痴漢を疑われた際に弁護士に電話で相談できる保険やスマホが壊れた場合に修理代が出る保険など、最近話題なのが少額短期保険(ミニ保険)です。
少額短期保険(ミニ保険)と聞いてもピンとこない方が多いと思います。少額短期保険(ミニ保険)だと気づかずに加入している方もいらっしゃると思います。
少額短期保険(ミニ保険)とは、どのようなものなのでしょうか?一般的な生命保険や損害保険と何が違うのでしょうか?
そこで今回は、少額短期保険(ミニ保険)の下記ポイントについて解説します。
・少額短期保険(ミニ保険)とは?
・生命保険や損害保険との違いは?
・少額短期保険(ミニ保険)のメリット・デメリット
・少額短期保険(ミニ保険)に加入する際の注意点
少額短期保険(ミニ保険)への加入を検討している方は参考にしていただけます。
1.少額短期保険(ミニ保険)とは?
「少額短期保険業」とは、保険期間が2年以内(生命保険・医療保険は1年、損害保険は2年)、保険金額が1,000万円以内の短期・少額の保険のみを引き受ける事業です。「ミニ保険」とも呼ばれています。
JA共済やこくみん共済のように根拠法と監督官庁のある共済を「認可共済」といいますが、以前は、根拠法と監督官庁のない共済が乱立し、「無認可共済」と呼ばれていました。
しかし、契約者保護を図ることを目的として、2006年(平成18年)4月に改正保険業法が施行され、「少額短期保険業制度」が導入されました。「無認可共済事業者」は、損害保険会社となるか、少額短期保険業者として金融庁に登録するなど、規制が強化されました。
なお、少額短期保険業者は、2019年5月17日現在、100社あります。
参照:少額短期保険業者登録一覧(出典:金融庁HP)
2.少額短期保険(ミニ保険)と保険の違いを比較
少額短期保険(ミニ保険)と保険とはどのような点で異なるのでしょうか?
保険会社では規制されている生命保険と損害保険の兼営が少額短期保険業者には認められている等の違いがあります。
『保険、共済、少額短期保険の違いを比較』
保険会社 | 少額短期保険会社 | |
---|---|---|
参入要件 | 免許制 | 登録制 |
申請先 | 金融庁 | 金融庁・財務局 |
生損保兼営 | 生損兼営不可 | 生損兼営可 |
取扱商品 | 制限なし | 制限あり |
事業規模 | 制約なし | 年間収入保険料50億円以下 |
資本金 | 10億円以上 | 1,000万円以上 |
3.少額短期保険(ミニ保険)の種類
少額短期保険(ミニ保険)の種類としては、ペット保険、賃貸物件向けの家財保険、孤独死保険、地震補償保険、医療保険、自転車保険、自転車盗難保険、モバイル保険、弁護士保険などがあります。
少額短期保険(ミニ保険)は、一般的な生命保険や損害保険とは違うニッチな分野の商品が多いのが特徴です。
例えば、一般的な地震保険は、火災保険とセットで加入することになります。しかし、少額短期保険の地震補償保険は、火災保険に加入していなくても単独で加入できます。
『単独で加入できる地震補償保険リスタ|地震保険との違いとは?』
また、医療保険では、糖尿病の方でも簡単な告知で入れる商品や、障害のある方でも入れる可能性のある商品もあります。
参照:少額短期保険ガイドブック2019(出典:日本少額短期保険協会)
4.少額短期保険(ミニ保険)のメリットとは?
少額短期保険(ミニ保険)のメリットは、最低限の保障(補償)を手軽な保険料で加入できる点です。
また、損害保険会社や生命保険会社が手を出さないニッチでユニークな分野の商品が販売されている点もメリットの1つです。
スマホが壊れた際に補償するモバイル保険や、痴漢を疑われた際に弁護士に相談できる弁護士保険など、大手の保険会社が販売していないような保険商品が出ています。
5.少額短期保険(ミニ保険)のデメリットとは?
少額短期保険(ミニ保険)の主なデメリットは下記の通りです。
補償(保障)額が少ない
最低限の補償(保障)を手ごろな保険料で加入できる点は、メリットになる反面、デメリットにもなります。
少額短期保険はミニ保険とも呼ばれている通り、補償額が一般的な生命保険や損害保険と比べると少ない点に注意が必要です。補償額(保険金額)は1,000万円までと制限されています。
例えば、自転車事故を補償する「ちゃりぽ」のスタンダードプランは、被害者への賠償補償額が1,000万円です。補償額が1,000万円まででは、実際の事故の際に補償額が足りない可能性があります。さらに示談交渉サービスも付いていません。
自転車事故では実際に約9,500万円の賠償事例があります。よって、補償額としては、1億円程度はないと安心できません。
ただし、保険会社と提携することにより、補償額を上げているプランもあります。例えば、「ちゃりぽ」の賠償1億プランでは、あいおいニッセイ同和損害保険と提携することにより、賠償1億円プランを用意しています。さらに「賠償1億プラン」には示談交渉サービスもついています。
少額短期保険(ミニ保険)は保険料が安いと飛びつくと、あとで補償内容が物足りないとなる可能性があります。少額短期保険(ミニ保険)に加入する際には、保険料だけでなく、どのような補償内容になっているかも確認する必要があります。
保険契約者保護機構(セーフティーネット)の対象外
生命保険会社や損害保険会社が破綻(倒産)した場合、加入している契約は消滅することなく、契約者保護機構により一定の契約者保護が図られます。
生命保険や損害保険には、契約者保護機構によるセーフティーネットの仕組みがあります。
『生命保険会社が破たん(倒産)した場合、保険契約は消滅する?』
一方、少額短期保険業は、保険契約者保護機構の対象となっていません。つまり、少額短期保険業者が破綻(倒産)した場合には、契約者保護機構による契約者保護はなく、セーフティーネットの仕組みはありません。
ただし、少額短期保険業者は、保険契約者の保護を図るため、業務開始時に最低1,000万円を、また毎期一定の供託金を法務局に供託することが義務づけられてます。
保険料控除の対象外
少額短期保険(ミニ保険)の保険料は、年末調整や確定申告時に支払った保険料を所得から差し引ける保険料控除の対象外です。
例えば、地震保険の保険料は地震保険料控除の対象となりますが、ミニ保険の地震補償保険の保険料は、地震保険料控除の対象外です。
『年末調整や確定申告時に損害保険の保険料控除の対象となる契約、控除額』
また、少額短期保険業者が販売している医療保険や生命保険の保険料も介護医療保険料控除、一般生命保険料控除の対象になりません。
『生命保険料控除とは?|確定申告や年末調整時の控除申告書の書き方』
まとめ
少額短期保険(ミニ保険)は、損害保険会社や生命保険会社が手を出さないニッチな分野の商品が多く、加入するメリットはあると思います。
ただし、損害保険や生命保険のように契約者保護の仕組みがないことや、ミニ保険の保険料は保険料控除の対象にならないなどのデメリットがありますので、認識しておくべきポイントです。
また、ミニ保険に加入する際には、その補償(保障)内容がご自身の希望に合っているかについても確認することが重要です。
No.370