自動車保険の仕組みをご存知でしょうか?
自動車保険は多くの方にとって身近な保険ですが、意外と詳細な仕組みはご存知ない方が多いと思います。自動車保険の仕組みを正しく理解していないと、誤った保険加入の仕方をしてしまい、事故の際に充分な補償が受けられない可能性があります。
今回は自動車保険の仕組みの下記ポイントについて解説したいと思います。
- 自動車保険の種類とは?
- 自賠責保険と任意保険(自動車保険)の違いとは?
- 自賠責保険と任意保険の保険金支払時の関係とは?
- なぜ、自賠責保険と任意保険の両方に加入する必要があるのか?
自動車保険の仕組みを正しく理解し、誤った自動車保険の加入を防ぐことに役立てて頂ければと思います。
1.自動車保険の種類
自動車保険には、大きく分けて2つの種類があります。強制保険である自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)と任意保険である自動車保険です。
自賠責保険か自動車保険のどちらかに加入しておけば良いというわけではありません。自賠責保険と任意保険(自動車保険)の両方に加入しておかないと、補償は十分ではありません。
1)自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)とは?
自賠責保険は、法律(自動車損害賠償保障法)で加入が義務付けられている強制保険で、国が運営しています。強制加入ですので、未加入の場合には、法律で罰せられますし、交通違反にもなり、下記の通り免許停止処分となります。
・1年以下の懲役または50万円以下の罰金
・免許停止処分(違反点数6点)
また、自賠責証明書の不携帯だけでも30万円以下の罰金です。
自賠責保険の保険料は車種(乗用車、軽自動車、原付等)によって異なり、年齢では変わらず一律です。どこの保険会社、どこの代理店で加入しても保険料は同じです。
尚、先述の通り、自賠責保険は加入が義務付けられている保険ですので、解約も自由にはでません。自賠保険の解約は、自動車損害賠償保障法(自賠法)により自動車を廃車した時等に制限されています。
『自賠責保険は自由に解約できない!?』
2)自動車保険(任意保険)とは?
自動車保険は民間の損害保険会社が販売しています。任意保険ですので、強制加入の自賠責保険とは違い加入、未加入の選択は自由です。
但し、下記の通り、自賠責保険は交通事故の被害者救済が目的の最低限の補償なので、自賠責の加入のみでは補償が不足する可能性大です。
自動車保険の保険料は保険会社によって異なります。また、年齢や車種等、色々な条件で細かく保険料が異なります。
2.自賠責保険と任意保険(自動車保険)の補償内容の違い
自賠責保険、任意保険(自動車保険)それぞれの補償内容の違いをご紹介します。
1)自賠責保険の補償内容
ご存知ない方もいますが、自賠責保険は対人賠償のみの補償です。対物賠償の補償はありません。
自賠責保険の加入のみで事故を起こした場合、対人賠償である相手のケガは自賠責保険から賠償可能ですが、対物賠償である相手の車の損害を賠償することはできません。
更に下表でも分かる通り、対人の補償も死亡で3,000万円、傷害で120万等と、交通事故の被害者が救済が目的のため最低限の補償となっています。
自賠責保険の補償内容は下表をご参照下さい。
支払対象 | 支払限度額 | |
---|---|---|
傷害による損害 | 治療関係費(治療費、看護料、諸雑費、通院交通費等)、文書料、休業損害、慰謝料 | 最高120万円 |
後遺障害による損害 | 逸失利益、慰謝料等 | ◆神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への著しい障害で、介護を要する傷害 ・常時介護の場合:最高4,000万円 ・随時介護の場合:最高3,000万円◆上記以外の後遺障害 第1級:3,000万円~第14級:75万円 |
死亡による損害 | 葬儀費、逸失利益、慰謝料 | 最高3,000万円 |
自賠責保険(共済)の補償内容の詳細については、下記記事をご参照ください。
『自賠責保険を正しく理解していますか?』
なお、示談交渉サービスは、任意保険(自動車保険)に付いているサービスです。自賠責保険には示談交渉サービスは付いていないので、自賠責保険のみの加入だと、交通事故の相手との示談交渉は自分で行う必要があります。
2)任意保険(自動車保険)の補償内容
任意保険は、一般に「自動車保険」と言われ、民間の損害保険会社が販売しています。補償内容や年齢条件等によって保険料が変わります。
任意保険(自動車保険)の主な補償は下記の通りで、補償額も対人・対物賠償等には無制限が選択でき、自賠責保険と比べて補償が充実しています。
