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国民年金

国民年金の未納と免除を比較|未納のデメリットとは?

国民年金の保険料納付が苦しいため、保険料が支払えず、「未納(滞納)」の状態になっている方もいらっしゃると思いますが、実は国民年金の保険料には「免除」という制度があることをご存知でしょうか?

保険料を支払わないと「未納」となりますが、申請をし承認されれば、「免除」となります。保険料の「未納」と保険料の「免除」では何が違うのでしょうか?

今回の記事では、国民年金の「未納」と「免除」を比較し、下記ポイントについて解説します。

  • 国民年金が「未納」だとどうなる?
  • 国民年金が「未納」の場合のデメリットとは?
  • 国民年金の「免除」には、メリットだけでなく、デメリットもある?
  • 国民年金「免除」の手続方法とは?
  • 国民年金を滞納していると預金や給与などを差し押さえられることがある?

今回の記事を読み、国民年金を「未納」にしておくデメリットについて理解し、必要であれば「免除」の申請をしていただければと思います。

1.国民年金の免除制度とは?

国民年金の保険料は、月額16,340円(平成30年度)で、学生や自営業者等の第1号被保険者はその保険料を毎月納付する必要があります。しかし、失業したなどの事情で保険料の支払いが苦しい方もいらっしゃると思います。

そのような場合に保険料の納付が免除される制度があります。具体的には下記の通りです。

国民年金の保険料免除制度とは、所得が少なく本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合や失業した場合などで国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合、申請書を提出し承認されると保険料の納付が免除になる制度です。

 

 

 

2.保険料免除制度の種類と条件

国民年金保険料の免除は申請すれば、必ず承認されるわけではありません。本人・世帯主・配偶者、各々の所得審査があります。保険料免除には前年の所得によって下記四種類があり、その基準(条件)は以下の通りです。

①全額免除の条件
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

②4分の3免除の条件
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

③半額免除の条件
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

④4分の1免除の条件
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

尚、失業した場合も申請することにより、保険料の納付が免除となる場合があります。

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3.国民年金が「未納」の場合のデメリットとは?

前述の通り、国民年金の保険料免除の手続きをせず、保険料を支払っていないと「保険料の未納」という状態になります。免除の手続きをし承認されれば、保険料を支払わなくても「保険料の未納」にはなりません。

一見、両方の状態に違いはないように思えるのですが、実は大きな違いがあります。「免除」の手続きをせず、「未納」の状態にしておくと下記3つのデメリットが発生します。

 

1)国民年金が「未納」だと老齢基礎年金が受け取れない?

老齢基礎年金を受け取るには受給資格期間が10年間あることが条件になりますが、免除の手続きをせず、未納の状態だと、年金の受給資格期間を満たすことができません。免除の手続きを行えば、保険料免除となった期間は年金の受給資格期間に算入されます。

※当初、平成27年10月に予定していた消費税10%への引き上げによる税収増分を財源として、老齢基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間を25年間から10年間に短縮する予定でしたが、消費税の増税が延期されたため、受給資格期間の短縮化も先延ばしにされていました。しかし、年金受給資格期間を25年から10年に短縮する改正年金機能強化法が平成28年11月に成立し、平成29年8月から受給資格期間は25年から10年に短縮されました。
国民年金の受給要件が10年に短縮化

また、保険料免除期間も年金額の計算の際には、下記の金額が反映されます。

  • 全額免除:「1/2」が年金額に反映
  • 4分の3免除:「5/8」が年金額に反映
  • 半額免除:「6/8」が年金額に反映
  • 4分の1免除:「7/8」が年金額に反映

つまり、保険料が「未納」だと、老齢基礎年金を受け取るための受給資格期間を満たせず、年金を受け取ることはできません。「免除」の手続きをすれば、免除期間は受給資格期間に算入され、かつ年金の計算の際にも満額ではありませんが、一部反映されます。

例えば、国民年金の保険料を40年間納付した場合、老齢基礎年金は満額の779,300円(平成30年度)を受け取れます。一方、40年間全額免除だった場合、全額免除期間の1/2が年金額に反映するため、389,700円(平成30年度)の老齢基礎年金を受け取れます。

 

2)国民年金が「未納」だと障害基礎年金が支給されない?

障害基礎年金を受け取るには保険料の納付について次のいずれかの要件を満たしている必要があります。

  1. 初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が3分の2以上
  2. 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと

保険料が「未納」の状態だと、上記要件を満たすことができず、障害基礎年金を受け取ることができない可能性があります。

 

3)国民年金が「未納」だと遺族基礎年金が支給されない?

遺族基礎年金が支給されるには、保険料の納付について以下の要件を満たしている必要があります。

『死亡日の前日において死亡日の月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が3分の2以上』但し、平成38年3月31日以前に65歳未満の人が死亡した場合は以下の要件を満たしていること。『死亡日の前日において死亡日の月の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと』

「未納」の状態だと、上記条件を満たすことができず、遺族基礎年金を受け取ることができない可能性があります。

 

 

 

4.国民年金の「免除」にデメリットはないのか?

国民年金の保険料免除制度にはメリットがいくつもありますが、デメリットはないのでしょうか?

国民年金の免除のデメリットとしては、免除を受けた分だけ、将来受け取る老齢基礎年金の額が減ってしまうという点です。現在の老齢基礎年金の満額は、779,300円(平成30年度)です。月にすると、約6.5万円です。

満額でも老齢基礎年金だけでは足りないと思いますが、免除すると更に年金額が減ってしまいます。よって、安易に免除制度を利用しない方がいいでしょう。

間違っても国民年金の免除を申請して、浮いた保険料を銀行に預金するというようなことはしないでください。また、公的年金は受け取れないかもしれないからと、国民年金保険料を支払わずに民間の個人年金保険に加入することもおすすめできません。

公的年金は物価にスライドしますので、インフレで物価が上がった場合、公的年金も物価に合わせて上がる仕組みになっています。しかし、預貯金や個人年金保険はインフレで物価が上がった場合、実質的に額が目減りしてしまうことになります。
国民年金と民間の個人年金保険の違い

 

 

 

5.免除された保険料の追納も可能

国民年金の保険料を支払う余裕が出た場合、免除されていた保険料を後から納める「追納」も可能です。

追納すると、老齢基礎年金の年金額を増やすことができます。但し、追納ができるのは追納が承認された月の前10年以内の免除等期間に限られますので、ご注意ください。

 

 

 

6.国民年金の免除の手続方法

国民年金の免除の申請は、住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口申請書を提出することで行えます。また申請書を郵送で提出することも可能です。

保険料免除の申請書と記載例については、下記PDFをご参照ください。
保険料免除の申請書と記載例(日本年金機構)

 

 

 

7.国民年金を滞納していると、財産を差し押さえられることがある?


国民年金の保険料を未納(滞納)のままにしておくと、上記のような遺族基礎年金や障害基礎年金を受け取れないというデメリット以外にペナルティを受ける可能性があります。

国民年金の保険料を支払うことは、第1号被保険者の義務なので、保険料を支払わず、滞納のままにしておくと、強制徴収(財産の差し押さえ)を受ける可能性があります。

日本年金機構では、『平成30年度においては、控除後所得額 300 万円以上かつ未納月数 7 月以上の滞納者に対して早期に督促を実施するとともに、強制徴収に集中的に取り組む』としています。

なお、保険料の滞納から強制徴収(財産調査や差し押さえ)までの流れは下記の通りです。

電話・文書などで督促 → 最終催告状 → 督促状 → 財産差し押さえ

私も実際に銀行預金を差し押さえられた事例を知っています。

どうしても国民年金保険料を支払えない事情があるのであれば、未納(滞納)のままにせず、年金事務所に相談することをおすすめします。

 

 

 

まとめ


国民年金の保険料が支払えない場合、「未納」の状態にしているとどのようなデメリットがあるかをご理解頂けたと思います。

免除の申請をしているのと、していないのとでは、大きな違いが発生します。免除の申請は難しいものではないので、保険料の支払いが苦しい場合にはご活用下さい。

ただし、国民年金を免除した場合、老齢基礎年金が減ってしまいます。よって、安易な免除申請はおすすめできません。

また、免除申請しても後から保険料を追納することも可能ですので、余裕が出たら追納することをおすすめします。

※今回の記事内容は、自営業者等、第1号被保険者の方向けの情報です。サラリーマン等の厚生年金に加入している第2号被保険者や第2号被保険者に扶養されている配偶者(20歳以上60歳未満)である第3号被保険者の場合には、企業が厚生年金保険料(被保険者負担分+事業主負担分)を納めているので、原則、保険料が「未納」となることはありません。

最終更新日:2018年11月14日
No.263