医療保険の加入を検討する際に共済にするか民間の医療保険にするかを迷う方が多いと思います。実際にどちらに加入するのがお得でしょうか?
都民共済を例に共済の医療保険と民間の医療保険を比較して、違いについて解説します。
『保険、共済、少額短期保険は何が違う?』
共済のメリット、デメリット等の特徴と、民間の医療保険との違いを解説するとともに、共済に加入するのが向いている方、民間の医療保険に加入するのが向いている方をご紹介します。
「共済と医療保険はどちらに加入すべきか?」と迷っている方は、今回の記事で共済と民間の医療保険のメリット・デメリットや特徴の違いを知り、商品選びの参考にして頂ければと思います。
1.共済のメリット
まず、都民共済の入院保障型を例に共済のメリットを確認してみます。
1)掛金が安い
都民共済の入院保障型の掛金は一律で月額2,000円です。年齢や性別によって保険料は変わらず、一律2,000円です。但し、60歳以降は保障の内容が変わります。
民間保険会社の医療保険は加入後に保障内容が変わることはありませんが、加入時の年齢や性別によって保険料が異なります。
保障内容も下記の通り、年齢が上がると下がりますが、60歳までは民間の医療保険と比べて大きく見劣りしません。
2)掛金の割戻金がある
共済は営利を目的としていないので、決算後に剰余金が発生した場合は掛け金から一定割合が割戻金として支払われます(3月31日現在の加入者を対象に、8月に掛金振込口座へ振り込み)。
都民共済の割戻率を確認すると、だいたい30%前後で推移しています。
参考:都民共済の割戻金
つまり、実質で考えると、掛金の7割程度の保険料で保障が確保できるということになります。
3)保障内容もわりとしっかり
掛金が安いからといって保障内容が悪いというわけでもありません。
◆入院保障2型(18歳~60歳)
入院:1万円/1日(事故184日まで・病気124日まで)
通院:1,500円/1日
手術:2.5万円・5万円・10万円
先進医療:1万円~150万円
死亡:10万円
入院は病気が1日目から124日目まで保障されます。但し、通院は事故のみで病気の場合は保障されません。
月1,000円~1,500円程度で三大疾病等の特約を付加(セット)することも可能です。
2.共済のデメリット
次に共済のデメリットを確認してみます。
1)高齢になると保障が減る
入院等のリスクが高くなる高齢時の保障が減額されます。上記の「入院保障2型」は被共済者(保障の対象者)が60歳~65歳になると下記の通りの保障になります。
◆入院保障2型(60歳~65歳)
入院:7,500円/1日
通院:1,500円/1日
手術:1万円・2万円・4万円
先進医療:1万円~75万円
死亡:5万円
更に熟年型(被共済者が65~70歳)だと下記の通りとなります。
◆熟年入院2型(65歳~70歳)
入院:5,000円/1日
手術:1万円・2万円・4万円
先進医療:1万円~75万円
死亡:5万円
月掛金は2,000円で変わらず、保障額が下がっていきます。更に年齢が上がるとともに下記のように入院保障は下がります。
被共済者が70歳~80歳で入院3,500円/1日
被共済者が80歳~85歳で入院2,000円/1日
高齢になるほど入院等が増える可能性があるので、必要な時に保障が下がっていくということになります。
2)保障が終身(一生涯保障)ではない
保障は終身ではありません。85歳で終了です。しかし、男性の平均寿命である80歳は超えていますし、女性の平均寿命である87歳に近い年齢まで保障は続きます。
『「平均寿命」と「平均余命」は何が違う?』
スポンサーリンク
3.共済と民間医療保険との比較
民間の医療保険と比較して保険料は割安なのでしょうか。保険料と保障内容をアフラックの「ちゃんと応える医療保険EVER」と比較してみたいと思います。
【民間医療保険の試算例】
保険期間:終身
払込期間:終身
被保険者:男性
入院給付金日額:1万円(60日型)
通院給付金日額:6,000円
手術給付金:40万・10万・5万
特約:先進医療特約
18歳:2,905円
25歳:3,295円
30歳:3,695円
40歳:4,841円
50歳:7,287円
60歳:10,845円
保障内容が全く同じではないので、単純に比較はできませんが、18歳の時点から共済の方が安い状態が続きます。
民間の医療保険は、共済に比べて保険料は高いですが、共済より優れている点もあります。保険料が高い民間の医療保険が共済より優れている主な点は以下の通りです。
