大阪府等が条例で加入を義務化するなどして、自転車保険が注目されています。
『自転車保険の加入義務化とは?|入らないと罰則がある?』
自転車事故による高額賠償請求事例も話題になっているので、自転車保険の加入を検討されている方も多いと思いますが、自動車保険に加入しているのであれば、特約の付加(セット)等で自転車保険の代替が可能で、自転車保険への加入は不要です。
自動車保険にどのような特約をセットすれば、自転車保険に加入した場合と同じ補償が準備できるのでしょうか?また、補償内容や保険料は、自転車保険に比べて見劣りしないのでしょうか?
今回は自動車保険で自転車事故に備える方法についてご紹介します。自転車保険の加入を検討されている方は参考にして頂ければと思います。
1.自動車保険に個人賠償責任特約をセットすれば、自転車事故は補償される
自動車保険には個人賠償責任特約(保険会社によって特約名が異なる場合あり)があります。
個人賠償責任補償特約を付加(セット)すれば、自転車事故で他人にケガをさせたり、他人のモノを壊してしまい、法律上の損害賠償責任を負った場合に補償されます。
自動車保険で個人賠償責任補償特約をセットするメリットが2つあります。
1)補償額(保険金額)を無制限に設定できる
すべての保険会社ではありませんが、個人賠償責任特約の補償額(保険金額)を無制限に設定することも可能です。
例えば、東京海上日動、三井住友海上、損保ジャパン日本興亜の大手3社は補償額(保険金額)を無制限に設定できます。
自転車保険の個人賠償責任補償についてはau損保が最大3億円の補償額(保険金額)となっていますが、商品によっては、補償額(保険金額)が1,000万円という場合もあり、9,000万円を超える高額賠償事例がある自転車事故に対して補償額が足りなくなる可能性があります。
2)示談交渉サービス付き
最近では自転車保険にも示談交渉サービスが付いている商品が増えましたが、商品によっては、示談交渉サービスが付いていない場合があります。
『自転車保険はTSマーク付帯保険加入で大丈夫?』
大手損保会社の自動車保険の個人賠償責任補償特約には示談交渉サービスが付いています。示談交渉サービスが付いていれば、一般の方には難しい事故相手との示談等の交渉を保険会社が代行してくれます。
但し、自動車保険の個人賠償責任補償特約でも保険会社によっては、示談交渉サービスが付いていない場合がありますので、ご注意ください。
『個人賠償責任補償特約の比較まとめ』
個人賠償責任保険の補償内容等の詳細については下記記事をご参照ください。
『自転車の事故で注目の個人賠償責任保険』
示談交渉サービスとは、万が一契約者(被保険者)が法律上の損害賠償責任が発生する事故を起こした場合に、契約者(被保険者)に代わって保険会社が事故の過失割合等について相手方や相手方保険会社との示談交渉を代行するサービスです。
示談交渉サービスは、全ての保険で提供されているわけではなく、自動車保険や自転車保険、個人賠償責任特約等の一部の保険や特約にセットされているサービスです。
なお、保険会社によっては、「示談代行サービス」と呼んでいる場合もあります。
2.自動車保険の人身傷害保険で自転車での交通事故も補償される
自転車保険は個人賠償責任保険と傷害保険がセットになっている商品ですが、自動車保険の人身傷害保険を「契約の車に搭乗中のみ」に限定せず、「車内及び車外補償」にすれば、自転車等での交通事故は人身傷害保険で補償されます。
「人身傷害車外事故特約」や「交通乗用具事故特約」など特約を付加して契約の車に搭乗中以外でも補償されるようにする保険会社もあります。
但し、自転車保険と保険金の支払い方法等、異なる点があります。
1)人身傷害保険と自転車保険の傷害補償では保険金の支払方法が異なる
人身傷害保険と自転車保険の傷害補償では、保険金の支払い方法が異なります。
自転車保険の傷害補償は、入院1日5,000円、通院1日3,000円などの定額払いですが、人身傷害保険は治療実費の支払いになります。また、人身傷害保険には休業損害、精神的損害などに対する補償もあります。
『人身傷害保険とは?押さえておくべき6つのポイント』
2)人身傷害保険は自転車単独での事故は補償されない
自転車保険であれば、自転車単独事故でのケガが補償されますが、人身傷害保険では交通事故や自動車との接触事故でのケガに補償が限定される保険会社があります。
