ご加入の生命保険や医療保険、がん保険などの指定代理請求人は指定されているでしょうか?申込時によくわからずに指定代理請求人を指定された方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、指定代理請求人を指定する際に確認すべき下記ポイントについて解説します。
- 指定代理請求制度とは、どのような制度か?
- 指定代理請求人は指定するべきか?
- 指定代理請求人を指定すると、どのような場面で役立つのか?
- 指定代理請求人を指定するデメリットはないのか?
今回の記事を読めば、指定代理請求制度の内容と注意点について理解していただけます。
1.指定代理請求制度とは?
指定代理請求制度とは、被保険者(保障の対象者)が受取人になる保険金や給付金等を請求できない「特別な事情」がある場合、契約者があらかじめ指定した代理人(指定代理請求人)が被保険者に代わって保険金や給付金等を請求できる制度です。
一般的に医療保険やがん保険などは、被保険者(保障対象者)自身が入院や通院などの給付金の受取人になっています。
したがって、被保険者の意識がなかったり、請求の意思表示ができない場合、給付金や保険金を請求できず、保険を役立てることができません。そのような場合に指定代理請求制度が役立ちます。
具体的には下記のような契約例で、被保険者である夫が事故等により意識不明の状態で入院した場合、被保険者である夫は入院給付金等の請求を自分の意思ではできません。
そのような場合、請求の意思表示ができない被保険者である夫に代わって指定代理請求人である妻が入院給付金等を請求できる制度です。
意識不明の夫に代わって入院給付金等の給付金を指定代理請求人である妻が請求できるので、医療費などに給付金を活用することができます。
【医療保険の契約例】
契約者:夫
被保険者:夫
受取人:夫
指定代理請求人:妻
上記契約の場合、夫は妻に指定代理請求人に指定したことと、夫自身に万が一のことがあった場合には、妻が代理で保険金や給付金の手続きができる旨を説明しておくといいでしょう。
なお、ライフネット生命のように指定代理請求人を指定しないと医療保険などの契約ができない保険会社もあります。
2.指定代理請求人の指定方法
一般的に医療保険やがん保険等の契約には「指定代理請求特約」を付加し、指定代理請求人を指定します。代理人(指定代理請求人)を指定する場合、契約者は被保険者の同意を得る必要があります。
この特約の付加に保険料はかかりません。
なお、契約途中でも被保険者の同意を得て、指定代理請求人を指定することが可能です。
3.指定代理請求特約の「特別な事情」とは?
被保険者(保障の対象者)が保険金や給付金を請求できない「特別な事情」とは下記のような場合です。
【被保険者が保険金や給付金を請求できない「特別な事情」】
- 事故や病気により、受取人(被保険者)が保険金等を請求する意思表示ができないとき
- 治療上の都合により、被保険者が「がん」などの傷病名または余命の告知を受けていないとき
- その他1または2に準じた状態であるとき
上記のような「特別な事情」がある場合に指定代理請求人が被保険者に代わって保険金や給付金を請求することができます。
4.代理請求できる保険金・給付金
指定代理請求人が代理請求できる保険金・給付金は下記の被保険者が受取人になっている給付です。
- 入院給付金
- 通院給付金
- 手術給付金
- 高度障害保険金
- 特定疾病保険金
- リビング・ニーズ特約保険金
- 介護保険金・介護年金 など
被保険者と受取人が同一人の場合の満期保険金や年金などを代理請求できる生命保険会社もあります。また、契約者と被保険者が同一人の場合の「保険料払込免除」についても、代理請求することができます。
なお、生命保険(死亡保険)にも指定代理請求人を指定することができますが、生命保険(死亡保険)は、被保険者(保障の対象者)が死亡した際に受取人が死亡保険金を受け取るので、指定代理請求人の指定は不要ではないかと思われる方もいるでしょう。
実は、生命保険(死亡保険)には、被保険者が死亡した場合以外にも、被保険者が高度障害状態になった場合に高度障害保険金が支払われます。
高度障害保険金の受取人は、被保険者なので、被保険者が高度障害状態になり、保険金の請求ができない場合、指定代理請求人は高度障害保険金を代理請求することができます。
『生命保険の高度障害保険金を受け取れる条件とは!?』
5.指定代理請求人に指定できる方の範囲
指定代理請求人に指定できる方の範囲は下記の通りです。
【指定代理請求人に指定できる方の範囲】
- 被保険者の戸籍上の配偶者
- 被保険者の直系血族
(例:祖父母、父母、子、孫) - 被保険者の3親等内の親族
(例:兄弟姉妹、子の配偶者、配偶者の父母、おじ、おば、おい、めい)
※保険金や給付金の請求時点にも、指定代理人は上記の範囲内であることが必要
保険会社によっては上記以外の人でも被保険者と同居し、または生計を一にしている人で保険会社が認めた場合、代理請求できる場合があります。
また、事実婚(内縁関係)のパートナーや同性のパートナーも被保険者と同居しているなどの一定の条件はありますが、指定代理請求人に指定することができる保険会社もあります。
6.指定代理請求制度にデメリットはないのか?
指定代理請求人を指定することによりデメリットは発生しないのでしょうか?
指定代理請求制度にデメリットはありません。しかし、下記のような点には注意が必要です。
保険会社は指定代理請求人からの請求に基づいて保険金等を支払ったことを被保険者に連絡することはありません。
しかし、被保険者が知らない間に保険金等が支払われたことにより、保険金額や保険料が変わったり、契約が消滅したりすることがあり、そのことによって、被保険者が保険金や給付金を指定代理人が受け取ったことに気付いてしまう可能性があります。
また、指定代理請求人に保険金等が支払われた後に、契約者や被保険者から契約内容についての問い合わせが生命保険会社にあった場合、生命保険会社は保険金等の支払い事由を回答することがあります。
このため、被保険者本人が保険金等を請求できない事情(「がん」であることや余命6ヵ月以内であること など)を知る場合があります。
7.指定代理請求人を契約の途中で変更することも可能
指定代理請求人は保険期間の途中でも被保険者の同意を得れば変更することが可能です。よって、保障内容の確認と同様に指定代理人についても定期的に確認し、必要であれば、指定代理請求人に関しても見直す(変更する)ことが重要です。
指定代理請求人は契約時だけでなく、保険金や給付金の請求時点にも保険会社が定める範囲内の方である必要があります。例えば、医療保険の契約時に配偶者を指定代理請求人に指定して、その後に離婚した場合、離婚した配偶者は指定代理請求人となれる方ではなくなってしまっています。
離婚した場合などは、保障内容の見直しとともに指定代理請求人に関しても見直す(変更する)ことが重要です。
8.指定代理請求人は解約や契約内容の変更もできる?
指定代理請求人は、契約の解約や契約内容の変更はできません。契約の解約や契約内容の変更ができるのは契約者のみです。
指定代理請求人ができることは、被保険者(保障の対象者)が受取人である保険金や給付金等を請求できない「特別な事情」がある場合の保険金や給付金などの請求のみです。
まとめ
指定代理請求人は無料で指定することが可能ですし、指定して損(デメリット)になることは何もありません。現在ご加入の契約に指定代理請求人が指定されていない場合には、保険会社にご連絡のうえ、指定されることをおすすめします。
また、指定代理請求制度を活かすためにも契約者や被保険者の方は、指定代理請求人の方に被保険者に代わって保険金や給付金が請求できる場合があることを伝えておくといいでしょう。
最終更新日:2019年2月12日
No.116