- 保障が終身であること
- 年齢によって保障内容が下がらないこと
- 通院保障が充実していること
- 先進医療の保障額が大きいこと
- 手術給付金が大きいこと
4.共済から民間医療保険に途中で乗り換えると・・・
共済は60歳から保障内容が下がり始めるので、仮に保障が下がる前に民間の医療保険に切り替えた場合、どうなるかを試算してみました。(被共済者(保障の対象者)が男性の場合)
3,695円×12×50年=2,217,000円(医療保険)
■30歳で共済に加入、40歳で民間医療保険に切り替え、80歳まで生きた場合
2,000円×12×10年=240,000円(共済)
4,841円×12×40年=2,323,680円(医療保険)
合計:2,563,680円
■30歳で共済に加入、50歳で民間医療保険に切り替え、80歳まで生きた場合
2,000円×12×20年=480,000円(共済)
7,287円×12×30年=2,623,320円(医療保険)
合計:3,103,320円
■30歳で共済に加入、60歳で民間医療保険に切り替え、80歳まで生きた場合
2,000円×12×30年=720,000(共済)
10,845円×12×20年=2,602,800円(医療保険)
合計:3,322,800円
民間の医療保険への乗り換えを考えているならなるべく若い時に民間の医療保険に切り替えた方が支払総額は少なくなることが分かります。若いうちは安い共済に加入して、いずれ民間の医療保険に切り替えようと考えているのであれば、保険料の観点では、なるべく若い時に切り替える方が得ということになります。
また、若い時に切り替えた方が良い理由がもう1つあります。それは、切り替えようとした時に健康上の問題があると、民間の医療保険には加入できない可能性がある点です。若く健康なうちに切り替える方が健康上のリスクも少ないといえます。
逆に医療保険の必要性をあまり感じず、医療費は貯蓄で対応しようと考えている場合、必要な額が準備できるまで、掛け金の安い共済で医療保障を準備し、貯蓄の準備ができたら共済を解約するというのも1つの考え方です。
『医療保険は必要?不要?』
5.共済によって保障内容が異なる点には注意が必要
今回は、都民共済と民間生命保険会社の医療保険を比較しましたが、共済は都民共済だけではなく、JA共済や全労済、コープ共済などがあります。共済ごとに医療保障の内容は異なりますので、どの共済が最も有利かは比較検討する必要があります。
また、都道府県民共済といっても福井県・山梨県・鳥取県・徳島県・愛媛県・高知県・佐賀県・沖縄県の8県では共済事業が行われていない点には注意が必要です。
例えば、都民共済、全労済、コープ共済の医療保障の入院保障の日額を比較すると下表の通りになります。
共済 | 入院保障 | 月額掛金 |
---|---|---|
都民共済 | 10,000円/日 | 2,000円 |
全労済 (医療安心タイプ) |
6,000円/日 | 2,300円 |
コープ共済 (V2000円コース) |
5,000円/日 | 2,000円 |
入院給付金日額だけの比較だと、都民共済が最もコストパフォーマンスが高いことになります。ただし、最終的に判断する際には、他の保障内容も比較して決めることが重要となります。
まとめ
共済は年齢が上がるほど保障額が下がりますが、月額掛金が2,000円というのは魅力的だと思います。また、割戻金があるので、実質負担は更に下がります。
一方、民間の医療保険は、終身保障が選べ、保険料が上がることがなく、保障内容も下がることがない点がメリットです。
共済と民間の医療保険を比較すると、どちらも一長一短あります。どちらが良くて、どちらが悪いということはありません。加入する人の考え方によって選択するといいと思います。
共済への加入が向いている方と民間医療保険への加入が向いている方の違いは下記の通りです。
●共済への加入が向いている方
掛け捨ての医療保険に加入するのは嫌で、医療費は貯蓄で賄いたいという方には、共済に加入して掛け捨て部分を極力少なくし、貯蓄プラス最低限の医療保障を共済で準備するという考え方もありだと思います。
●民間医療保険への加入が向いている方
逆に貯蓄をするのが苦手で高齢になってからの医療費が心配という方であれば、終身保障である民間の医療保険に加入して不安というストレスから解放されるという考え方もあります。
最終更新日:2019年5月18日
No.163