高齢になるほど、病気になる確率が上がるのは間違いありません。60代、70代になると、何かしらの持病があるなどして、医療費の不安が出てくる方が多いのではないでしょうか?
医療費の増加を心配して、60代や70代になってから医療保険を検討する方がいますが、本当にその年代の方に医療保険は必要なのでしょうか?60代や70代の方が医療保険に加入するメリットはあるのでしょうか?
60代、70代の方の医療保険についての考え方を解説します。
1.60代や70代の方には医療保険は不要!
結論から申し上げると、60代や70代の方が新規で医療保険に加入する必要性は低いと考えます。その根拠は、下記の通りです。
日本は、公的な医療保障が充実している
日本は皆保険制度であり、原則、日本国民全員が公的医療保険制度に加入しています。その公的な医療保険制度はかなり充実しています。
医療費の窓口負担は原則、3割負担ですし、年齢が上がると、現在は自己負担割合が下がります。例えば、75歳以上の中・低所得者の方であれば、医療費の自己負担割合は1割です。
【医療費の窓口負担割合】
中・低所得者 | 現役並み所得者 | |
---|---|---|
75歳以上 | 1割負担 | 3割負担 (夫婦世帯で 年収520万円以上) |
70歳~74歳 | 2割負担 | |
6歳~69歳 | 3割負担 | |
義務教育就学前 | 2割負担 |
また、高額療養費制度があり、1ヶ月間にかかる医療費に上限があります。70歳以上の中・低所得者の方であれば、1ヶ月間にかかる医療費の上限は57,600円となっています。
『医療保険は不要!?高額療養費について理解しておくべきポイント』
現在の充実した公的医療保険制度が続く前提で考えれば、医療保険の必要性は低いといえます。
医療保険の保険料が高いので、その保険料を貯蓄する方がいい?
60代や70代になってから医療保険に加入しようとすると、保険料が高くなります。60代や70代になると何かしらの持病を持っている方もいるので、一般的な医療保険ではなく、持病がある方でも加入しやすい緩和型の医療保険を検討する場合もあると思います。
その引受基準緩和型の医療保険は、更に保険料が高くなります。
医療保険からの給付金を受け取れるかどうかも分からないのであれば、医療保険に加入せずに保険料を支払ったつもりで、保険料分を貯蓄するという方法もあります。
その蓄えでいざという時の医療費を支払います。
保険期間:終身
保険料払込期間:終身
入院給付金日額:5,000円(60日型)
通院給付金日額:5,000円
被保険者:30歳男性
月額保険料:1,875円
被保険者:60歳男性
月額保険料:5,795円
被保険者:70歳男性
月額保険料:8,605円
保険期間:終身
保険料払込期間:終身
入院給付金日額:5,000円(60日型)
通院給付金日額:3,000円
被保険者:60歳男性
月額保険料:6,609円
被保険者:70歳男性
月額保険料:9,193円
現役を引退すれば、病気で収入が減る可能性が下がる
医療保険は、入院や手術等の医療費負担に備えて加入する商品ではありますが、病気やケガで入院している間の所得補償的な役割もあります。
現役で仕事をしている方にとって、入院は仕事を休むことになり、収入の減少に直結します。医療保険に加入していれば、所得の減少を補える可能性もあります。
一方、60代や70代の方で既に現役を引退されている方にとっては、年金など、働かずに入ってくる収入がメインなので、入院したからといって収入が減るわけではありません。
よって、所得補償的な側面でも医療保険の必要性は低いといえます。
なお、若い時から加入している医療保険があるのであれば、ムリに解約する必要はありません。あくまでも60代や70代になってから加入する医療保険が不要ということです。
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2.先進医療特約が必要であれば・・・
今、話題の先進医療ですが、先進医療の保障が欲しいということで、医療保険に加入する方もいらっしゃいます。先進医療の保障は医療保険の特約として月額100円程度でセットすることが可能です。
『先進医療特約とは?勘違いが多いポイント』
しかし、医療保険に加入すると、最低でも毎月数千円程度は保険料が必要です。先進医療の保障だけが必要という方にとっては、先進医療に特化した保険があるので、その商品に加入した方がいいでしょう。
毎月500円で先進医療の保障に特化した保険があります。
『月500円の先進医療保険!?』
3.今後の医療保障制度の推移を確認する必要はある
60代や70代以降の方にとっては、新規で医療保険に加入する必要性が低いことをこれまで解説してきましたが、注意して頂きた点があります。
それが、今後の公的医療保険制度の推移です。
日本の医療費は膨張を続けています。更に少子高齢化で現在の社会保障制度をそのまま維持することは誰が考えても難しいでしょう。
このまま状況が改善しないと、公的医療保険制度の改悪がある可能性があります。例えば、医療を受けた際の自己負担割合の引き上げや、高額療養費制度の医療費上限額の引き下げなどです。
そのような際には、医療保険(今のような保障内容とは異なる可能性もある)を検討する必要性が出てくることもあるでしょう。
日本の少子高齢化を受けて、今後、医療保険制度がどのように変わっていくかは、注目して頂きたいと思います。
まとめ
現在の日本の公的な医療保険制度の充実度を考慮すると、60代や70代以上の方が新規で医療保険に加入する必要性は極めて低いといえます。
しかし、民間の生命保険はあくまでも公的保障を補完することが目的です。よって、公的保障の状況によって、医療保険などの必要性は変わってきます。
民間の保険ばかりに注目するのではなく、公的な保障制度がどのように変わっていくのかにも注目すべきであることは間違いありません。
No.341