最近、自転車事故が増加し問題視されています。それに伴い、自転車保険についてのご質問を頂くことが多くなりました。
自転車事故で加害者になると、1,000万円超える高額な賠償金を請求された事例がいくつもあります。9,500万円という高額賠償を命じた裁判事例もあります。自転車は自動車やバイクと違い、自賠責のような強制加入の保険はありません。保険なしで9,500万円もの賠償金は一般の方ではとても払えないと思います。
そこで必要になるのが、自転車保険です。
また、自転車保険の加入が義務化される動きがあります。兵庫県は2015年3月に全国で初めて自転車保険の加入を義務付ける条例が県議会で可決され、2015年10月1日から施行されています。滋賀県でも同様の条例が2016年2月に県議会で可決され、2016年10月1日から施行されました。大阪府でも同様の条例が制定され、2016年7月1日から施行されました。
しかし、慌てて自転車保険に加入する前に確認して頂きたいことがあります。慌てて自転車保険に加入すると、その契約が全くムダになってしまう可能性もあります。自転車の事故に上手に備えるためのポイントをご紹介します。
自転車保険の加入を検討する際に参考にして頂ければと思います。
1.一番必要な補償は個人賠償責任補償
まず、ご理解頂きたいことは、自転車保険は、個人賠償責任保険と傷害保険がセットになった商品です。そして、自転車事故で他人にケガをさせてしまったり、他人のモノを壊してしまった場合の補償としては個人賠償責任保険が必要となります。
自転車事故で最も心配なことは、加害者になった際に高額な賠償金を請求される可能性があることではないでしょうか?ということは、個人賠償責任補償の補償内容が重要なポイントになります。
2.既に個人賠償責任保険に加入していないか?
まず、加入している自動車保険や火災保険等に特約(オプション)で「個人賠償責任特約」や「日常生活賠償特約」などを付帯(セット)していないかを確認して下さい。
『個人賠償責任保険』は、2重で加入しても2重で保険金を受け取れるわけではありません。
自動車保険の個人賠償責任特約等は、補償額が無制限の場合があるので、2重で加入すると完全に保険料の無駄になります。
例えば、損保ジャパン日本興亜、三井住友海上、東京海上日動の大手3社の自動車保険に付帯できる個人賠償責任特約等の保険金額(補償額)は無制限です。
火災保険や傷害保険等にも個人賠償責任補償特約が付帯できるので、個人賠償責任補償の契約が重複しないかをご確認ください。
3.補償対象者の範囲に注意
個人賠償責任保険は補償対象者の範囲が広い保険です。
自動車保険の個人賠償責任補償特約を例にすると、補償の対象となる範囲は下記の通りです。
①本人
②本人の配偶者
③本人又は配偶者の同居の親族
④本人又は配偶者の別居の未婚の子
上記の通り、補償対象となる被保険者の範囲が広いので、家族の中で1人でも個人賠償責任保険に加入していれば、その他の家族はほぼ全員が被保険者となり、別で加入する必要はありません。
例えば、父親が自動車保険の個人賠償責任補償特約をセットすれば、同居の小学生の子供も被保険者となります。よって、子供が自転車に乗るからと別途、自転車保険に加入すると、補償が重複する可能性があります。
前述の通り、個人賠償責任保険に2重加入しても保険金が2重で支払われるわけではないので、注意が必要です。
『補償が重複しやすい4つのパターン』
4.示談交渉サービスが付いているか?
加入しようとしている自転車保険に示談交渉サービスが付いているかも確認して下さい。全ての自転車保険に示談交渉サービスが付いているわけではありません。例えば、TSマーク付帯保険には示談交渉サービスはありません。
『自転車保険はTSマーク付帯保険で大丈夫?』
しかし、自動車保険や火災保険、傷害保険等の個人賠償責任補償特約は、示談交渉サービス付きであることが多いです。損保ジャパン日本興亜、三井住友海上、東京海上日動の大手3社の自動車保険に付帯できる個人賠償責任特約等は、示談交渉サービス付きです。
大変な被害者との示談交渉を保険会社に任せられるのは大きな利点です。示談交渉サービスがなければ、自分で被害者との示談交渉を行う必要が発生します。
示談交渉サービスは、全ての保険で提供されているわけではなく、自動車保険や自転車保険、個人賠償責任特約等の一部の保険や特約にセットされているサービスです。
5.傷害保険が必要か?
自転車保険に加入する一番大きな理由は、自転車事故で加害者になった場合に高額な賠償金を請求される心配がある点だと思います。冒頭でも触れましたが、自転車保険は個人賠償責任保険と傷害保険がセットになった商品です。高額な賠償金を請求された場合だけが心配であれば傷害保険の部分は不要です。
au損保の自転車保険を例にすると、保険料が一番安い本人タイプのブロンズコースでも月額保険料は370円(年間4,440円)です。しかし、自動車保険の個人賠償責任補償特約であれば、傷害の補償はありませんが、保険料は年間1,500円程度です。
6.補償額は十分か?
補償額(保険金額)は充分かもご確認ください。
自転車事故の加害者に9,500万円という高額な賠償を命じた裁判例もあるので、個人賠償責任補償の補償額(保険金額)は最低でも1億円程度はある方がいいでしょう。
例えばTSマーク付帯保険は、青色TSマークの補償額が1,000万円、赤色TSマークの補償額が5,000万円です。自転車保険の中には補償額が3,000万円程度のプランを販売している商品もあります。これでは上記のような高額な損害賠償額を請求された場合、補償額が不足する可能性があります。
しかし、損保ジャパン日本興亜、三井住友海上、東京海上日動の大手3社の自動車保険の個人賠償責任補償特約であれば、補償額は無制限です。
まとめ
自転車保険への加入を検討する際は、上記のような点について確認するようにして下さい。
自転車事故の高額な賠償額の事例を聞くと慌てて自転車保険に加入したくなる気持ちも分かります。しかし、慌てて加入すると余分に保険料を支払うことになる可能性もあるので、今回の記事を参考にし、ムダのない保険加入をして頂ければと思います。
最終更新日:2017年9月22日
No.23