「住宅が火災になり、火災保険の保険金を受け取った場合、火災保険の保険金額(補償額)は受け取った保険金額分減るのか?また、翌年以降の火災保険料は上がるのか?」というご質問を頂きました。
例えば、保険金額(補償額)が2,000万円の火災保険から500万円の保険金を受け取った場合、その後の火災保険はどうなるのでしょうか?保険金額が1,500万円(2,000万円-500万円)に減額されるのでしょうか?契約自体が消滅してしまうのでしょうか?
また、火災保険を使った場合、次契約の保険料は自動車保険のように上がるのでしょうか?
今回は、保険金を受け取った後の火災保険契約と、火災保険でセットで加入する地震保険契約について解説します。
1.火災保険を使っても保険金額(補償額)は自動復元される
冒頭の事例の場合、500万円の保険金を受け取っても保険金額(補償額)は減らず、契約時の2,000万円に自動復元し、火災保険契約は満期日まで有効に継続します。これを「保険金額自動復元方式」といいます。
保険の種類によっては、支払った保険金分を保険金額から減額する「残存保険金額方式」をとっている場合もあります。
家計分野の火災保険は保険金を受け取った場合でも保険金額が復元する「保険金額自動復元方式」を採用しています。
2.保険金を受け取り、火災保険契約が終了するケースとは?
火災保険は保険金を受け取った場合でも保険金額は自動で復元するとご説明しましたが、これはあくまでも保険金額のある一定割合までの受け取りの場合です。
火災保険の多くの商品が保険金額の80%に相当する額を超える保険金支払いがあると、損害発生時に遡って契約は終了します。
例えば、保険金額2,000万円の火災保険で、1,600万円を超える保険金を受け取ると、保険金額は復元せず、損害発生時に遡って火災保険契約は終了することになります。
尚、火災保険とセットで地震保険を契約している場合、主契約である火災保険の契約が保険金の支払いによって保険期間の途中で終了すると、地震保険も同時に終了しますので、ご注意ください(地震保険は単独では契約できず、火災保険とセットで契約する必要があります)。
『地震保険について抑えておくべき5つのポイント』
3.火災保険を使うと保険料は上がるのか?
「火災保険を使って保険金を受け取ると、翌年以降の火災保険料は上がるのか?」というご質問もよく頂きます。
多くの方が自動車保険のノンフリート等級別料率制度の印象が強く、保険金を受け取ると、次契約の等級(割引率)が下がり、保険料が上がるイメージをお持ちのようです。
しかし、火災保険は自動車保険のノンフリート等級別料率制度のような仕組みはありませんので、保険金を受け取っても原則、翌年度の保険料が上がることはありません。
但し、保険金を支払う事故の頻度が多いような場合等は、翌年度以降の契約引き受けを保険会社が断る可能性があります。
自動車保険のノンフリート等級別料率制度についての詳細は、下記記事をご参照ください。
『自動車保険の等級制度(ノンフリート等級別料率制度)』
4.地震保険の場合も保険金額(補償額)が自動復元される?
火災保険は保険金額の80%相当額を超えない保険金受け取りであれば、保険金額が自動復元しますが、火災保険とセットで契約する地震保険の場合はどうでしょうか?
『地震保険について抑えておくべき5つのポイント』でもご紹介した通り、地震保険は実際の損害額が保険金として受け取れるわけではありません。
「地震保険損害認定基準」に従い、損害の程度によって「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の認定を行い、それぞれ地震保険金額の100%(時価額が限度)・60%(時価額の60%が限度)・30%(時価額の30%が限度)・5%(時価額の5%が限度)が定額で支払われます。
地震保険の場合は、損害の認定が「大半損」「小半損」「一部損」で、保険金を受け取っても契約の保険金額は減額されません。
但し、損害の認定が「全損」となり保険金を受け取った場合には、地震保険の契約はその損害が生じた時に遡って終了します。契約終了後に発生した地震等による損害は補償されません。
※地震による損害は広範囲に及ぶので可能な限り早く、そして公正に保険金が支払えるように損害認定区分が4つになっています。2016(平成28)年12月以前は、損害の認定区分が3区分(「全損」「半損」「一部損」)でしたが、2017(平成29)年1月から4区分(「全損」「大半損」「小半損」「一部損」)に改定されました。
5.地震保険を使うと保険料は上がる?
地震保険についても自動車保険のような等級制度はありませんので、地震保険を使って保険金を受け取ったからといって保険料があがることはありません。
そもそも、地震保険は「地震保険に関する法律」に基づき、政府と損害保険会社が共同で運営している制度のため、個別の契約ごとに保険料が上がる仕組みはありません。
まとめ
上記の通り、原則として家計分野の火災保険は保険金の受取が保険金額の80%相当額を超えない場合は保険金額(補償額)は減額されることなく、満期日まで有効に継続します。
保険金の受取が保険金額の80%に相当する額を超えると損害発生時に遡って契約は終了します。
また、保険金を受け取ったも原則、翌年度の火災保険の保険料が上がることはありません。
地震保険の場合は、損害の認定が「大半損」「小半損」「一部損」で、保険金を受け取っても契約の保険金額は減額されません。しかし、「全損」と認定された場合は、その損害が生じた時に遡って終了します。
最終更新日:2019年4月27日
No.196