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人身傷害保険の保険金額(補償額)は3,000万円で充分か?

契約されている自動車保険の人身傷害保険の保険金額(補償額)をご存知でしょうか?自動車保険の人身傷害保険の保険金額は多くの契約で3,000万円になっていると思われます。

しかし、人身傷害保険の保険金額(補償額)は3,000万円で充分なのでしょうか?人身傷害保険の保険金額(補償額)を明確な理由があって3,000万円にされている方は少ないと思います。

今回は、人身傷害保険の保険金額(補償額)の設定についてご紹介したいと思います。人身傷害保険の保険金額(補償額)の目安や保険金額(補償額)と保険料の関係をご理解頂ければと思います。

1.人身傷害保険とは?

まずは簡単に人身傷害保険についてご説明します。

人身傷害保険とは、自動車事故により、記名被保険者およびその家族や被保険自動車(契約の車)に搭乗中の人が死傷した場合、その過失割合(責任割合)にかかわらず、被る損害の実際の損害額(治療費、休業損害、逸失利益、及び精神的損害等)に対して保険金が支払われる補償です。

(セゾン自動車火災保険のHPより抜粋)

人身傷害保険の詳細については、下記記事もご参照ください。
人身傷害保険について抑えておくべき6つのポイント

 

 

 

2.人身傷害保険は、最低3,000万円から

冒頭でご紹介しましたが、人身傷害保険の保険金額(補償額)が3,000万円である自動車保険契約が多い理由は、多くの保険会社の人身傷害保険の最低保険金額が3,000万円だからです。

実際、ソニー損保のHPには2016年7月末時点の人身傷害保険の保険金額の内訳が掲載されていますが、人身傷害保険の保険金額3,000万円の契約が64.1%と6割以上の契約で保険金額が3,000万円に設定されています。

しかし、多くの方が保険金額3,000万円に設定しているからといって、その設定が妥当かというとそういう訳ではありません。

 

 

 

3.人身傷害保険の保険金額(補償額)の目安は?

人身傷害保険の保険金額(補償額)は、補償対象者1名あたり3,000万円以上1,000万単位の金額で設定できます。但し、2億円超については「無制限」となります。

人身傷害保険補償額(保険金額)のポイント
人身傷害保険の補償額(保険金額)は、1名あたりの額です。例えば、人身傷害保険3,000万円の契約の車に3名が乗車し事故を起こした場合、3,000万円×3名=9,000万円が補償の限度額となります。

保険金額の設定については、被保険者(補償を受ける方)の年齢、収入、家族構成等を考慮して適正な保険金額を設定することになります。

ある保険会社のパンフレットに掲載されている死亡・重度後遺障害の場合の年齢別の平均的な損害額目安は下表の通りです。

年齢 被扶養者
の有無
死亡した場合 重度後遺障害
の場合
25歳 あり 8,000万円 1億5,000万円
なし 7,000万円 1億5,000万円
35歳 あり 8,000万円 1億4,000万円
なし 6,000万円 1億4,000万円
45歳 あり 8,000万円 1億4,000万円
なし 6,000万円 1億3,000万円
55歳 あり 6,000万円 1億2,000万円
なし 5,000万円 1億1,000万円
65歳 あり 5,000万円 9,000万円
なし 4,000万円 9,000万円
75歳以上 あり 3,000万円 6,000万円
なし 3,000万円 5,000万円

※約款に定める重度後遺障害の場合には、原則として保険金額の2倍まで補償

上記の表は、あくまで目安ですので、ご自分や契約の車に搭乗する方の状況を考慮し、保険金額の妥当性を確認する必要があります。

尚、人身傷害保険の保険金額(補償額)は、「無制限」にしたからといって、「無制限」に支払われるわけではありません保険金として支払われる損害額は、約款に定められた基準に従い保険会社が算出します。仮に保険金額が「無制限」に設定されていても、保険会社が算出した損害額が1億円であれば、支払われる保険金額は1億円になります。

逆に保険金額の設定が低いと、保険会社が算出した損害額が大きくても支払われる保険金は保険金額が限度となります。例えば、保険金額が「3,000万円」で設定されている場合で、損害額が1億円と算出されても、支払われる保険金は、保険金額の「3,000万円」が限度となります。

 

 

4.保険金額(補償額)を上げた場合の保険料は?

人身傷害保険の保険金額(補償額)は上げたいが、保険金額(補償額)を上げると保険料が高くなるのではないかと思われている方が多いのではないでしょうか

実は保険金額(補償額)を上げても保険料はそんなに上がりません。実際に試算してみました。

【試算条件】
自動車:自家用軽四輪乗用車
等級:14等級
事故有係数適用期間:0年
対人賠償:無制限
対物賠償:無制限
年齢条件:26歳以上
記名被保険者年齢:30歳

人身傷害保険:3,000万円(搭乗中のみ補償)
年間保険料:34,690円

人身傷害保険:5,000万円(搭乗中のみ補償)
年間保険料:36,060円

人身傷害保険:8,000万円(搭乗中のみ補償)
年間保険料:38,100円

人身傷害保険:1億円(搭乗中のみ補償)
年間保険料:39,470円

人身傷害保険:1億5,000万円(搭乗中のみ補償)
年間保険料:40,740円

人身傷害保険:無制限(搭乗中のみ補償)
年間保険料:42,380円

上記試算例では、人身傷害保険の保険金額3,000万円と無制限では、年間保険料で約8,000円の差しかありません。皆さんが予想されたほど保険料差が大きくないのではないでしょうか。

 

 

 

5.人身傷害保険と生命保険や医療保険との関係

「生命保険や医療保険に加入していると人身傷害保険の保険金が支払われず、ムダになってしまうのではないか?」という質問をよく頂きます。

実は、生命保険から死亡保険金が支払われる場合や医療保険から入院給付金等の支払いがあった場合でも人身傷害保険については、減額されることなく、別途支払われます

よって生命保険や医療保険に加入しているからといって人身傷害保険の補償がムダになることはありません。

但し、人身傷害保険の保険金額を設定する際には、他にどのような生命保険や医療保険に加入しているかを考慮しないと必要保障額を大きく超えることになる可能性があり、保険料を余分に支払うことになってしまいます。他にどのような生命保険や医療保険に加入しているかを確認のうえ、人身傷害保険の保険金額を設定する必要があるでしょう。

 

 

 

6.人身傷害保険の保険金から差し引かれるもの

生命保険の保険金や医療保険の給付金等を受け取っても人身傷害保険の保険金は前述の通り差し引かれることはありません。

しかし、事故の相手方から既に受け取った賠償金や自賠責保険、労働者災害補償制度によって既に給付が決定した金額または支払われた金額などについては、人身傷害保険の保険金から差し引かれます

事故の相手から補償(賠償)されるべき賠償金を受け取っていない場合、その額も含めて人身傷害保険から保険金が支払われますが、事故の相手方から賠償されるべき額については、保険会社が相手方に求償します。

 

 

 

まとめ

人身傷害保険の保険金額設定についてご理解頂けたでしょうか?ご自身の生活状況や生命保険等の加入状況を考慮して人身傷害保険の保険金額設定を行って頂ければと思います。

人身傷害保険の保険金額をなんとなく3,000万円にしていた方は、保険料や補償の必要性を考慮し、保険金額をいくらにするか再度検討をされてもいいと思います。

最終更新日:2017年8月26日
No.261

保険FP: