自動車保険にセットすべき特約の1つに対物超過修理費用補償特約があります。
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対物超過修理費用補償特約とは、どのような補償内容の特約なのでしょうか?なぜ、対物賠償保険の補償額が「無制限」でも自動車保険にセットすべきなのでしょうか?
また、自動車保険には色々な特約があり、同じ特約であっても、その補償額や補償内容は保険会社によって微妙に異なることがあります。
対物超過修理費用補償特約は、保険会社ごとに補償内容が異なる場合がある特約の1つです。
自動車保険を契約している保険会社を乗り換える(切り替える)場合には、乗り換え(切り替え)前に契約している自動車保険と乗り換え(切り替え)後の自動車保険では、特約等の補償額や補償内容にどのような違いがあるかを注意する必要があります。
今回の記事を読めば、対物超過修理費用の補償内容や必要性、また、保険会社ごとにどのような違いがあるのかを理解して頂くことができます。自動車保険選びの際の参考にして頂ければと思います。
1.対人・対物賠償保険の補償額が「無制限」の意味とは?
対物超過修理費用補償特約の必要性を理解するうえで、理解していただきたいのが、対人・対物賠償保険の補償額「無制限」の意味です。
対人賠償責任保険、対物賠償責任保険の保険金額(補償額)を「無制限」で契約している方は多いと思います。
しかし、保険金額(補償額)「無制限」の意味を勘違いされている方が多いと思います。この「無制限」というのは、事故相手の要求に対して保険金を無制限に支払うという意味ではありません。
「無制限」の本当の意味は、法律上の損害賠償責任額を無制限で支払うという意味です。自動車保険の約款には、「被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して」保険金を支払うとされています。
つまり、法律上の損害賠償責任額までは、無制限で保険金を支払いますが、契約者(被保険者)が法律上負担すべき損害賠償責任額を超えた請求を事故相手がしてきた場合、保険会社は法律上の損害賠償責任がある部分までしか保険金を支払わないということになります。
例えば、法律上の賠償責任額が50万円の事故で、相手から100万円の請求があった場合、保険会社が支払う保険金は50万円が限度です。
当然、請求している事故相手が保険金として支払われる50万円で納得しなければ、もめることになるので、個人間の話し合いでは解決できない可能性があります。
2.対物超過修理費用補償特約とは?
対物賠償保険では、相手方の車の時価額を超える修理費用に対しては保険金が支払われません。対物賠償保険の補償額(保険金額)を「無制限」に設定していたとしても、上記の通り、相手車の時価を超える部分の修理費については、法律上の損害賠償責任がないためです。
対物賠償責任保険は、被保険者に法律上の損害賠償義務が発生しない場合には、補償対象外となります。
特に相手車の年式が古い場合、修理費が時価額を超えることがあり、対物賠償責任保険だけだと時価額までしか保険金が支払われないため、事故の相手とトラブルが発生することがあります。
対物超過修理費用補償特約は上記のようなトラブルになる修理費と時価額の差額に過失割合を乗じた額を支払う特約です。
例えば、相手の車に後ろから追突しまったような過失割合が100:0の事故で、相手の車の時価額が50万円で修理費用が100万円の場合、対物賠償責任保険から支払われる保険金は50万円が上限となります。
相手の車の修理費が時価額を超えてしまうと、経済的全損となり、対物賠償保険から支払われる保険金は時価額が限度となってしまいます。
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対物超過修理費用特約をセットしていれば、時価額と修理費の差額50万円(100万円-50万円)が支払われますので、合計100万円となり修理が可能になります。
【対物超過修理費用補償特約の支払例】
相手車の修理費:150万円
相手車の時価額:100万円
過失割合:80%
■対物賠償保険金
100×80%=80万円
■特約保険金
(150-100)×80%=40万円
上記の例では合計で120万円(80万円+40万円)の保険金が相手方に支払われます。
上記の通り、対物賠償保険の補償額が「無制限」でも支払われる保険金は時価額が限度で修理費は全額補償されない場合がありますが、この理屈を被害者に納得してもらうのは、非常に困難なのは明らかです。
よって、事故相手の車の修理費が時価額を超えてしまう場合、時価額と修理額の差額をうめ、事故相手に納得してもらうために対物超過修理費用補償特約のセットが必要となります。
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3.修理しない場合も補償されるのか?
対物超過修理費用補償特約は、事故相手の車が修理しない場合でも補償されるのでしょうか?
