かんぽ生命の不適切募集で生命保険の乗り換えが話題になりましたが、実は、生命保険の乗り換えは契約者や被保険者にとってメリットよりも大きななデメリットが発生する可能性があります。
乗り換えにはどのようなデメリットがあるのでしょうか?また、乗り換えにメリットはないのでしょうか?
今回は、生命保険の乗り換えについて解説します。今回の記事を読み、生命保険の乗り換え時に注意すべき点について知っていただければと思います。
1.生命保険の乗り換えとは?見直しとの違いは?
生命保険の乗り換えとは、現在契約している保険を解約や減額し、新たな保険に加入することをいいます。
生命保険の保障内容を見直す際などに現在契約している保険を解約して、新しい保険に乗り換える方も多いでしょう。つまり、生命保険の乗り換えは、見直しの1手法ということになります。
2.生命保険の乗り換えはデメリットが大きい?
不要な生命保険契約を解約して、必要性の高い新しい生命保険を契約することは、見直しのうえでも必要なことですし、保険料を抑えられるなどのメリットがあります。
実際、生命保険の見直し時に乗り換えを行うことは多いのですが、乗り換えは契約者・被保険者(保障の対象者)にとって、下記のようなデメリット(不利益)が発生することがあるので、注意が必要です。
・解約返戻金が払込保険料より少なくなる
乗り換えの際に解約や減額により受け取れる旧契約の解約返戻金が払込保険料総額より少くなることがあります。
終身保険や養老保険などの貯蓄型保険については、貯蓄も兼ねて契約している方もいるでしょう。
貯蓄型保険を乗り換える場合には、受け取る解約返戻金が払い込んだ保険料総額を大きく割り込む可能性がありますので、注意が必要です。
・短期間での解約は解約返戻金が少額またはない場合がある
乗り換えの際に解約する旧契約が、加入したばかりの場合、受け取る解約返戻金が非常に少ない場合や、場合によっては、ゼロというケースがあります。
終身保険や養老保険などの貯蓄型保険を短期間で解約する場合には、契約者にとって大きな不利益が発生する場合があります。
・配当を受け取る権利を失う
一定期間の契約継続を条件に受け取れる可能性があった配当の権利が、解約等により失われる場合があります。
・健康状態によっては、新たに保険に加入できない
一般的に生命保険に加入する際には、健康状態の告知や医師による診査が必要です。よって、被保険者の健康状態によっては、新しい生命保険に加入できない場合があります。
・乗り換え後の保険契約の保険料が上がる
乗り換え後に加入する生命保険契約は、加入時点での被保険者の年齢や予定利率で計算されます。被保険者の年齢が上がれば、保険料も上がりますし、予定利率が下がれば、保険料が上がります。
特に貯蓄型の生命保険契約の場合、以前に加入していた契約に比べて予定利率が下がっていることがほとんどだと思いますので、保険料が上がる可能性が高くなります。
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3.「不当な乗換募集」は保険業法(第300条)で禁止されている
保険契約を募集する際には、契約者または被保険者に対して不利益となる事実を告げずに、現在契約中の生命保険を別の生命保険に乗り換えさせることは、保険業法(第300条)で禁止されています。
禁止はされていますが、全ての乗り換え契約で上記のような不利益な事項がきちんと契約者や被保険者に伝えられているかというと、それは疑問です。
かんぽ生命のような事例もありますので、生命保険を乗り換える際には、注意が必要です。
4.生命保険乗り換え時の注意点
ご自身で現在の生命保険や医療保険契約の内容に疑問を持ち、乗り換えを検討する場合ももちろんですが、営業マンや営業レディーなどに乗り換えをすすめられた場合には、上記のようなデメリットについて確認し、本当にご自身にメリットがある乗り換えなのかを確認することが重要です。
契約者や被保険者のための乗り換えではなく、営業マンや営業レディーのための乗り換えになっていないかをご確認ください。乗り換えによって発生するデメリットを上回るメリットがあるのかを確認することが重要です。
また、乗り換えの際には、必ず新しい契約が成立してから古い契約を解約するようにして下さい。古い契約を先に解約してしまうと、健康状態などにより新しい契約ができない場合、無保険の状態になってしまいます。
まとめ
生命保険の乗り換えは、契約者や被保険者のためでなく、営業職員の成績のために行われている事例も少なくないでしょう。
貯蓄型保険の途中解約や早期解約は、上記の通り、契約者にとってデメリットが大きくなります。かんぽ生命の主力商品は貯蓄型の養老保険や終身保険ということを考えれば、かんぽ生命の不適切募集では契約者にとってメリットよりもデメリットの方が大きい事例がほとんどだったはず。
つまり、契約者や被保険者のための乗り換えではなく、販売職員のノルマや手当のための乗り換えだったと言わざるを得ません。
乗り換えを行う際には、本当にその乗り換えは自分のためであるのかを確認する必要があります。特に営業職員から強引に乗り換えを勧められる場合には、契約者や被保険者のための乗り換えでない可能性があります。
乗り換えの際には、メリット・デメリットを確認し、慎重に検討することが重要です。一度解約してしまった生命保険契約は、原則、取り戻すことはできません。
No.374