個人型確定拠出年金(iDeCo)は、2017年(平成29年)1月から専業主婦、公務員の方を含め、基本的に60歳未満のすべての方が利用できるようになり、一気に注目度が上がりまた。
注目度が上がるとメリットばかりに注目が集まりデメリットが軽視される傾向があります。メリットばかりに注目してしまうと、加入してから「こんなはずではなかった!」と後悔する可能性もあります。
今回は、個人型確定拠出年金(iDeCo)加入時に注意するべき点についてご紹介します。メリットだけではなく、デメリットにも目を向けて頂き、あとで後悔しないようにして頂ければと思います。
尚、個人型確定拠出年金(iDeCo)については、下記記事で解説していますので、ご参照ください。
『個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリット、デメリットとは?』
1.掛金は全額所得控除になるが・・・
個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金は全額が所得控除になるのは、大きなメリットですが、非課税となる額は所得によって異なる点には注意が必要です。
所得税は累進課税で、所得が高いほど税率が高くなります。所得税の税率は下表をご参照ください。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 975,000円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
所得が高いほど税率が高くメリットが高いですが、所得が低い場合は、税率が低いので、所得控除のメリットが低くなります。
掛金を毎月2.3万円拠出した場合の年間節税額(復興特別所得税は加味せず)を所得税の税率5%、20%、40%のパターンで出してみました。
所得税5%+住民税10%
27.6万円 × 15% = 41,400円
所得税20%+住民税10%
27.6万円 × 30% = 82,800円
所得税40%+住民税10%
27.6万円 × 50% = 138,000円
上記の通り、当然のことながら所得税の税率が高いほど、節税効果は高くなります。
更に掛金をどれだけ出せるかでも節税額はかわります。例えば、1ヶ月5,000円拠出するのか、23,000円拠出するかで、節税できる額は異なります。
仮に所得税の税率が5%で拠出額が5,000円の場合、所得控除による節税メリットは、9,000円ですが、口座管理手数料が高いとほとんど所得控除のメリットが相殺されてしまいます。運用期間中にかかる手数料が一番高い金融機関だと、年間7,404円必要です。
2.運用次第では、マイナスもあり得る
元本保証の商品を選択した場合は問題ないですが、投資信託等の元本保証以外の商品を選択をした場合、当然のことながら元本割れする可能性があります。
老後の大切な資金として拠出したにも関わらず、運用の成果次第では、その資金を目減りさせてしまう可能性もあります。
所得控除のメリットを完全に打ち消してしまう運用損が発生する可能性もゼロではありません。
3.加入時の年齢に注意
個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入する際には、ご自身の年齢に注意が必要です。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の税制優遇措置は、老後の資金形成を目的としたものであるため、原則、個人型確定拠出年金(iDeCo)に拠出した掛金は、60歳まで引き出すことはできません。
更に50歳超で加入すると、引出しが61歳以降になります。具体的には以下の通りです。
加入期間 | 受給年齢 |
---|---|
10年以上 | 60歳 |
8年以上10年未満 | 61歳 |
6年以上8年未満 | 62歳 |
4年以上6年未満 | 63歳 |
2年以上4年未満 | 64歳 |
1月以上2年未満 | 65歳 |
上記の通り、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入した年齢によっては、受取時の年齢が最大65歳までずれてしまいます。
受取時の年齢が遅くなるだけでなく、積立金を運用しているだけの期間も手数料がかかる点に注意が必要です。
60歳以降は、掛金を拠出できないので、所得控除の恩恵は受けられません。しかし、積立金が引き出せないため、口座管理費だけは毎月必要になってしまいます。
スポンサーリンク
4.口座管理手数料の差
運営管理機関を選ぶ際には、口座管理手数料には注意が必要です。毎月では少額ですが、長期間では大きな差になります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の運用期間中に継続して毎月必ず支払う必要のある手数料があり、自動引き落とし手数料(支払い先:国民年金基金連合会)103円、事務委託先金融機関手数料(支払い先:信託銀行)64円で、合計167円です。
更に運営管理機関手数料を、保険会社、銀行、証券会社等の金融機関に支払う必要があります。
この運営管理手数料には金融機関ごとに差があり、一番安いところでは、年金資産の額に関係なくSBI証券や楽天証券が0円となっています。一方、464円/月かかる金融機関もあります。
ひと月あたりでは小さい差でもこれが20年になると、111,360円もの差になってしまいます。特に所得控除の恩恵が少ない場合には、なるべく手数料が安い金融機関を選んだ方がいいでしょう。
但し、金融機関によって選べる運用商品異なるので、その点も考慮して金融機関を選ぶ必要があります。
5.無理のない拠出額か?
所得控除の恩恵を少しでも多く受けるために掛金を高くしたいと思われる方も多いと思いますが、無理のない範囲内で掛金を決めることが重要です。
無理して掛け金を高くしてしまい、途中で家計が苦しくなったりしても拠出した掛金は、原則、60歳まで引き出せない点に注意が必要です。
生活費や教育費等に困らない、ある程度の余裕を持った範囲の掛金にする方がいいでしょう。掛金を多くし過ぎて生活費に困り、カードローン等の高い金利でお金を借りたりすることがあれば、本末転倒です。
まとめ
個人型確定拠出年金(iDeCo)はメリットの大きい制度ですが、積立金の引き出しに制限がある等のデメリットもあります。
金融機関のチラシなどでは、メリットばかりが強調されています。個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用する際には、メリットばかりに注目するのではなく、デメリットにも目を向け、無理のないプランで加入して頂ければと思います。
No.293