例 保険料負担者:夫、「健康祝い金」の受取人:妻)
贈与税については、110万円の基礎控除があります。よって、他に贈与を受けておらず、「健康祝い金」や「生存給付金」が110万円を超えていなければ、課税対象とはならず、確定申告も不要です。
6.健康であれば保険料が返金される医療保険
健康であれば、払った保険料が戻ってくる医療保険もあります。例えば、東京海上日動あんしん生命の「メディカルKitR」は、所定の年齢まで支払った累計保険料相当額から、受け取った累計の給付金相当額を差し引いた額を健康還付給付金として返金する仕組みの医療保険です。
医療保険に加入しながら、貯蓄をしているような素晴らしい商品のようですが、一般的な医療保険に比べて保険料が高い点に注意が必要です。
また、戻ってくる健康還付給付金には利息が付かないことや途中解約時には支払った保険料累計を解約返戻金が大きく割り込むリスクがあり、貯蓄とは異なります。
東京海上日動あんしん生命の「メディカルKitR」は上記の通り、貯蓄とは異なり、保険商品特有のリスクがありますので、ご注意ください。商品の詳細は下記記事をご参照ください。
『健康なら保険料が返金される医療保険』
『持病があっても保険料が返金される医療保険』
まとめ
そもそも医療保険自体が必要かという議論もありますが、医療保険に加入するのであれば、保険料の安い掛け捨ての商品を選択する方がベターだと思います。
『医療保険は必要?不要?』
掛け捨てがイヤという方の気持ちも分かりますが、医療保険については、保障と貯蓄を分けて考える方がいいのではないでしょうか。
最終更新日:2019年6月9日
No.234