2015年の相続税の増税や日本銀行のマイナス金利政策、マイナンバー制度の導入等の影響により、銀行預金やゆうびん貯金などを引き出して現金を自宅で保管するタンス預金が増えているようです。
タンス預金のための家庭用金庫も売れているそうですが、本当にタンス預金は銀行などの金融機関に預けておくよりメリットがあり安全なのでしょうか?デメリットはないのでしょうか?
そこで今回は、タンス預金の下記ポイントについて解説します。
- タンス預金の現金が火事で燃えても火災保険で補償される?
- タンス預金の現金が盗難されても火災保険で補償される?
- タンス預金をすれば、相続税が節税できる?
今回の記事を読めば、タンス預金のデメリットや危険性について知ることができます。大切なお金を守るため、タンス預金以外の方法についても検討して頂ければと思います。
1.日銀のマイナス金利政策とは?
まずは簡単にマイナス金利政策についてご説明をします。
日本銀行(日銀)は2016年2月16日よりマイナス金利の適用を開始しています。
マイナス金利政策とは、金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に対して-0.1%の金利を適用するというものです。金融機関が日銀に預けていたお金を企業や個人への貸し出しに回すことで経済の活性化を狙う政策です。
2.マイナス金利政策時は銀行預金よりもタンス預金の方が得?
マイナス金利政策の影響で、預貯金の金利が下がりました。大手都市銀行やゆうちょ銀行等の普通預金金利は0.001%程度です。100万円を1年間預けて金利は10円(税引き前)という状況です。
誤解されている方がいるのですが、私たち個人が銀行に預けている預金にマイナス金利が適用されるという動きは今のところ日本ではありません。
つまり、お金を銀行に預けているのに預貯金が減っているという事態には至っていません。よって、マイナス金利政策という観点からは、預貯金を引出しタンス預金にする必要性は現在のところありません。
一方、マイナス金利政策は生命保険にも大きな影響を与えていて、予定利率の引き下げによる保険料の値上げや、貯蓄性のある一部商品については、販売停止にもなっています。
保険会社は契約者から預かった保険料を国債等の有価証券で運用しています。国債の運用利回りが下がると契約者に約束している予定利率を引き下げることにつながり、保険料が上がるという流れになります。
予定利率と保険料の関係の詳細いついては、下記記事をご参照ください。
『一時払終身保険の予定利率が下がると保険料が上がる?』
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3.タンス預金の現金が火事で燃えても火災保険で補償される?
さて、銀行等から預貯金を引出し、タンス預金にするとどんなリスクが発生するでしょうか?最もリスクが高いのが災害です。
まず、火事でタンス預金の現金が燃えてしまう可能性があります。火事で現金が燃えても火災保険があれば大丈夫ではないかと思われる方がいるかもしれませんが、火事で現金が燃えても火災保険では補償されません。
火災保険では、現金等が火災で燃えてしまった場合、補償の対象外となっています。
『現金が燃えてしまったら火災保険で補償される?』
地震、津波のような災害も心配です。地震で建物が倒壊し、その後に火事が発生し、現金が燃えてしまった場合や津波で現金や現金が入っている金庫が流されてしまった場合、地震保険で補償されるのでしょうか?
残念ながら、地震保険でも現金は補償されません。地震保険では、下記のようなものが補償対象外となっています。
【地震保険で補償対象外となるもの】
- 通貨、有価証券、預貯金証書、印紙、切手そのたこれらに類するもの
- 自動車(自動三輪車および自動二輪車を含み、総排気量が125cc以下の原動機付自転車を除く)
- 1個(または1組)の価額が30万円を超える貴金属、宝石や書画、彫刻物などの美術品(明記物件)
- 稿本(本などの原稿)、設計書、図案、証書、帳簿その他これに類するもの(明記物件)
耐火金庫であれば、火災でも現金は燃えない可能性がありますが、燃えてしまう可能性はゼロではありませんし、地震による津波が発生すれば、金庫は流されてしまうでしょう。
4.タンス預金の現金が盗難に遭ったら火災保険で補償される?
タンス預金は盗難のリスクも高いでしょう。
実は、現金は盗難の場合には火災保険で補償されます。しかし、その補償限度額は20万円程度で、大きな額のタンス預金があり、それを盗難されてしまった場合には、全く役には立ちません。
5.タンス預金をすれば相続税等を節税できる?
タンス預金をしておけば、マイナンバーで現金を捕捉されることもなく、相続税等の税金を免れるのではないかという考え方もありますが、それは危険な考え方ではないでしょうか。
タンス預金をすることにより、相続税などの課税を逃れると、節税ではなく脱税になってしまいます。
税務署に税務調査に入られれば、結局は全て見破られ、脱税で重加算税等を課される可能性すらあります。そこまでのリスクを背負ってタンス預金をするメリットはないのではないでしょうか?
6.タンス預金が相続時に発見されないリスクがある
上記の通り、タンス預金は紛失のリスクが非常に高くなります。火事や水害、地震などの災害で現金を失ってしまうリスクだけでなく、タンス預金をしている方が亡くなった時にタンス預金が発見されないリスクがあります。
タンス預金は誰にも見付からないようにしている方もいらっしゃると思います。そのような方が亡くなった場合、家族がタンス預金を見付けられないリスクがあります。
銀行預金であれば、通帳が発見できれば、現金の存在が分かりますが、金庫以外の場所に保管されているようなタンス預金の発見は困難でしょう。
7.タンス預金をするよりも生命保険に加入する
不要不急の現金があるのであれば、生命保険に加入するという方法もあります。
死亡保険金には以下の通り、相続税の非課税枠(相続税法第12条)があります。下記非課税枠までの死亡保険金には相続税はかかりませんので、タンス預金とは違い、合法的に相続税を減らすことが可能です。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
上記の通り、マイナス金利の影響で、一時払終身保険等に運用商品としての魅力はなくなりましたが、タンス預金のように盗難や災害に遭うリスクは全くありません。
また、生命保険への加入を家族に伝えておけば、タンス預金のように現金が発見されないというようなデメリットもありません。
生命保険には、すぐに現金化できることや、相続人が相続放棄しても保険金を受け取れる等のメリットもあります。
『一時払い終身保険の活用法』
まとめ:タンス預金はデメリットばかりでメリットは小さい!
タンス預金については、災害(火事・水害・地震など)や盗難のリスク(デメリット)がある反面、大きなメリットがあるようには思えません。
タンス預金をしていれば、相続税などの節税になるなどの怪しい情報に惑わされることなく、メリットとデメリットを確認して頂ければと思います。
最終更新日:2019年1月20日
No.279