実は、対物超過修理費用特約の支払い条件の1つに、事故相手の方の車が修理されるという条件があります。
事故相手が修理ではなく、車の買い替えを望んだ場合には、対物超過修理費用補償特約からの支払いはありませんので、対物賠償保険から時価額が保険金として支払われます。
また、修理する期限も決まっていて、期限までに修理しないと補償されません。修理すべき時期について、事故日の翌日から6ヶ月以内の修理が支払条件の保険会社と、1年以内の修理が支払条件の保険会社があります。
今回比較した7社については、以下の通りになります。
●6ヶ月以内の修理が支払条件の保険会社
東京海上日動
三井住友海上
あいおいニッセイ同和
ソニー損保
チューリッヒ
アクサダイレクト
●1年以内の修理が支払条件の保険会社
損保ジャパン日本興亜
4.対物超過修理費用補償特約の補償額は「50万円」?「無制限」?
さて対物超過修理費用は以下の比較した保険会社7社中、6社で補償額は50万円が限度となっています。しかし、チューリッヒの自動車保険は、無制限が選択可能です。
なお、下記の通り特約名は保険会社によって異なる場合がありますので、ご注意ください。
東京海上日動
対物超過修理費特約
支払限度額:50万円
損保ジャパン日本興亜
対物全損時修理差額費用特約
支払限度額:50万円
三井住友海上
対物超過修理費用特約
支払限度額:50万円
あいおいニッセイ同和
対物超過修理費用特約
支払限度額:50万円
アクサダイレクト
対物全損時修理差額費用補償特約
支払限度額:50万円
ソニー損保
対物超過修理費用
支払限度額:50万円
チューリッヒ
対物超過特約
支払限度額:50万円または無制限
なお、チューリッヒの対物超過特約で支払限度額を無制限にした場合でも、支払保険金の計算結果が、相手自動車の新車価額を超える場合は新車価額が限度となりますので、ご注意ください。
例えば下記例の場合、支払われる保険金は、時価額を超える修理費用の240万円ではなく、新車価格の200万円(90万円+110万円)となります。
【対物超過特約の支払例】
・相手方の車の修理費用:330万円
・相手方の車の時価額:90万円
・相手方の車の新車価格:200万円
・時価額を超える修理費用:240万円
・過失割合:相手方0%
■対物賠償保険金
90万×100%=90万円
■特約保険金
(200-90)×100%=110万円
上記の例では合計で200万円(90万円+110万円)の保険金が相手方に支払われます。
5.対物超過修理費用補償特約の加入率
対物超過修理費用補償特約の加入率はどのくらいでしょうか?
イーデザイン損保では、契約者の約8割(77%)が対物超過修理費用補償特約を付けているそうです。一方、セゾン自動車火災保険では、契約者の約4割(43.5%)が対物全損時修理差額費用特約を付けているようです。
次項で解説しますが、対物超過修理費用補償特約は対物賠償保険に自動セット化する保険会社が増えています。オプションだとセットもれが発生する可能性もあるので、今後更に自動セット化が進むでしょう。
6.対物超過修理費用補償特約は自動付帯?オプション?
対物超過修理費用特約で注意して頂きたいのが、対物賠償保険に自動セットされている保険会社と、オプションの保険会社がある点です。
上記、支払限度額を比較した7社のうち、2社は特約としてオプション扱いです。つまり、対物超過修理費用補償特約を付加(セット)するかしないかは、契約者の選択次第です。
以前は、対物超過修理費用補償特約はオプション扱いの保険会社がほとんどでした。しかし、上記7社の中では、チューリッヒとアクサダイレクトの2社がオプション扱いで、それ以外の保険会社では対物賠償責任保険を付帯(セット)した場合には、対物超過修理費用はオプションではなく、自動的にセットされます。
最近の自動車は平均使用年数が長期化していて、時価額の低い車が増加しています。相手自動車の修理費が時価額を上回るケースの増加が予想される事から、対物超過修理費用補償特約を自動セット化する保険会社が増えています。
まとめ
自動車保険の対物賠償保険の保険金が支払われる仕組みを知れば、対物超過修理費用補償特約の必要性について理解していただけると思います。
また、上記の通り、保険会社によっては同じ特約でも補償額が異なったり、オプション扱いの会社と自動セットの保険会社があったりします。よって、自動車保険を契約する保険会社を乗り換える(切り替える)場合は、特に注意が必要です。
対物超過修理費用特約については、契約の自動車保険に自動セットされているか確認し、オプション扱いであれば、必ずセットすることをおすすめします。
自動車保険は保険料の安さを比較するだけでなく、補償内容を比較することも重要です。保険料が高くてもご自分にとって本当に必要と思える補償内容で契約できる保険会社を選択するのも1つの考え方でしょう。
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最終更新日:2019年1月18日
No.254