・対人賠償保険
契約の車を運転中の事故などにより他人を死亡させたり、ケガをさせ、法律上の損害賠償責任を負った場合、対人賠償保険で相手方の治療費などの実費や慰謝料、逸失利益、将来の介護料などが補償されます。
対人賠償保険は、法律上の損害賠償責任の額が自賠責保険で支払われる限度額を超える場合に保険金が支払われます。
『対人賠償保険とは?自賠責保険との違いは?』
・対物賠償責任保険
対物賠償保険とは、契約の車を運転中の事故などで他人の車や家屋、店舗などの財物に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる補償です。
『対物賠償責任保険とは?|保険金額は無制限にするべきか?』
・車両保険
車両保険とは、車同士の事故や自損事故などで、契約の車両が損害を受けた場合に修理費などが支払われる補償です。
また、車同士の事故や単独の自損事故だけでなく、火災や盗難、いたずらなどによる損害も車両保険の補償対象となります。つまり、ご自身の車に対する損害を補償するのが車両保険ということになります。
『車両保険の保険金額(補償額)の設定方法や目安とは?』
『車両保険は必要?不要?保険料を安くする方法は?』
・人身傷害保険
人身傷害保険とは、自動車事故により、記名被保険者およびその家族や被保険自動車(契約の車)に搭乗中の人が死傷した場合、その過失割合(責任割合)にかかわらず、被る損害の実際の損害額(治療費、休業損害、逸失利益※、及び精神的損害等)に対して保険金が支払われる補償です。
『人身傷害保険とは?押さえておくべき6つのポイント』
『対人賠償保険と人身傷害保険・搭乗者傷害保険の違いとは?』
逸失利益とは、事故により亡くなった場合や後遺障害を被ることにより失った、将来得られたであろう利益や収入のことをいいます。
自賠責保険と任意保険(自動車保険)の補償内容をまとめると、下記比較表の通りとなります。
相手方への補償 | 自身の補償 | |||
---|---|---|---|---|
対人賠償 | 対物賠償 | ケガ・死亡 | 車両損害 | |
自賠責保険 | 〇 | × | × | × |
任意保険 (自動車保険) |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
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3.自賠責保険と任意保険(自動車保険)の関係
さて、自賠責保険と任意保険(自動車保険)の両方に加入している場合、どのような関係で保険金が支払われるのかご存知でしょうか。
自賠責保険と任意保険(自動車保険)の保険金支払時の関係を知ることで、自賠責保険と任意保険(自動車保険)の両方に加入する必要性が理解できると思います。
対人事故が発生した場合、まず強制保険である自賠責保険から被害者に保険金が支払われます。自賠責保険の補償で足りない場合には、民間の自動車保険(任意保険)から保険金が支払われる仕組みです。
保険金を請求される方が意識することが少ないでしょうが、対人賠償責任保険では、「任意一括請求」といって保険会社が任意保険(自動車保険)と一括して自賠責保険の請求手続きも行っています。
要するに、民間の任意保険(自動車保険)は強制保険(自賠責保険)の上乗せ保険ということになります。
任意保険(自動車保険)の対人賠償責任保険や対物賠償責任保険等は補償額(保険金額)が無制限を選択できるので、自賠責保険に加入する必要がないのではないかという質問を頂くことがあります。
『自賠責保険に加入していないと発生する4つの問題点』で詳しく説明していますが、自賠責保険に加入せず、任意保険(自動車保険)のみに加入している場合、自賠責保険の補償額までは自動車保険は免責(補償対象外)になりますので、自動車保険に加入していても自賠責保険への加入も必須です。
まとめ
自賠責保険は補償内容、補償額(支払限度額)とも最低限のものですので、自賠責保険の加入だけでは、不充分と言えます。「高額賠償事例」をご覧になって頂ければ分かる通り、対人の事故では2億や3億を超える高額賠償判決事例が多くあります。
自賠責保険の補償内容では、心許ないのは間違いありません。
また、自動車を運転する際は、対人賠償だけでなく、対物賠償の補償も必要ですし、車に乗っている方の傷害保険、車両保険等の補償もあった方が良いのは間違いありません。
自賠責保険に加入することはもちろんのこと、民間の損害保険会社が販売している「自動車保険(任意保険)」に加入することが必須でしょう。
最終更新日:2018年11月18日
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