例えば、自転車に乗っていて自動車と接触し、ケガをした場合は、補償されますが、自転車単独で転倒しケガをした場合は、補償対象外という保険会社がありますので、ご注意ください。
3)人身傷害保険は補償額が大きい
人身傷害保険は、最低でも補償額3,000万円からの設定になるので、自転車保険と比べて補償額が大きくなります。自転車保険では死亡保険金は最大で500万円程度です。
3.個人賠償責任補償特約や人身傷害保険は家族も補償の範囲に含まれる
自動車保険の人身傷害保険や個人賠償責任補償特約はご家族等が補償の範囲に含まれます。補償の範囲は下記の通りです。
1.記名被保険者(主に車を使用する方)
2.記名被保険者の配偶者
3.記名被保険者または配偶者の同居の親族
4.記名被保険者または配偶者の別居の未婚の子
しかし、自転車保険には家族型と個人型がある場合があります。個人型では、家族が補償の範囲に含まれません。更に個人型と家族型では保険料が異なります。
例えば、三井住友海上の自転車保険「ネットde保険@さいくる」はAコースの本人型の年間保険料が7,230円、家族型の年間保険料が13,980円と約2倍になります。
4.自動車保険の特約と自転車保険との保険料比較
自転車保険と自動車保険で個人賠償責任補償特約と人身傷害保険で自転車事故に備える場合の保険料を比較してみたいと思います。
【試算条件】
免許色:ブルー
自動車:自家用軽四輪
使用目的:日常・レジャー
対人賠償:無制限
対物賠償:無制限
等級:14等級
事故有等級適用期間:0年
記名被保険者年齢:35歳
年齢条件:35歳以上
人身傷害保険:3,000万円(搭乗中のみ)
特約:個人賠償責任補償なし
年間保険料:33,280円
人身傷害保険:3,000万円(車外補償あり)
特約:個人賠償責任補償(補償額:無制限)あり
年間保険料:37,890円
上記試算条件の場合、年間保険料4,610円で自転車事故への備えができます。
※保険料は等級や車の料率クラス等の条件によって異なることにご注意ください。
一方、au損保の「Bycle」のブロンズコース(家族タイプ)は年間保険料が8,090円(一時払)です。ブロンズコースの主な補償内容は下記の通りです。
死亡・後遺障害:250万円
入院(1日):4,000円
個人賠償責任:2億円
上記の試算条件だと、自動車保険に特約を付加することで自転車事故に備える場合の方が半分程度の保険料で済みます。更に人身傷害保険、個人賠償責任補償特約とも補償額は自動車保険に特約を付加(セット)する場合の方が大きくなります。
5.自動車保険の自転車特約とは?|必要性は低い?
自動車保険に自転車特約をセットできる保険会社があります。自転車特約とは、個人賠償責任補償特約と自転車事故の際の傷害補償がセットになった特約です。
例えば、東京海上日動の自動車保険の自転車特約は、「サイクルパッケージ」と呼ばれていて、個人賠償責任補償特約と自転車傷害補償特約(一時金払)がセットになった補償です。特約保険料は月額360円です。
自転車傷害補償特約(一時金払)の補償は、5日未満の入院が1万円、死亡が300万円などとなっていて、通院の補償がないなど自転車保険の傷害補償よりも補償内容としては小さくなっています。
どうしても自転車での単独事故時のケガも補償してもらいたいという場合を除いては、あえて自動車保険の自転車特約を選ぶ必要性は低いでしょう。
まとめ
自動車保険に人身傷害保険と個人賠償責任特約をセットすることで自転車保険に加入した場合とほぼ同等以上の補償が確保できます。家族が補償されるという観点で考えると家族で自転車保険に加入する場合、等級等の条件にもよりますが保険料は自動車保険で備える方が安い場合があります。
しかし、自転車保険の傷害補償と自動車保険の人身傷害保険とでは補償内容が異なる点に注意は必要です。
また、自転車保険は傷害保険が必ずセットになっているので、保険料が高い傾向があります。自動車保険であれば、傷害補償が不要な場合、個人賠償責任補償特約のみの付帯(セット)にするという対応が可能です。その場合の特約保険料は年間1,500円程度です。
自転車事故によるご自身やご家族のケガの補償が不要な場合には、自動車保険に個人賠償責任補償特約をセットすることをおすすめします。
なお、自動車保険に加入していない場合には、火災保険などにも個人賠償責任特約をセットすることが可能です。
最終更新日:2019年5月6日
No.175